VW製EVシャシーの特徴

量産開始は2019年予定

 独・VW(フォルクスワーゲン)は10月、純電動車両(BEV=バッテリー式電気自動車)専用のプラットホーム、MEB=モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリクスを披露した。18年に立ち上げたBEV新ブランドI.‌D.の基盤シャシーであり、特徴はホイールベース内の床下に2次電池を並べ、ホイールベースと全幅のサイズを自由に設定できる点だ。アウディ、セアト、シュコダ、VW製商用車にもこのMEBが採用される予定で、量産は19年から始まる。

 MEBは前輪と後輪の制御ユニット、減速ギア、デファレンシャルギアを一体化した共通の駆動モジュールを配置し、システム上はFF/FR/AWD(前輪駆動)のすべてに対応できる。後輪ユニットを180度回転させれば前輪ユニットになる。このモジュールを支えるサブフレームとサスペンション取り付け部分が合体されている。

 外部充電式のリチウムイオン電池は、数セルをパッケージ化したモジュールを床下に収容する方式だ。セル数やセル当たり出力は公表されていないが、おそらく1セル=3.7ボルトの一般的なリチウムイオン電池だろう。VWによると、I.‌D.ブランドのBEVは「1充電当たりの航続距離は欧州の燃費モード、WLTP基準で330〜550㎞になる」という。フロアは車室側とボディ底面の2重構造で、ここに電池モジュールを収容する。

 ひとつ疑問点がある。VWは現行ゴルフやパサートが採用しているMQBプラットホームを使ったeゴルフを商品に持つ。MQBは通常のガソリンと軽油、CNG(圧縮天然ガス)やBEV、プラグインハイブリッドまでを視野に入れたマルチパワーパッケージ対応のプラットホームだ。それなのに、なぜVWは専用プラットホームを用意するのか。

 この点についてVWは明らかにしていないが、公表された資料から推測すれば、MEBはMQBの構造を流用していると思われる。フロントのオーバーハングはMQBよりも短く、エンジンルームと車室を隔てるバルクヘッドの上側、スカットルと呼ばれるフロントガラス下部の支持部分がMQBより高い。これにより、フロアがMQBより高くなったため、ドライビングポジションはアップライトな姿勢になる。

 VWはグループ各社にBEVを投入するほか、デリバリーバンのような小型商用車にも設定する方針。また、すべてのBEVに125kW・hの急速充電システムを採用し、30分以内に0→80%の充電が可能になる。欧州では125kW・hが主流になる見通しで、これに対応した電池冷却システムの開発が進む。

 VWは、中国のリチウムイオン電池大手である寧徳時代新能源科技(CATL)との間で供給契約を結んだ。中国生産のVWグループ(I.‌D.)の電動車両用だけでなく、ドイツ生産の電動車の一部にもCATL製電池を採用する方針を明らかにしている。CATLはドイツ国内に電池の生産拠点を建設する予定だ。

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