拡大路線に終止符。効率性と競争力強化を追求
日産自動車は5月28日に2020年3月期連結決算を発表した。それによると売上高は11兆5742億円、前年比14.6%減、本業の自動車製造販売で得た利益を示す営業利益は405億円の赤字、最終的な純利益は6712億円の赤字となった。リーマンショックの影響を受けた2009年3月期以来の赤字だ。日産は「2023年度に営業利益率5%を目指し、世界シェアは6%を達成する」という。かつての目標を大幅に後退させた。
日産の2019年3月期決算は、日本、北米、アジアの3地域で3111億円の営業利益を得ていた。今回発表された2020年3月期決算では、地域別の営業黒字はアジアだけ。全世界での販売台数は2019年3月期の551万6000台から493万台へと58万6000台減少した。これが営業利益に大きく響いた。また、日産に43.7%を出資する親会社の仏・ルノーと、日産が34%を出資する三菱自動車もそろって赤字となった。この状況を踏まえて、日産の決算発表前日にルノー・日産・三菱のアライアンスの当面の方針も発表された。
それによると、3社は地域ごとに責任分担を行うという。ルノーは欧州、ロシア、北アフリカ、南米、日産は日本、中国、北米、三菱は東南アジア、オセアニアを担当する。商品開発は日産が自動運転やADAS(先進安全運転支援)関連、ルノーは電動車のプラットフォーム、三菱はPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)という責任分野を設定した。
生産・販売展開では、新興国を対象にしたブランド「ダットサン」を韓国およびロシアから撤退させる。また、スペインのモトールイベリカ閉鎖に向けた協議と準備を進める。インドネシア工場を閉鎖してアセアン域内の生産拠点はタイに絞り込む。日産としてのコア(中核)マーケットを日本、中国、北米に絞り込むために取捨選択を行う、という計画だ。
一方、ルノー・日産・三菱アライアンスとして共通化するプラットフォームをを現在の4割から8割に増やす。現在はアンダーボディにとどまっている共通化をアッパーボディにまで拡大する。これらを実施すると、車両開発費を1モデル当たり最大4割削減できるという。
日産の計画は、ここ数年で失った販売台数の奪還にも取り組む。C/Dセグメント、EV(電気自動車)、スポーツカーをグローバルなコアモデルに位置付け、投資を集中する。同時に、今後18カ月で12の新型車を投入するという。この中には、日本市場用のEV2モデルとeパワー搭載車4車種が含まれる(電動化率は6割以上)。
この再建計画では、日産のグローバル生産能力は現在より2割減少し、通常シフトでの世界生産台数540万台となるが、工場稼働率で減少分はカバーする。全世界での商品は現在の69車種から55車種以下に減少するが、日産の固定費は3000億円セーブできるという。
カルロス・ゴーン前CEOが指揮していた時代のルノー・日産アライアンスは、とにかく拡大路線一辺倒だった。三菱がアライアンスに加わった後の2017年9月には中期経営計画、アライアンス2022を策定、3社の世界販売台数を2022年には1400万台とし、「世界最大自動車グループになる」ことを目指していた。しかし、このほど行われた3社の記者会見では「台数中心の成長ではなく、効率性と競争力の向上を目指す」と明言。拡大路線と一線を画した経営方針を示した。