電動車が増える時代。EV用バッテリーのリサイクル&リユース技術はどこまで開発が進んでいるか

▲日産リーフ 電気自動車用バッテリーは「自動車用としての用途を終えた後の活用方法」に注目が集まる
▲日産リーフ 電気自動車用バッテリーは「自動車用としての用途を終えた後の活用方法」に注目が集まる

 EVの普及が進むにつれて、バッテリー(電池)のリサイクルやリユースを巡る動きが活発になってきた。EVにとって、モーターと並んで不可欠なシステムがバッテリー。EVで主流のリチウムイオンバッテリーには、レアメタルが含まれているため、性能低下などで交換された使用済みバッテリーの利用価値は高い。

 そんな中、4月に設立された新団体が、電池サプライチェーン協議会(BASC)。BASCは、電池サプライチェーンの国際競争力の強化を推進することを目標に掲げている。会員企業は、オールジャパンの約50社。50社には、日産やホンダ、マツダなどの自動車メーカーをはじめ、三井化学、三井金属鉱業、三菱ケミカル、旭化成、出光興産、岩谷産業、GSユアサ、昭和電工マテリアルズ、新日本電工、住友金属鉱山など、バッテリー素材やエネルギー関連の企業が名を連ねる。

▲BASCのホームページ
▲BASCのホームページ

 BASCでは、国内電池サプライチェーンに関する当面の課題をはじめ、電池サプライチェーンの規制やルール作りに対し、国内審議団体がない現状を解消することを目指している。電池サプライチェーン全体で、グローバル競争力や資源確保を強化し、カーボンニュートラルやリサイクルの仕組みの構築など、グリーン化も促進していく。

 会員企業が行っている取り組みの一例を紹介しよう。電気自動車リーフをラインアップしている日産は、18年秋からEVカスケードリユースプロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトは、EVやバッテリーの性能変化に応じた二次利用手法を事業モデル化し、EVのライフサイクルを通じて、EVをフル活用することを狙う。EV用バッテリーとして利用されていた新品電池と比べると性能が変化しているが、EV用以外で有効活用していこうというアイデアだ。

▲日産リーフに搭載されているバッテリー EV用駆動バッテリーとして利用した後の性能変化に合わせたリユースで有効活用を図る
▲日産リーフに搭載されているバッテリー EV用駆動バッテリーとして利用した後の性能変化に合わせたリユースで有効活用を図る

 具体的には、日産/住友商事/住友三井オートサービスの3社が協力し、一定残量以上のバッテリーを、定置型の蓄電池として活用する。これにより、系統安定化(電力の受給バランスが崩れないように蓄電池に充放電させる)を図ろうとしている。さらにEVのバッテリーをモジュール単位で再製品化し、さまざまな用途の電池として利用できるようにした。

▲トヨタと中部電力は電動車の駆動用蓄電池を使って電力の需給バランスを図ろうと実験を進めている
▲トヨタと中部電力は電動車の駆動用蓄電池を使って電力の需給バランスを図ろうと実験を進めている

 トヨタは18年から、中部電力と協力し、電動車の駆動用電池をリユースし、大容量の蓄電池システムの構築や、使用済み電池のリサイクルに関する実証を開始している。トヨタの電動車から回収した電池を、中部電力が蓄電池システムとしてリユースし、電力系統におけるさまざまな課題に応じた活用を目指している。

 トヨタは単体として性能が低下した電池でも、多数の電池を組み合わせる技術により、再生可能エネルギー導入の拡大に伴う需給調整への活用や、周波数変動、配電系統の電圧変動への対応などが可能になると見込んでいる。また、電力系統の課題解決に加えて、火力発電所の合理的な運用にも貢献できると期待している。

▲トヨタ・ハリアー・ハイブリッド バッテリーに使うニッケルを再利用する「バッテリーtoバッテリー」の技術開発も進む
▲トヨタ・ハリアー・ハイブリッド バッテリーに使うニッケルを再利用する「バッテリーtoバッテリー」の技術開発も進む

 ボルボカーズは4月から、電動車の使用済みバッテリーの再利用を欧州で開始した。バッテリーをクルマ以外のエネルギー貯蔵用途に使用する考え方で、新たな収益源とコスト削減を実現するとともに、電池のライフサイクル延長を狙う。

 ボルボカーズは、スウェーデンのバッテリーループ社と協力し、電動化車両に使われたボルボ車のバッテリーを、太陽光発電によるエネルギー貯蔵システムに再利用している。このシステムは4月から稼働を始めた。スウェーデンの衛生・健康企業のエシティ社のイェーテボリ郊外のビジネスセンターに設置され、電動車や電動アシスト自転車用の充電ステーションに電力を供給している。

 レポート・オーシャン社の調査によると、世界のEVバッテリーの再利用とリサイクル市場は、27年までに53億ドルに達する見通し。電動車の普及に伴い、バッテリーの再利用とリサイクル市場の急拡大が見込まれる。

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