EV時代の本格到来を見据えて、各メーカーの電動化への取り組みが加速している。中でも、積極的な動きを見せているのが、メルセデス・ベンツ。22年までに新型EVを5車種追加し、電動車のシェアを倍増させるというから鼻息は荒い。
メルセデス・ベンツは電動車に特化したサブブランドとして、メルセデスEQを擁している。メルセデスEQブランドの最初の市販車として登場したEVが、ミドルクラスのSUVのEQC。メルセデスEQブランドの市販第2弾は、ミニバンのVクラスがベースのEV、EQVだった。第3弾は小型SUVのGLAがベースのEV、EQAとなる。
この3モデルは欧州で発表済みで、日本でも、EQCは販売されている。メルセデスはこの3モデルに続いて、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動車のラインアップを拡大する。
メルセデスEQブランドでは22年までに、EQS、EQE、EQB、EQE・SUV、EQS・SUVの5モデルが追加される。このうち、EQSはSクラスのEV、EQEはEクラスのEVに相当する。
中でも、EQSは、メルセデス・ベンツが新開発した電動車向けアーキテクチャー、EVAを最初に採用するモデルとなる。EVAは、EQSに続くEVの技術的ベースとなるアーキテクチャー。EVAは、モジュラー設計となっており、メルセデスEQブランド各車に広く適用できる。ラグジュアリーカーやエグゼクティブカー・セグメントをはじめ、ホイールベースやトレッド、システムコンポーネント、バッテリー容量を変える手法により、小型サルーンから大型SUVまで、メルセデス・ベンツの幅広いクラスにEVを展開できる。
EQSの場合、1回の充電での航続距離は最大700km(WLTPモード計測)となる。EQSは、EVの弱点とされる航続距離の面でも、エンジン搭載車と遜色ない性能を備えているといえる。
EQSとEQEはセダンだが、世界的に需要が増しているSUVのEVとして、EQE・SUVとEQS・SUVもスタンバイしている。EQE・SUVはGLEに相当するEV、EQS・SUVはGLSに相当するEVになる。コンパクトSUVから大型サルーン&SUVまで、フルラインEV化を目指すメルセデス・ベンツの戦略が見えてくる。
EVの本格普及までの橋渡し役となるPHVのラインアップ充実にも抜かりはない。メルセデス・ベンツは新世代のPHVシリーズを、新たに立ち上げたEQパワー車として展開している。メルセデス・ベンツのEQパワーは現在、欧州ではAクラス、Bクラス、GLA、CLAクーペ、CLAシューティングブレーク、GLC、GLEなどに用意されている。
21年は、このEQパワーのラインアップに、新型SクラスとCクラスが追加される。これにより、PHVは、現行の20車種から拡大し、より細かくユーザーのニーズに対応することが可能になる。
メルセデス・ベンツは、EVのメルセデスEQとPHVのEQパワーの両輪体制によって、世界新車販売に占める電動車のシェアを、20年の7.4%から、21年は13%に倍増させる計画。内燃機関を搭載したクルマが「売りにくい」市場環境に合わせて、ラインアップ拡充を温めてきた様子がうかがえる。
BMWやアウディ、レクサスなど、競合するプレミアムブランドの電動化戦略も急速に進展するのは確実。EV分野での競争は激化する一方だろう。