一般社団法人 ICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構(TOPIC)、群馬大学、日本モビリティ、日本電気(NEC)、は、群馬県前橋市において5G技術を活用した自動運転バスの公道実証を本年2月15日から28日にかけて実施する。
本実証は総務省事業である令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」(注5)の委託を受け、自動運転バスの社会実装を目指し実施するものだ。
昨今、少子高齢化の進行や都市部への人口集中などに伴い、地方では公共交通機関が縮小するなど地域毎の公共交通サービスの格差が進行している。また、肉体的・精神的に負荷のかかるドライバーの人材不足も社会的に大きな課題となっている。
こうした中、前橋市では持続的な公共交通インフラの供給に向けて、2022年に自動運転バスを社会実装するための取り組みを推進しており、今回、その取り組みの一環として、5Gやエッジコンピューティングをはじめとする先進技術を活用し、公共交通手段であるバスを対象に自動運転の実用化に向けて実証を行い、その成果やノウハウを活かして社会実装への展開を目指す。
■前橋市公道実証の実証場所・期間
場所:群馬県前橋駅から中央前橋駅までの区間(約1km)
期間:2021年2月15日から28日まで
日本中央バス株式会社が運行する一部のバスを対象に、自動運転の実証を実施。通常運行のバス同様、どなたでも乗車することができる。
本実証における各団体の役割として、TOPICは全体統括、コンソーシアム事務局を行い、群馬大学は前橋5Gの自動運転連携に関する技術分析評価およびその実装と横展開に関する検討を行う。
また、日本モビリティは5G対応型遠隔管制システム、5G対応型自動運転システムの提供。NECは、技術統括、ローカル5G基地局・エッジコンピューティング・学習型通信品質予測技術(注6)・学習型メディア送信制御技術(注7)の提供、他地域実証推進を行っていくとしている。
※キャリア5G基地局(キャリー5G™)はNTTドコモが提供
(注6) 学習型通信品質予測技術
遅延やスループットなどの通信品質の変動パターンを学習し、走行車両や路上カメラの通信品質を可視化・予測する技術。
(注7) 学習型メディア送信制御技術
映像から注目領域とその画質を自動調整することにより、リアルタイム性と視認性を確保しながら、送信データ量を削減する映像配信技術。
■実証実験の内容
今回の実証実験では、群馬県の前橋駅から中央前橋駅区間の公道において、日本中央バスのバスを用いて、5G技術の高速・大容量・低遅延のメリットを活かし、自動運転遠隔管制や路車間通信を実現するソリューションの技術検証を行う。限定した地域でのレベル4自動運転(完全自律型自動運転)の社会実証を想定し、日本中央バスの通常運行のバスとして利用者を乗せて行う。
なお、本実証実験では完全自動運転を行うが、ドライバーが乗車し、緊急時にはドライバーの判断で手動運転に切り替えることで安全性を担保する。また、安全確認のため、公道走行時に群馬大学研究・産学連携推進機構次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)の遠隔管制室から遠隔監視を行う。
実証実験では大きく分けて3つの問題の解決について取り組む。
■5G対応型遠隔管制室情報集約ソリューション(車両ー遠隔管制室間)
5G技術の利用により、遠隔管制室へ高速・大容量のデータ転送ができるため、車両カメラの映像も大容量で高画質のまま転送可能になる。従来の4G/LTE通信では車両から遠隔管制室に送信できる速度や容量に制限があり、車両カメラで撮影した対向車や周辺の交通状況の高精細映像を伝送するのは困難だったが、情報密度が向上してより高画質なまま伝送でき、遠隔監視室からの遠隔監視・操作者の安全確認業務を支援する。
■5G対応型遠隔管制室情報集約ソリューション(路側ー遠隔管制室間)
5G技術を利用して路側に設置したカメラやセンサ情報を収集することで、死角の映像情報を遠隔管制室へ高速・大容量でデータ転送が可能になる。従来の手法では、車両カメラから死角となる道路や、歩行者や自動車で混雑するバスターミナル内等は遠隔管制室から見えず、周辺状況の確認に時間が掛かっていた。路側センサの情報をAI処理し、遠隔管制室に転送することで車両の死角情報を補完し、遠隔監視・操作者の安全確認業務を支援する。
■5G対応型車両制御直結ソリューション(車両ー路側間)
5G技術及びエッジコンピューティングによる低遅延の特性を活かし、路側センサから必要な情報を車両制御に直結させることで、緊急停止等のリアルタイム性が求められる運行管制を支援する。
上記の、車両ー遠隔管制室間と、路側ー遠隔管制室間のソリューションについては、日本モビリティが、自社の遠隔管制システムと自動運転システムの技術に5G通信を対応させ、自動運転の社会実装に、より幅広い選択肢を用意し、安全かつ効率的な無人移動サービスプラットフォームの構築を加速させる。
上記3つのソリューションで、NECの学習型通信品質予測技術と学習型メディア送信制御技術を活用する。両技術を用いて、走行車両や路上カメラの通信品質を可視化・予測し、それに応じてカメラ映像から注目領域の画質を自動調整することにより、カメラ映像の送信データ量を削減して通信遅延を抑え、通信の安定化を実現する。
なお、2021年2月上旬から中旬にかけて、CRANTS試験路にてローカル5Gとキャリア5Gの連携を用いた自動運転の実証を行うことも決定している。具体的には、CRANTS試験路にローカル5G基地局とキャリア5G基地局を併設し、必要に応じてローカル5Gとキャリア5Gの接続を切り替えることで、継続的に自動運転車両の遠隔監視・操縦管制が可能なことを確認する。
また、今回は他地域連携として、しずおか自動運転ShowCASEの一環で5G基地局やカメラを静岡県沼津市の公道上に設置し、前橋市の実証実験と同様に、群馬大学の自動運転車両と日本モビリティの自動運転システム、NECのシステムを使用した実証実験を行う。
5G技術の特性である低遅延を活かし、自動運転車両(群馬大学提供)や歩行者等をリアルタイムにカメラで認識し、安全・安心に寄与する実証実験だ。具体的には、2020年12月よりNECモビリティテストセンター(御殿場市)のローカル5G評価環境を活用して評価・検証を行ったのち、2021年1月13日から22日にかけて沼津市大手町交差点での公道実証を計画している。