ビプロジーは新会社、Vドライブテクノロジーズを設立し、自動運転車の安全性評価のためのプラットフォーム、DIVPの提供を開始した。
と書き出したが、「何もわからない!」という声が聞こえてきそうだ。まずビプロジーがわからない。しかし自動運転車の安全性は重要だし気になるので、ひとつひとつ紐解いていこう。
ビプロジーはITサービス企業で、2022年4月に日本ユニシスから社名を変更した。日本ユニシスといえば、大手のIT系企業として知られた存在だ。あるいは東京ディズニーランドのエレクトリカルパレード・ドリームライツのスポンサーとして聞いたことがあるかもしれない。
DIVPはドライビング・インテリジェンス・バリデーション・プラットフォームの略。これは、仮想空間で自動運転車の安全性を評価する、ということだ。
つまり冒頭の一文は、「ビプロジーが自動運転車を仮想空間でバーチャル評価する新会社を作りました」と言い換えれば少しわかりやすいか。
自動運転車の実用化には信頼性確保が最重要課題であり、安全性評価方法の確立が急務といわれている。しかし実車の評価だけで、公道で起きるすべての事象を再現するのは大変難しく、膨大な時間がかかる。メーカーやサプライヤーは自動運転が難しい状況でこそ、繰り返しテストしたいわけだが、たとえば雨や逆光など、同じ気象条件を待っていては研究・開発が進まない。
これは各自動車メーカーやサプライヤー共通の課題であり、競争領域ではない。そこで内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の中で、自動運転に関するテーマとして取り上げ、トヨタや神奈川工科大学、ビプロジー、ドライビングシミュレータ開発で有名な三菱プレシジョンなど産官学連携で研究が進められ、世界最高のDIVPシミュレーションができたので、皆さん使ってください、というわけだ。
自動運転については「日本は遅れている」、「いや進んでいる」、あるいは「当分実現しない」「実現する見込みはないと思う」とまで言い切る人もいる。実情に詳しいと思われる業界関係者にも、実現は難しいという認識の人はいる。
それは無理もない。この日本の過密で複雑な交通事情を知っているからこそ、そういった結論に導かれるのだろう。
しかし、そうはいっていられないのが自動車メーカーやサプライヤーだ。
DIVPシミュレーションは東京臨海部の実証実験や日本自動車研究所(JARI)のADAS試験場(2022年10月号119ページ参照)におけるリアル評価でしっかり検証される。交通事故総合分析センターや自動車技術会ヒヤリハットデータベースなどの知見も活用される。さらにドイツとも連携を図り、国際標準化を推進するという。
シミュレーションの仕組みは、カメラ、ライダー、レーダーといったセンサー類をモデル化し、さまざま走行シナリオにおいて各センサーの弱点を再現。実際にどのセンサーが対象物をとらえられているのかが把握可能。最終的には、ぶつからないかという評価までできる。
首都高速C1の浜崎橋~銀座間のバーチャル画像を見たが、周囲の建物や構造物、急な割り込みや先行車の減速といったシナリオが現実さながら忠実に再現されていて、目まぐるしくセンサーが反応する様子もリアルタイムで可視化されていた。
シミュレーションといえば、衝突安全性の向上という面において、すでに素晴らしい実績がある。自動運転の分野でも期待したい。