トヨタ・モビリティ基金、交通事故削減につながるレンタカーを使った実証実験の結果を公表。今後新たな実証実験へ

 トヨタ・モビリティ基金(以下「TMF」)は、昨年12月から今年5月まで沖縄県において、矢崎総業、トヨタレンタリース沖縄、JTBとレンタカー利用者の安全運転支援のための実証実験を実施してきた。その結果、危険挙動の削減や速度の抑制などの発生頻度をを46%~78%減少できたと発表した。

危険告知交差点における運転挙動の変化についてのグラフ

▲実証データの対象期間:2021年12月9日~2022年5月31日 | 実証前(比較)データの対象期間:2020年8月10日~2021年6月30日

 沖縄県や北海道といった観光地域では、事故件数は全国同様に減少傾向にあるものの、レンタカー運転中の事故が地域の課題となっている。

今回の実証実験は、出発前に観光案内を兼ねたインタラクティブ動画の視聴を通じた注意喚起の実施。運転中には矢崎総業が開発した車載タブレット用アプリにより、レンタカー利用者の走行中の速度、加速、急ブレーキなどの情報をもとに運転診断を行い、結果をフィードバック。また事故多発地点では事前にアラートを行った。走行後にはその結果に応じた空港店舗で利用可能なクーポン券の進呈するなど、レンタカー利用者の安全運転意識向上を目指し行われた。

レンタカー利用者に向けて行った実証実験の概要についてのイラストと説明

▲実証実験の全体企画について

 本事業の実施にあたっては、データの活用と分析、ツールの開発、車両への取り付け等、仕組みの構築に向けて、矢崎総業、トヨタレンタリース沖縄、JTBと協力し、全日本空輸、日本航空、ANA FESTA、JALUXエアポートは特典の提供を支援した。

  2021年12月9日から2022年5月31日まで行われた実証の結果、危険度が高い8箇所の交差点においては接近時に警告を行い、実証前と比較して速度超過46%、急発進49%、急加速78%、急減速50%の発生頻度の減少を確認できた。

車に車載されたモニタに、運転状況に応じてキュートなキャラクターが表情を変えるシステムの紹介イメージ

▲安全運転度に合わせてキャラクターの表情が変化するアプリも好評で、ピーク速度減少等の効果につながった

 

 これまでの実証実験の第2弾として、2022年10月1日~2023年3月31日に新たな実証計画を予定している。対象エリアは同じく沖縄本島で、トヨタレンタリース沖縄において本実証実験に同意いただいた利用者を対象に行われる。第2弾の新たな取り組みとして「T-Connect」の活用や多言語化を推進など4点が挙げられた。

 1つ目は、トヨタのコネクティッドサービス「T-Connect」を活用したデータ分析だ。レンタカーの運転特性と事故が起きやすい箇所を把握し得られた情報を車載タブレット用アプリと連携させ、注意喚起する箇所を追加する。

2つ目は、訪日外国人観光客向けに多言語化を推進する。3つ目は車載タブレット用アプリより新たな観光情報を提供し、利用者の行動変容を促進して分散周遊へつなげる。

最後に、新たに琉球大学・東京大学や沖縄県警とも連携をスタート。さらなる事故削減・観光振興策の検討など産学官で地域課題解決に取り組む。

今後行われる実証実験の概要図

▲今後行われる実証実験の概要について

■トヨタ自動車・矢崎総業・沖縄県警(協力) コメント
 新たにトヨタ自動車も参画し、コネクティッドサービス「T-Connect」を活用したレンタカーの特性分析を行い、事故が起こる可能性が高いと推定される箇所を抽出します。さらに、沖縄県警にデータの検証・確認をご協力いただいた事故多発箇所も加えて矢崎総業の車載アプリに取り込み、レンタカーのドライバーに注意を促す事で、さらなる事故の未然防止を図ります。

■琉球大学(神谷大介准教授)・東京大学(福田大輔教授)・JTB・矢崎総業 コメント
琉球大学 神谷大介准教授・東京大学 福田大輔教授のご協力のもと、これまで蓄積したレンタカー車両の行動データを各種観光施策の検討にも役立てます。また、車中で新たに観光情報を提供することにより分散周遊を促し、渋滞解消を図って快適な観光地としての魅力向上につなげていきます。

■全日本空輸・日本航空および日本トランスオーシャン航空・ANA FESTA・JALUXエアポート コメント
全日本空輸、日本航空および日本トランスオーシャン航空、ANA FESTA、JALUXエアポートは、安全運転者への特典(航空券・地域の産品等)の提供をすることで本実証に協力し、レンタカー利用者の安全運転支援に努めてまいります。

トヨタのレンタカーが沖縄の道を走る写真

▲トヨタ自動車の車両データを「産学官」で活用し、さらなる安全運転促進と観光振興等地域課題の解決に取り組んでいく

 交通安全の実現には、ドライバーや歩行者という「人」に対する啓発活動、安全な「車」の開発、信号設置や道路整備など「交通環境」整備、の三要素が一体となった取り組みが重要だ。TMFでは、啓発ツールの充実や関係機関と連携した「人」への啓発活動に加え、既存技術の組み合わせや新たな技術や視点の導入を通じ、「交通事故死傷者ゼロ社会」の実現に向けて取り組みを推進していく。

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