躍進するテスラ車と、世界No1の富豪の座についたマスクCEOのプロフィール

▲イーロン・マスクCEO
▲イーロン・マスクCEO
▲テスラ・モデル3
▲テスラ・モデル3

 昨年株価が急上昇したテスラは、ついにトヨタを抜いて世界一の時価総額を誇る自動車メーカーになった。バブルともいわれたが、その後も株価は上がり続け、今年1月テスラ社CEO、イーロン・マスク氏はアマゾンのジェフ・ベゾス氏を抜いてついに世界一の大富豪となった。資産は1月10日の時点で2090億ドル(約22兆円)という天文学的な数字になっている。

 マスク氏は南アフリカ出身、17歳でカナダの大学に進学、その後アイビーリーグの一角であるペンシルベニア大学に進み、さらにスタンフォード大学の大学院に進学。だが、わずか数日で中退、ビジネスの道を選んだ。

 最初に立ち上げたのはソフトウェア会社のZup2で、この会社はコンパック社に3億ドル以上で買収された。その資金を元に、今度はオンラインバンクのXコム立ち上げた。この会社はPayPalを創設したコンフィニティ社と合併し、その後eBayに15億ドルで買収された。
 こうしてトントン拍子に資産を増やし、2002年にはスペースXを設立、2004年には立ち上がったばかりのテスラ・モータース(当時)に出資者兼チーフアーキテクトとして参加、そして2008年にはテスラCEOに就任した。

▲テスラはこの1年で急激に業績を伸ばした
▲テスラはこの1年で急激に業績を伸ばした

 マスク氏は、その後もソーラーシティ(ソーラーパネル設置会社)、オープンAI(AI関連のリサーチ非営利団体)、ニューラリンク(人間の脳とコンピュータをドッキングさせる技術を開発する会社)、ボーリング(トンネルによる高速走行を提供する会社)などを次々に立ち上げ、人類を火星に飛ばす計画を立てたり、宇宙開発を行うスペースX内の事業ではあるがスターリング計画として小型衛星によるインターネット提供など、新しい事業に取り組んできた。

 大学をやめてビジネスの世界に飛び込んだのが1995年だから、わずか25年ほどで巨額の富を築き上げたことになる。昨年ビル・ゲイツ氏を抜いて世界で2番目の富豪になって話題になったが、ついにトップに躍り出たのだ。
 その富のほとんどはテスラ株によるものだ。つまりテスラ社の株価の上昇とともにマスク氏の資産はうなぎ上りに増えた。テスラ株は昨年1年間で8倍以上に増え、現在もまだ上がり続けている。

 テスラは2020年、50万台をデリバリーする、という目標を立てていた。マスク氏も社員に目標達成のための檄を飛ばしていたが、わずかに届かなかった。目標が達成できなかった、というのは悪いニュースではあるのだが、世間は逆に「ついに50万台を売り上げる企業に成長したか」と驚き、それが株価にも反映している。

▲テスラ・モデルS
▲テスラ・モデルS

 しかし、年間に50万台のクルマを売る企業が、1000万台を売り上げるVWやトヨタよりも評価される理由はどこにあるのだろう。昨年モデル3が爆発的に売れたためにようやく黒字となったが、テスラは数年前までは倒産寸前ともいわれていた企業なのだ。

 まず、世界の潮流が脱炭素化に向かい、EVに特化するテスラのような企業に追い風となったことが大きい。もちろん既存のメーカーもEV化に舵を切っているが、設備投資やバッテリー確保など、これから対策を進めるテーマも多い。ところがテスラは最初からEV専業で、自社でバッテリー工場まで持つ。しかもソーラーパネルやルーフ、パワーウォールなど再生可能エネルギーとEVを組み合わせたパッケージを提供できる。
 大型の蓄電池も開発しており、送電用のバッテリーパークまで手掛けているため、環境問題を総合的に解決しようとする企業であり、これからますます需要が高まる、という期待感もある。

 そして何よりも、モデル3が世界で受け入れられ、売れたという事実が大きい。昨年はSUVのモデルYを発売し、今年は予約注文が60万台以上入っているサイバートラックなどの製造がスタートする予定。既存のメーカー、そして新興EVメーカーともに、テスラの歩調に合わせて人気モデルを量産して販売していくのは簡単なことではない。

▲テスラ・サイバートラック
▲テスラ・サイバートラック

 EVAdoption.comというサイトが昨年、今後のアメリカのEVの売れ行き見通しを発表したが、それによるとモデルYは2023年には20万台売れる見込みだという。モデル3とVW・ID4がともに8万台で続き、日産アリアは3万5000台、フォード・マスタング・マッハEは3万台、という予想だ。

 アメリカの乗用車部門のベストセラーはトヨタ・カムリが定着しているが、セールスは30万台前後。つまりモデルYとモデル3を合わせると、テスラがベストセラーを出すメーカーに成長する可能性は十分にある。そこにアメリカではとくに人気の高いピックアップトラックまで加われば、テスラをニッチメーカーと呼ぶ人はいなくなるだろう。

 つまりテスラの株価は現在の実力というよりも未来への期待の部分が大きいが、近い将来テスラが本当に既存の巨大メーカーと肩を並べるようなメーカーに成長する可能性は決してゼロではない。マスク氏は当分の間、世界一の富豪の座を守り続けることになるだろう。

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