世界耐久選手権(WEC)2019―20年シーズン第7戦ル・マン24時間レースの決勝レースは9月19日〜20日にル・マン24時間サーキット(1周13.626km)で行われ、トヨタ・ガズー・レーシングのTS050ハイブリッドをドライブするS・ブエミ/中嶋一貴/B・ハートレー選手組の8号車が優勝した。トヨタと8号車のブエミ、中嶋両選手はル・マン3連覇を達成。最終戦バーレーン8時間(11月14日決勝)を待たずにチームタイトル獲得を決めた。
19日の決勝スタート前にはトロフィー返還セレモニーが行われ、18年、19年のル・マン24時間で総合優勝を果たしたTS050ハイブリッドをベースにしたロードカー、GRスーパースポーツ(仮称)の開発車がル・マン24時間サーキットを1周した。ル・マンを走った開発車は特別にオープン仕様にカスタマイズされていたが、本来はクローズド仕様だ。幅広のサイドポンツーンを乗り越えて乗車するため特別なドアの開閉機構を備えているとも予測され、その機構を正式発表まで隠しておくためにオープン仕様にしたと推定できる。
GRスーパースポーツは「コンセプト」の名称をつけて18年1月の東京オートサロンで世界初公開された。24時間レースを誰よりも速く走るために開発されたレーシングカーを、公道で走れるように仕立て直したハイパーカーだ。パワートレーンはTS050ハイブリッドと同じで、最高出力500psを発生する2.4リッターV6直噴ツインターボエンジンをミッドに搭載。合わせて500psの最高出力を発生するモーターを前後に装備している。システム総合出力は1000psに達する。
「発売する」ことは発表されているが、時期は未定だ。価格については「ハイパーカーのくくりから想像いただくしかない」と関係者は語っている。スーパーカーを超える希少性を考えると、日本円で億の単位になるだろう。
WECは21年3月から始まる21年シーズンから、最上位カテゴリーのLMP1をル・マン・ハイパーカー(LMH)規定に切り換える。LMP1は専用に開発したレース車両で参戦する規定だが、LMHは市販ハイパーカーをベースにレース車両に仕立てる規定だ。つまり、GRスーパースポーツは、TGRがWECの21年シーズンに投入するLMHのベース車両という意味合いもある。「来年はこんなクルマで走りますよ」と、お披露目した格好である。
迷彩柄が施されたGRスーパースポーツは、18年のコンセプト車両と異なり、ダミーだったヘッドライトが実装され、エンジンカウルにあったテールパイプがディフューザーに移るなど、最終仕様に近い状態になっていることが確認できた。
21年シーズンのWECに投入する実戦仕様は、10月中にシェイクダウンが行われる予定で、21年1月11日に正式発表を行うことがアナウンスされている。
同じタイミングで市販バージョンの正式発表もあるのだろうか。