ロータリーエンジンは、終わっていない。マツダは現在でもロータリーエンジンの生産を続けている。新車への搭載は2012年に生産を終了したRX-8が最後だが、それ以降も広島の工場で13B型ロータリーエンジンの補修用部品と、新品の部品で組み上げたエンジン本体を製造し続けている。
工作機械は、ロータリーエンジンの部品製造が始まった1973年から動き続けているという。製造の現場で働くのはベテランスタッフばかりで、「10名のマイスターチーム」とも呼ばれている。彼らは毎月平均200〜400台分のロータリーエンジン用部品を、世界に向けて送り出している。
2020年12月17日にマツダは、RX-7のサービスパーツについて再供給を開始した。2ndサバンナRX-7(FC3S型、85年〜92年に生産)と、3rd・RX-7(FD3S型、91年〜02年まで生産)が対象だ。
これら2台の13B型ロータリーエンジンに現在でも乗っているユーザーや、ロータリーエンジン車を中心に扱う整備会社とのコミュニケーションを通じ、とくにニーズの高いサービスパーツを選定して復刻を開始。マツダ本体に限らず、サプライヤー各社の協力を仰いで再供給を行う。
2nd用は30点、3rd用は61点の部品を復刻させた。スロットルのような比較的大物の部品から、エアクリーナーに用いるスクリューのような小さな部品まで多岐にわたる。
現場から吸い上げた情報を元に復刻しただけあり、大事に乗り続けているオーナーにとってありがたいニュースに違いない。ロータリーエンジン車に乗り続けるユーザーを大事にするマツダのスタンスが伝わってくる。
マツダは復刻パーツの販売に合わせて、「CLASSIC MAZDA」のホームページを更新。これまではロードスター(NA型、1stモデル)のレストアサービスや復刻パーツの情報を中心に展開してきたが、RX-7用サービスパーツの再供給に合わせ、RX-7の情報発信を始めた。
6月からは、ロータリーエンジン製造現場に関するレポートが順次公開されている。
ロータリーエンジン関連のエピソードはまだある。6月23日は、マツダが1991年の第59回ル・マン24時間で総合優勝を果たしてから30周年の節目だった。
700psの最高出力を発生するR26B型の4ローター・ロータリーエンジンを積んだマツダ787Bの優勝は、日本車として初の快挙である。ロータリーエンジン車としてもル・マン史上初、かつ唯一無二の総合優勝だ。
「当時のル・マンをご存じでない若いお客様からも、マツダ787Bはマツダのシンボル的な存在として認識されています」と、ル・マン優勝30周年を記念して発行したプレスリリースでマツダは説明している。そして、「近年のマツダは、マツダ車でモータースポーツを楽しむお客様のための参加型モータースポーツの振興や、注目を集める『デジタルモータースポーツ』を愛好する幅広い層に向け、クルマを操る愉しさ、『走る歓び』を得る機会を増幅することに注力しています」と続けた。
クルマを操る愉しさ、走る歓びを得る機会を増幅する意味でいえば、ドライビングシューズの発売もその範疇に入るだろう。
マツダはミズノと共同開発した新コンセプトのドライビングシューズ、マツダ/ミズノ ドライビングシューズを、クラウドファンディングサービス『Makuake(マクアケ)』で7月6日14時から予約受注を開始した(届け予定は2022年3月末)。
人馬一体を追求するマツダのノウハウと、スポーツ品開発のために人の動きを研究し、人と用具の調和を追求するミズノが互いの知見を持ち寄り、「走る歓びを提供する」ドライビングシューズを共同開発したのだ。シューズの特徴は、安定性の高い快適なペダル操作を提供できる構造を作り込んでいる点だ。
デザインは、マツダのカーデザイナーが『魂動(こどう)』コンセプト(現行モデルに反映されている考え方)に基づき、フォルムと機能性を高い次元で融合してまとめた。トップアスリートを対象にしたシューズを生産するミズノの国内工場で、職人が1足ずつ丁寧に作り込んでいく。
ロータリーエンジンとドライビングシューズ。一貫しているのは、マツダの走りにかける熱い思いとチャレンジングスピリットだ。