GMとホンダ、フォードとVWの協業が深化。資本提携まで進むのか

視点を米国メーカーに置いて合従連衡策を読む

GMとホンダはFCEV開発から自動運転、EVへと提携を拡大

▲GMとホンダのEVプラットフォーム
▲GMとホンダのEVプラットフォーム

 米国の自動車産業は、かつて世界のリーダーだった。しかし、2007年のサブプライム住宅ローン問題と翌年のリーマン・ショックで大打撃を受け、クライスラーとGMは経営破綻した。現在、クライスラーはイタリアのフィアット・グループ傘下にある。再建を果たしたGMには、かつて世界最大の自動車メーカーだったころの勢いはない。そんな状況の中、米国勢が動き始めた。
 GMは今年4月、ホンダとの間でBEV(バッテリー電気自動車)の供給契約を結んだ。GMが開発したBEVプラットフォームをベースにバッテリーやアッパーボディをホンダと共同開発し、GMの工場で生産したモデルをホンダ・ブランド車としてホンダに供給する。量産は2023年をめどに開始し、2モデルの発売が予定されている。ホンダはこのモデルを北米地域で販売する。

▲ホンダe
▲ホンダe

 ホンダのBEVといえば、昨年の東京モーターショーで披露されたホンダeがあるが、同車は日欧市場用で北米での販売予定はない。ホンダeは全長4m以下のBセグメント・ハッチバックのため北米市場では小さすぎるという判断だろう。ホンダeの量産は今夏から始まる予定で、欧州市場には2021年モデルとして投入される。
 これまでにもGMとホンダは、FCEV(燃料電池電気自動車)の開発で協力関係にあったほか、2018年10月には自動運転領域での協力で合意した。GM子会社でこの分野を担当するGMクルーズにホンダが出資し、2030年までの12年間に事業資金20億ドル(当時の為替レートで約2200億円)を提供する契約を結んだ。GMクルーズにはソフトバンクも出資しており、無人ライドシェアや無人タクシーの分野での日米連合を形成している。これに今回、BEVでの連携が加わった。

▲オリジン(写真)はGMクルーズ社が開発した自動運転のライドシェア車両
▲オリジン(写真)はGMクルーズ社が開発した自動運転のライドシェア車両

フォードとVWはEV事業が中心

▲VWのヘルベルト・ディースCEOとフォードのジム・ハケットCEO  2019年7月協力関係の強化を発表したときの様子
▲VWのヘルベルト・ディースCEOとフォードのジム・ハケットCEO 2019年7月協力関係の強化を発表したときの様子

 フォードは昨年、ドイツのVW(フォルクスワーゲン)とBEVで連携した。2018年6月に戦略的提携に向けた覚書を交わし車両共同開発に乗り出すと発表。昨年7月にはVWが開発した電動車専用のプラットフォーム、MEBの提供が決まったほか、フォードが開発する中型ピックアップトラックをVWの商用車部門が2022年から発売すること、VWがフォード向けに商用バンを生産することなどが合意された。この6月に両社は「VWがフォードに提供するMEBベースのBEVが2028年までに60万台出荷される」という見通しを示した。
 一方、フォードは4月に米国の新興BEVメーカー、リビアンと提携し、リビアンが開発したBEV専用のスケートボード・プラットフォームを使用したリンカーン・ブランドのBEVを発売する計画を明らかにした。フォードのBEV展開はMEBベースのCセグメント車から高級セダン、大型SUVまで幅広い展開になるという。フォードはリビアンに対し出資しており、5月にはフォード現会長の娘(アレクサンドラ・フォード・イングリッシュ氏)がリビアンの取締役に就任した。

▲米国の新興EVメーカー「リビアン」社のR1S  フォード会長令嬢アレクサンドラ・フォード ・イングリッシュ氏はリビアンの取締役に就任
▲米国の新興EVメーカー「リビアン」社のR1S フォード会長令嬢アレクサンドラ・フォード ・イングリッシュ氏はリビアンの取締役に就任
▲米国のアルゴAl社(フォードから10億ドルの出資を受けて自動運転技術を開発)に対してVWは今年6月に26億ドルを出資した
▲米国のアルゴAl社(フォードから10億ドルの出資を受けて自動運転技術を開発)に対してVWは今年6月に26億ドルを出資した

協業は資本提携に発展するのか

 協業が進む一方で、GMとフォードは現在のパートナーとの資本提携については何も明らかにしていない。あくまで事業ごとの業務提携という姿勢である。とはいえ、金融業界などでは提携の行方に注目している。
 もしVWグループとフォードが連合を組めば、年間の世界販売台数は1600万台を超え、世界最大の自動車グループになる。GMとホンダが連携した場合は年間1300万台規模となり、これも2019年実績でトップだったVWの1097万台を上回る。こうした数字を見れば、本格的な資本提携の可能性がゼロとはいえなくなってくるのも事実である。

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