日産は、高齢ドライバーの安全走行を促進・啓発するため、新潟大学と共同で「ハンドルぐるぐる体操」を制作したと発表した。本体操は、主に高齢ドライバーが日々の生活の中で運動習慣をつけることで、筋力と認知力を高めて安全走行できるよう役立たれる。
▲ハンドルぐるぐる体操
日産と新潟大学は2018年に、まち・生活・交通を結び、安全な未来を目指す交通安全プロジェクト「トリトン・セーフティ・イニシアティブ」を立ち上げ、それを皮切りに、高齢者の運動・運転機能データの収集とその同期解析、高齢者への健康・交通安全教室、ドライバーに早目の点灯を呼び掛ける、「おもいやりライト運動」等の活動を共同で行っている。
今回発表した「ハンドルぐるぐる体操」は、「トリトン・セーフティ・イニシアティブ」における活動成果の一つで、新潟大学が取りまとめた高齢者約2,000人の運動機能データに基づき、クルマの走行実験による知見も使いながら、高齢ドライバーが簡単で楽しく実践できる体操として制作された。
また本体操は、高齢者が周辺の人々や社会と一体となり、明るく健康な暮らし、好きなところに安全に移動できること、を目的に制作されており、高齢ドライバーだけでなく、運動不足になりがちな方、どなたにもお勧めできるもので、高齢者がその家族や地域住民と一緒に励ましあい、楽しめる運動となっている。
■ハンドルぐるぐる体操(実演動画)
https://www.youtube.com/watch?v=4hxe-z7WrFY
ただの体操と侮ってはいけない。高齢者は、運動不足になりがちなことから、徐々に脚腰や腕の筋肉が劣り、筋力が低下した状態となり、加えて脳の指令通りにその筋肉を強く速く、あるいは巧みに動かせなくなるなど、運動機能が劣ってくる。運動機能が劣ると、クルマの運転機能にも、様々な悪影響が出てくることが新潟大学の研究から分かってきた。
第一に、下半身(特に股関節周辺)の筋力が低下することで、楽な姿勢をとろうとするために運転姿勢が前かがみになる。この前かがみの姿勢によって、メーターパネルを確認するたびに首の余分な上下運動が増え、ドアミラーを確認するたびに体の左右動作が必要になる。これが安全走行を阻害する原因の一つになり、脚を伸ばしたり曲げたりしてブレーキやアクセルを操作する動作がしにくくなると考えられている。
第二に、高齢者は肩から腕の筋力が低下することで、手を伸ばした姿勢でハンドル操作を続けることがつらくなる。特に長距離運転では背中の筋肉を中心に負担が掛かり、疲労が大きくなる。
第三に、運動機能の低下は認知力低下を招き、前方車両の急ブレーキなどとっさの場面で、適切な運転行動ができなくなると推測され、またスピード感覚や視野機能が劣ってくると考えられており、このようなことから高齢者は、運動機能の衰えと共に、クルマを安全に運転することが徐々に難しくなってくる。
「ハンドルぐるぐる体操」は、血流を良くする「リフレッシュ」、少しハードな「筋力アップ」、脳を刺激する「認知力アップ」の3つがあり、どれも覚えやすいように、3秒間4カウントで完結するリズミカルな動きの繰り返しで構成されている。
新潟市と出雲崎町では、既にこの「ハンドルぐるぐる体操」が高齢者や保育園児に実践されている。また高齢者と保育園児が、一緒になってオンリーワンのハンドルを作るワークショップも開始した。日産は今後この体操を広めながら、約1年をかけて複数地域、数百名の規模で効果や定着の検証を行うと共に、全国への普及も図っていく予定だとしている。
▲高齢者と保育園児がハンドルを作るワークショップの様子
本活動以外にも日産は、高齢ドライバーの関わる事故を減らすことを目的に、2019年より従業員の声から活動を始めた「助手席孝行」※を呼び掛けている。今後も、先進安全技術の幅広い車種への搭載や、さらに安全な技術開発の推進を通じて、交通事故のないゼロ・フェイタリティ社会の実現を目指していく。
※両親の運転を助手席から見守りながら運転能力を確認し、それを優しくフィードバックすると共に、運転について家族で話し合う機会とする試み「助手席孝行」特別サイト:https://www.nissan.co.jp/SP/JOSHUSEKI/
「ハンドルぐるぐる体操」を実践するにあたってのお願い
体操は筋力・認知力の側面から健康と安全を支援するものであり、交通事故防止に直接つながるものではありません。安全運転に十分心掛けましょう。
体操は無理をせず、体調に合わせて行って下さい。できることや時間を少しずつ増やしていくことをお勧めします。
体操は部屋の中など平らで滑りにくい場所で行って下さい。クルマの運転中の体操は危険ですのでお控え下さい。