2020年上半期、欧州国別ベストセラー車が判明

2020年1〜6月、欧州各国でどのようなモデルが売れたのか。ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペインと、5大マーケットを中心にランキングを調べた。自動車生産国は、国内に拠点を置くメーカーが強みを発揮している状況がよくわかる。

▲テスラ・モデル3  新型コロナウイルス感染症が拡大する中でネット販売のテスラ人気が高まった
▲テスラ・モデル3 新型コロナウイルス感染症が拡大する中でネット販売のテスラ人気が高まった

 2020年上半期の欧州乗用車市場はCOVID-19流行による都市のロックダウン(封鎖)で大打撃を受けた。最も販売が落ち込んだ4月は前年同期比76.3%減。その後は5月、6月とマイナス幅が小さくなり、通年では前年比20%台のマイナスに落ち着くとの見方が現在は主流だ。では、国別に見るとどうなのか。都市封鎖が多かった国とそうでない国との差はあるのか。どんなモデルが売れたのか。その点を調べた。
 まず、欧州の主要自動車消費国を見ると、最大市場のドイツは1〜6月が34.5%減、2位の英国は48.5%減、3位フランスは38.6%減、4位イタリアは46.1%減、5位スペインは50.9%減だった。今年3月上旬に感染者が急増したイタリアは、3月末には累計感染者数が10万人を超えた。この時点ではスペインの感染者数は8.5万人、ドイツは6.2万人、フランスは4.5万人、英国は4.2万人だった。
 その1カ月後、4月末時点では英国にはまだ収束の兆しが見られず、イタリア、スペイン、ドイツは毎日の感染者数が減りつつあった。このころは都市封鎖が続き、その中でネット販売中心のテスラが売れた。4月までには欧州メーカーも相次いで小型BEV(バッテリー電気自動車)を投入していたが、最も売れたのはテスラだった。
 そして6月末。この時点では英国が最も累計感染者数が多かったものの、主要自動車市場国はそろって感染が下火になっていた。6月中にドイツとフランスはBEVへの補助金上乗せを決定。「コロナ後」の自動車市場活性化策は、電動車の購入補助金を積み増し、ディーゼル車とガソリン車は無視。政治的判断である。

▲VWゴルフGTD(8thモデル)
▲VWゴルフGTD(8thモデル)

 調査会社のJATOによると、1〜6月の国ごとのモデル別販売台数は、ドイツは1位VWゴルフ、2位VWパサート、3位フォード・フォーカスであり、6位に入ったBMW3シリーズは前年同期比4%増だった。
  フランスは1位が新型プジョー208、2位はルノー・クリオ、3位はシトロエンC3。プジョー208の中にはBEV仕様が含まれる。なお、最量販BEVはルノー・ゾエ。ルノーは「上半期で3万7540台を販売し、前年同期比約50%増」と発表している。
 英国の1位は英国フォードが製造するフィエスタ、2位はVWゴルフ、3位フォード・フォーカスと、国産勢が上位を占めたが、BEVの販売台数について英国自動車工業会は「正確な集計は取れていないが、それほど多くはない」としている。

▲プジョー208  新型の販売は日本でもスタートした
▲プジョー208 新型の販売は日本でもスタートした
▲フォード ・フィエスタ
▲フォード ・フィエスタ

 同じ1〜6月のイタリアのデータを見ると、1位フィアット・パンダ、2位ランチア・イプシロン、3位ルノー・クリオと国産勢が強かったが、VWの小型SUV、Tロックが9位に入った。コンパクトなSUVが人気を集める傾向は、国土に山岳地帯を抱える国に共通している。
 スペインは1位セアト・レオン、2位日産キャシュカイ、3位ダチア・サンデロだった。

▲フィアット・パンダ
▲フィアット・パンダ
▲セアト・レオン
▲セアト・レオン

 SUVが売れる傾向は欧州に共通している。バルト3国(リトアニア/ラトビア/エストニア)でそろって1位がトヨタRAV4だったのは興味深い。
 電動車が自動車購入税やフェリーおよび高速道路料金無料などで圧倒的に優遇されているノルウェーでは、PHEVとBEVの新車シェアが70%に迫っている。モデル別販売台数は1位がアウディeトロン、3位が日産リーフ、4位ヒュンダイ・コナと電動車が上位を占めたが、それでも2位にはVWゴルフが入っている。

▲トヨタRAV4
▲トヨタRAV4
▲日産リーフ
▲日産リーフ
SNSでフォローする