経済産業省が扱っていたCEV(クリーンエネルギー自動車)導入補助金(以下CEV補助金)の予算到達時期が見えてきた。CEV補助金の交付を行う次世代自動車振興センターは7月25日時点で予算残高が約177億円になり、「申請受け付けの終了が10月末になる見込み」だと発表した。9月1日現在、この情報は更新されていない。
補助金を申請するには「車両の初度登録(届出)の日から1カ月以内(翌月の前日までの消印有効)」と定められている。電気自動車を買ってCEV補助金を受け取ろう、と思っているなら、いますぐディーラーに行って契約を。納車が間に合うかどうか、ギリギリのタイミングだ。
令和3年度補正予算に組まれたCEV補助金額は375億円、令和4年度当初予算の補助金額は155億円の合計530億円。令和3年度のCEV補助金は電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車を対象にしていたが、令和4年度はクリーンディーゼルやミニカーも対象になっている。補助金交付の申請書は4月28日から受け付けがスタートしており、開始から3カ月で予算の約66%に到達したことになる。
次世代自動車振興センターは「予算額に達した日の前日をもって申請の受け付けは終了」と発表している。申請に必要な書類がまとまったら、すぐに投函しよう。センターは「予算の執行状況を踏まえて、残高・申請受付終了見込みを更新する予定」である。こまめに情報を確認するといい。
ところで、CEV補助金事業の目的・概要は「導入初期段階にある電気自動車や燃料電池自動車などについて購入費用の一部補助を通じて初期需要の創出・量産効果による価格低減を促進」することにあり、成果の目標として「グリーン成長戦略などにおける、2035年までに乗用車新車販売で電動車100%とする目標の実現に向け、クリーンエネルギー自動車の普及を促進」することを掲げている。電動車と表現しておきながら、令和4年度のCEV補助金にハイブリッド車は含まれていない。
ハイブリッド車が対象外になっている理由は、次世代自動車振興センターが公表しているデータから透けて見える。EV、PHEV、FCV、ハイブリッド車の保有台数を一覧表で公開しているのだが、2020年度末のEV保有台数は12万3706台。PHEVは15万1241台。FCVは5170台。合計で28万6520台だ。これに対してハイブリッド車は1181万7483台。EV系車両の構成比は2.4%でしかない。ハイブリッドは年間100万台ペースで保有台数が増えているが、EVなどは2万5000台程度の増加である。
この数字から推定できるのは、多くのユーザーは「燃費がよくて環境負荷が少ないハイブリッド車は、ごく普通のクルマ」として受け入れているが、EV系は「充電や航続距離などを高いハードルだと感じ、購入に踏み切れない」ということ。「だからこそ、補助金を用意したのです」、といわれればそれまでだが、少なくとも心理的な抵抗を感じることなくEVライフが過ごせるようなインフラ整備をアピールする必要があるのではないか。「充電設備にも補助金を用意しています」と反論されそうだが、“あっ、ここでも充電できるんだ”という見える化を進める必要はあるだろう。
それにしても、本格的にBEVやFCVの普及を目指すのであれば、530億円の予算とは少なすぎないか? 年間100万台が交付対象だとすれば、1台につき5万3000円である。
CEV補助金額は車種やグレードで異なるが、EVの場合は最大で85万円(軽自動車は55万円、高度な安全運転支援技術装備車は7万円増額)。交付対象がすべて85万円だった場合は6万2353台分、軽自動車の55万円だと9万6364台分である。
「2万5000台ペースだった増加が、10万台ラインに乗るのだから大躍進」と自画自賛されそうだが……。 「令和3年度から令和7年度までの5年間の事業」で、電動車100%に向けたCEVの普及に取り組むのであれば、予算規模をもっと大きくして、購入者全員が補助金の対象になる程度の配慮をみせてほしい。カーボンニュートラルという大テーマを追求するには、それくらいの覚悟が必要かも。