テスラモーターズ・ジャパンは2月17日、モデル3の価格を改定した。
WLTCモード1充電走行距離が448kmでシングルモーター(後輪駆動)のスタンダードプラスは82万円値下げして429万円に。
WLTCモード1充電走行距離が580kmでデュアルモーター(全輪駆動)のロングレンジは156万2000円値下げして499万円になった。スタンダードプラスは率にして約16%、ロングレンジは約24%の値下げだ。
WLTCモード1充電走行距離が567kmでデュアルモーター(全輪駆動)のパフォーマンスは価格据え置きの713万3000円だ。
値下げのインパクトは大きい。テスラは全般的に価格が高めの設定だったが、多くの電気自動車(EV)と同じ土俵に立つことになる。
たとえば、バッテリー容量が62kWhでWLTCモード458kmの日産リーフe+の価格は441万1000〜499万8400円である。
WLTCモード256kmのマツダMX-30・EVは451万〜495万円。WLTCモード259〜283kmのホンダeも価格は451万〜495万円だ。
MX-30・EVもホンダeもバッテリー容量は35.5kWh。航続距離を尺度に比較すれば、テスラ・モデル3は国産EVよりもお買い得になる。
日本に入っている欧州ブランドのEVともいい勝負をする。JC08モード403kmのプジョーe-208は389万9000〜426万円、バッテリー容量が同じ(50kWh)e-2008は431万〜470万円だ。
国産、輸入車を問わず、乗用車が価格を改定するケースはよくあるが、物価や為替レートに合わせた値上げが一般的。100万円を超える値下げなど前代未聞である。だが、テスラに限っては珍しい話ではなく、アメリカや中国ではすでに複数回の値下げが行われている。
コスト低減効果が得られた場合、それを即座に価格に反映するのがテスラのスタンスだ。コストが低減する理由のひとつは量産効果である。2015年のテスラの生産台数は年間5万台だったが、5年後の20年には50万台に増えた。工業製品の一般論を当てはめれば、生産量の大幅増にともないコストは低減される。
日本に輸入されるテスラ3の大幅な値下げを可能にしたのは、生産拠点の変更が大きい。日本仕様はこれまで、米国カリフォルニア州フリーモントにある工場で生産していた。この工場はGMが62年から82年まで使用し、その後はGMとトヨタの合弁会社NUMMIが84年から09年まで使用。10年にこの施設を購入したテスラは大規模な改修を施し、12年からモデルSの生産を開始。日本仕様のモデル3は19年から生産している。
その生産拠点を、中国・上海で19年末に稼動を始めたギガファクトリー3に移したのだ。年間生産台数50万台を目指し、現在は第2期工事が進行中である。テスラ3の国内での大幅値下げが実現したのは、中国製だからという単純な理由ではない。生産拠点の移行にともない、車両価格のうち大きな比率を占めるバッテリーサプライヤーが変わったのだ。
アメリカ製テスラ3のバッテリーはパナソニック製だったが、中国製テスラ3は中国のCATLと韓国のLG化学製のバッテリーを使い分ける。スタンダードプラスはCATL製、ロングレンジはLG化学製のようだ。
生産拠点とバッテリーサプライヤーの変更とコスト低減が、モデル3の大幅値下げにつながったのが真相のようだ。それにしても、絶妙なタイミング。各社が相次いでEVを国内市場に導入し、にわかにEV市場が活気づいたタイミングでの大幅な値下げ。消費者の注意を引き付けるための作戦かと勘ぐりたくなる。