ルノーは5月6日、今後のブランド展開やニューモデル投入、新しいコーポレートマークの導入など、「ヌーベルバーグ(新しい波)」と名付けた一連の行動計画をオンライン・イベントで発表した。
COVID―19(新型コロナウィルス感染症)の世界的流行はいまだに収まらず、ドイツのフランクフルト市で隔年開催されるIAA(通称フランクフルト・ショー)はミュンヘン開催に変更されるなど、国際格式イベントの実施予定にはまだ不透明さが残る。自動車メーカーにとっては、新車や経営方針をどのようなタイミングでアナウンスするかに頭を悩ませる状況が続いているが、ルノーはオート上海2021(上海モーターショー)後のタイミングを選んだ。
ルノーの発表の中で最も興味深いのはロゴマークの一新だ。日本の盟友、日産も昨年、ロゴマークを更新している。ルノーと日産は3月にダイムラー株の売却を発表した。現在進行中のルノーとダイムラー間の業務提携は当面継続されるが、新規のプロジェクトはおそらく凍結されるだろう。その意味ではルノーのロゴ一新には再スタートの意味もうかがえる。新ロゴは2022年発売のモデルから順次導入し、2024年までにはすべてのモデルのロゴを切り替える予定だ。
自動車エネルギーの転換については、2030年に「欧州で最も環境に優しいブランドになる」という目標を掲げた。この時点で全ラインアップの9割を電動化するという。同時に、2030年までに「リサイクル素材の利用率で世界の自動車メーカーのトップを目指す」とも宣言した。電動化で興味深い点は、欧州のCO2(二酸化炭素)排出規制に対応するためのBEV(バッテリー電気自動車)だけでなくHEV(ハイブリッド車)のラインアップ強化を行う点だ。
昨年ルノーは、日産のHR16エンジンを使ったe-Techというハイブリッドシステムを開発した。夏から生産される2021年モデルに採用する予定だったが、小型BEV、ゾエの販売が好調で、CO2クレジットをこれ以上稼ぐ必要がなくなったため、発売を延期した。先日発売されたe-Techの第1陣、キャプチャー、アルカナおよびメガーヌPHEV(プラグインハイブリッド)に続き、順次ラインアップを拡大する計画だ。
また、 1.2リッター直列3気筒エンジンと電動モーターを組み合わせたHEVを2022年モデルで、これをベースにしたPHEVも2024年モデルで発売することを明らかにした。英・IHSマークイットなど欧州の調査会社は、203年時点のEU市場最新予測値としてBEV30%、PHEV10%強、HEV56〜58%という水準を掲げている。すべてのクルマが「何らかの電動駆動」となるわけだが、主力はHEVである。ルノーがHEVに力を入れるのも納得できる。
ちなみにフランスの自動車メーカーの特徴は、BEVを別ブランド扱いにしていない点だ。ドイツでは、ダイムラーはEQ、VWはID、BMWはiをそれぞれBEV専用ブランドとして立ち上げた。ジャガー・ランドローバーもBEVはIペイスであり、他のモデルとはネーミング方法が違う。この背景には、バッテリーなどBEV特有の不具合で「ブランドが傷付く」ことへの危惧があるからだ、と指摘される。フランスは「国家が原子力政策を進めているため通常エンジン車とBEVを分け隔てしない」ともいわれる。こうした事情も興味深い。