テスラ・モデル3が米国で値下げを繰り返す事情

1月と2月に連続して価格を改定

▲テスラ・モデル3 テスラ・ブランドの普及を図る戦略的な価格が魅力
▲テスラ・モデル3 テスラ・ブランドの普及を図る戦略的な価格が魅力

 2月6日、テスラがモデル3の価格を1100㌦(約12万円)値下げした。モデル3は現在、米国でパフォーマンス、ロングレンジ、ミッドレンジの3タイプを設定しており、最も安価なミッドレンジの価格は4万2900㌦(約476万円)になった。テスラは今年1月にも2000㌦(約22万円)の値下げを行っている。

 イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)はモデル3の価格について「いまやモデル3は3万5000㌦(8000㌦相当のインセンティブとガソリン代節約分を含めて)から購入できるようになった」とツイートするなど、以前から目標だった3万5000㌦(約387万円)での販売がついに実現できた、としている。

 値下げの理由は、連邦政府、カリフォルニア州政府が電気自動車(EV)などのゼロ公害車に対する税制優遇というかたちで行ってきたインセンティブ(報奨金)を今年から大幅に減額した措置への対応と、〝顧客紹介プログラム〟を廃止してコストを削減したからだ。

連邦政府とカリフォニア州のEV優遇措置が半減

 これまでテスラは〝モデル3は3万5000㌦〟の理由として、「連邦政府が7500㌦、カリフォルニア州は2500㌦のインセンティブを提供していたため、結果として顧客が支払う価格は3万5000㌦になる」と説明していた。ところが、連邦政府のインセンティブは昨年10月に7500㌦から半減され、今年1月にさらに半減された。

 連邦政府と州当局が負担していたゼロ公害車に対する優遇措置を補うために、メーカーが値下げをしたといえる。顧客紹介プログラムの廃止に伴い、購入から半年間はテスラのスーパーチャージステーションで無料充電ができたサービスが中止になる。

 ただし、ベースクラスはミッドレンジバッテリー(航続距離約422㎞)搭載で、オートパイロットなし、カラーも限定される。ボディカラーやインテリアを好みに合わせて選択し、オートパイロットなどのオプションを加えると、3万5000㌦を超える。テスラが主張するインセンティブとガソリン代の節約分を考慮しても、4万㌦台後半になる。  

 ではインセンティブなしに3万5000㌦のモデル3は販売できるのか。マスクCEOは以前からこの価格を〝将来のゴール〟に掲げている。しかしテスラストアに聞いてみると「現時点ではコンセプトカーのようなもの、あと数年はかかる」という返答だった。

 マスクCEOは「モデル3の市場が世界に広がっている現状もあり、3万5000㌦の車両はぜひとも実現したい」と繰り返し語っている。米国では政府や州によるインセンティブがあるが、報奨金が提供されない市場もある。モデル3は市場によっては非常に高額車でもあり、だからこそそのプレミアム性に魅力を感じるユーザーがいる。

 モデル3を年間数十万台生産できるようになれば、スケールメリットで価格が下げられるだろう。高いクオリティを維持したまま3万5000㌦のゴールが達成できるかもしれない。だが、世界各地で3万5000㌦のテスラ車が普及するまでには、まだ時間がかかりそうだ。

▲テスラ・モデル3のインテリア 大型モニターが未来的なイメージを演出
▲テスラ・モデル3のインテリア 大型モニターが未来的なイメージを演出
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