日産は自然災害などによる停電時に電気自動車の大容量のバッテリーから非常用電力を供給できる、災害復旧支援を目的とした電気自動車のコンセプトカー、「RE-LEAF」を欧州で発表した。
「RE-LEAF」は、災害対策における緊急対応(emergency REsponse)、人道支援(humanitarian REcovery)、そしてコミュニティの強靭性(REsilience)の3つの「RE」を由来として名付けられ、量産電気自動車「日産 LEAF」をベースに製作されたコンセプトカーだ。
「RE-LEAF」には瓦礫など障害物の多い災害時の悪路走行を可能とする改良を加えるとともに、簡単に電気を取り出せるよう、クルマのフェンダー部分に耐候性の高い電気ソケットを取り付け、搭載する大容量リチウムイオンバッテリーから110~230Vの電気機器へ電力の供給を可能としている。高められた悪路走破性により「RE-LEAF」は、被災地域を自由に移動し、復旧作業に必要な照明や作業ツールの電源としてだけでなく、通信や冷暖房など、被災者の方々が必要とする機器に電力を供給する。
「日産は、電気自動車が単なる移動手段としてだけでなく、人々の生活に豊かさをご提供できる方法を常に模索しています。『RE-LEAF』のようなコンセプトカーは、災害復旧支援における電気自動車の可能性、よりスマートでよりクリーンなテクノロジーが救命活動、災害復旧支援などの一助となることを提案しています。」と欧州日産でプロダクトマーケティングを担当する、ヘレン ペリー部長はコメントした。
「RE-LEAF」は、「日産リーフ」に搭載されている、電力供給機能を活用している。「日産リーフ」は大容量バッテリーに貯めた電力を走行時に使用するだけではなく、PCS(Power Control System)を介して建物や電子機器に電力を供給することができる。さらには、電力系統を安定化させるV2G(Vehicle-to-Grid)技術によって、再生可能エネルギーの有効活用や発電施設の負荷を低減することも可能としている。これらの機能は電気自動車を家庭や社会に電力を供給する移動可能な蓄電池としての活用、また電力需給の安定化への貢献により、将来の分散型エネルギーモデルの構築に寄与することを目的とした「ニッサンエナジー・シェア」という考えに基づいている。
自然災害は多くの停電をもたらしてしまう。世界銀行が2019年に発表した報告書によると、2000年から2017年に発生した停電のうち、ヨーロッパでは37%が、米国では44%が自然災害と気候変動が原因とされている。災害が発生した場合、電力が復旧するまでにおおよそ、24~48時間かかると言われている。その間、電気自動車は排出ガスを出さない非常用電源として活用することができる。
「電気自動車は、災害対策の手段として注目されているだけでなく、数多くの電気自動車が電力系統とつながることで、仮想発電所として電力の供給を可能とするなど、他に類を見ない可能性を秘めています。」とペリーはコメントする。
「RE-LEAF」は、災害発生時における電気自動車の可能性を実証するために製作されたが、電気自動車からの電力供給は既に実際の被災現場で活用されている。日本では2011年から自然災害による停電時の非常用電源、または移動手段として「日産リーフ」が活用されており、そして2018年より「ブルー・スイッチ活動」を開始し、現在、国内の60を超える地方自治体と「災害連携協定」を締結し、災害の復旧支援のために電気自動車を活用するプログラムを進めている。2019年10月に発生した台風19号の際には、長野県のボランティアセンターにおいて「日産リーフ」が活躍した。
62kWhのバッテリーを搭載した「日産リーフ e+」は、停電時において一般家庭の約4日間分に相当する電力を供給することができる。
<230Vの電気機器の消費電力の例>
電動削岩機 ー 24時間 ー 36kWh
ベンチレーションファン ー 24時間 ー 21.6kWh
電気ケトル (10ℓ) ー 24時間 ー 9.6kWh
100W LED照明 ー 24時間 ー 2.4kWh
車両製作は、イギリスを拠点とするエンジニアリングおよびモータースポーツ会社であるRJNが行い、プロジェクト管理はGTA Global Ltd.が担当している。