トヨタとスズキが2020年4〜6月期決算で黒字を確保。両社に流れる「稼ぐ力」の秘密

▲トヨタ・ヤリス トヨタ・グループはヤリスとライズ/ロッキーの販売が好調 業績を支えた
▲トヨタ・ヤリス トヨタ・グループはヤリスとライズ/ロッキーの販売が好調 業績を支えた

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界中の経済が大打撃を受けた。自動車メーカーが発表した今年4~6月期の決算は、ほとんどが赤字だった。そうした中で、トヨタとスズキは黒字を確保。販売不振の中でも黒字を維持する秘密は何か。

新型コロナウイルスの影響甚大。軒並み赤字決算を報告

 世界中で猛威を振るうCOVID―19(新型コロナウィルス感染症)が自動車産業に大打撃を与えている。
 今年上半期(1〜6月)の販売台数は、世界最大市場の中国が1025万台、前年同期比16.9%減。2番目に大きい米国市場は536万台、同37.1%減。欧州(EU=欧州連合/EFTA=欧州自由貿易連合および英国の合計)は乗用車が459万台、同40.1%減、3.5トン以下の小型商用車が10万8000台、同44.7%減。日本は軽自動車も含めた全体需要で220万台、同19.8%減と、主要市場は軒並みマイナスだった。当然、自動車メーカーの業績も悪化した。
 主要な自動車メーカーが発表した2020年の第2四半期(2020年4〜6月=3月末締め決算の日本企業では2020年度第1四半期になる)は、昨年の世界販売台数トップのVW(フォルクスワーゲン)は16億700万ユーロ、6月末の為替レート(1ユーロ=121円)で計算して1944億円の赤字、米・GMは7億5800万ドル、 6月末の為替レート(1ドル=108円)で計算して約818億円の赤字だった。
 米・フォードは11億1700万ドル、約1206億円の黒字だったが、この中にはフォード子会社の自動運転AI(人工知能)開発会社、アルゴAIに対しVWが出資した関係で、フォードが得た35億ドルの利益が含まれている。つまり、実際には23億8300万ドル、約2573億円の赤字だった計算になる。
 このほかホンダは808億円、日産は2856億円、SUBARU(スバル)は77億円、マツダは666億円、三菱自動車は1761億円と、いずれも赤字。
 ダイムラーは19億600万ユーロ(約2306億円)、BMWは6億6600万ユーロ(約833億円)、ルノーは73億ユーロ(約8833億円)、FCA(フィアット・クライスラー)は9億2800万ユーロ(約1122億円)と、それぞれ最終赤字を計上している。主要自動車メーカーだけで2兆1000億円もの最終赤字だった。

▲ダイハツ・ロッキー トヨタ・グループのダイハツが設計・生産する小型SUV(トヨタ・ライズ)はユーザーのニーズを捉えたヒット作
▲ダイハツ・ロッキー トヨタ・グループのダイハツが設計・生産する小型SUV(トヨタ・ライズ)はユーザーのニーズを捉えたヒット作

 一方、トヨタは前年同期の6191億円に対し1588億円、スズキは前年同期の405億円に対し18億円と大幅に減少したものの、最終利益で黒字を確保した。
 トヨタのグループ世界販売台数(ダイハツ/日野を含める)は2019年度第1四半期比31.8%減、スズキの4輪販売台数は同64.3%減だった。トヨタの売上高(トヨタは今年度から国際財務報告基準を採用しているため表記上は営業収益となる)は2019年度第1四半期比3兆1204億円減り、スズキの売上高も同4822億円減った。
 しかし、両社とも赤字にならなかった。トヨタは中国とアジアでの堅調な販売が好結果につながり、スズキは北米での2輪車事業やマリン事業といった分野が4輪事業での損失を埋めた。
 中国では1〜3月にCOVID―19の影響が大きく、自動車生産は多くの工場でストップしたが、震源地だった武漢市を封鎖した対応策で全土への感染流行を防ぐことができた。そのため自動車販売は5月から持ち直し、トヨタも四半期販売台数ではプラスになっている。スズキは中国の4輪事業から撤退しているが、中国の2輪車事業は販売台数で前年同期比プラスだった。

▲スズキ・スペーシア 
▲スズキ・スペーシア 

 一方、スズキにとって最大の海外市場であるインドは四半期の販売台数が前年同期比82.1%と大きく落ち込んだ。インド政府がインド全土での都市封鎖を行ったため、4月の販売台数は前代未聞の0台。5月は4輪・2輪・商用車合わせて前年同月比84.3%減、6月は同40.9%減だった。トップシェアのスズキはこの影響をもろに受けた。
 日本国内については、外出自粛はあったものの都市封鎖は行われなかったため、全体市場の落ち込みは欧米ほど大きくはなかった。しかし販売実績は大きく落ち込んだ。その中でスズキとトヨタも前年比ではマイナスだったが、傷口を広げずに済んだ。地元市場である日本国内で営業利益を確保したことが、両者の最終黒字に貢献したといえる。
 トヨタ・グループの4〜6月は、新型ヤリスとダイハツ設計・生産のライズ/ロッキーが戦力に加わり、登録車の車名別販売台数トップ10でトヨタ系が7台を占めた。軽自動車では6月からタフトが加わり、5月はミラ・イースを重点販売し、ダメージを小さくとどめた。
 一方スズキは、軽自動車販売において、スペーシアを中心に健闘。5月と6月は、ダイハツを上回る販売台数を達成している。登録車はソリオを前面に押し出して、販売台数を積み重ねた。

イラスト●安田雅章
イラスト●安田雅章

 こうした販売実績と併せて、スズキもトヨタも諸経費の削減と原価低減努力が効いた。この点は両社で共通している。
 会社名と同じ名字の社長が指揮を執るという点も、トヨタとスズキは同じ。危機に対して組織全体が一致団結するという点は、かつてのリーマン・ショックのときも両社は今回と同じ傾向があった。つまり、危機管理という点で、両社は似ていた。
 なお、2020年の通期予想としてトヨタは7300億円、ホンダは1650億円、スバルは600億円の黒字を見込んでいる。一方、日産は6700億円、マツダは900億円、三菱自動車は3600億円の赤字になる見通しと発表している(スズキは未定と発表している)。

SNSでフォローする