フェラーリが、ファッション業界への本格進出を決めた。6月13日、イタリア中部、ボローニャ近郊にあるフェラーリの本拠地、マラネロのV12生産工場が一時生産をストップ、工場内で新しいライフスタイルブランドのショーを開いた。
自動車生産ラインの中でのショーは非常にユニークなものだが、提示された作品もまたフェラーリらしい鮮やかな赤や青、黄色、そしてプリント柄を基調とした斬新で大胆なものだった。8割がユニセックスでコートやジャケットが中心だが、女性用ドレスや男性用スーツもある。男女の差がなく着られるよう、サイズはXXXSからXXXLまで用意され、ターゲット層は若者が中心だという。
この日発表された作品は全部で52点。デザインを担当したのはジョルジオ・アルマーニやドルチェ・アンド・ガッバーナなどでデザイナーとして活躍していたロッコ・イアノーネ氏だ。イタリアが誇る高級ファッションブランドと、ラグジュアリーカーはまさに相性抜群だろう。
31歳と若手のイアノーネ氏は発表したファッションラインについて「フェラーリのDNAを感じさせる作品を意識した」と語っているが、クルマそのもののイメージをモチーフにはしていない。フェラーリの持つラグジュアリー性を表現するために、素材と縫製などの仕上げには細心の注意を払った、という。
クルマとファッションは決して相性の悪い組み合わせではない。ほとんどの高級車ディーラーで、ブランドデザインのキーホルダーや財布、Tシャツやポロシャツ、バッグなどが売られている。
ポルシェは以前から男性用のファッションラインを発表しており、ジャケットや靴、バッグ、サングラスなどの商品ラインアップがある。ロサンゼルスのビバリーヒルズ、ロデオドライブの高級ブランドが並ぶ一角にポルシェはセレクトショップを持つ。
フェラーリもディーラーにポロシャツ、サングラス、財布といった商品を置いていた。今回のショーを皮切りにマラネロにブランドファッションの専門ストアを開設。プーマやレイバンとコラボしたアイテムも販売されるという。
店舗は今年中にミラノ、ローマ、ロサンゼルス、マイアミにもオープン予定で、将来はフェラーリ・デザイングッズの売上を全体の1割程度にまで拡大する目標を掲げている。なお、マラネロの本社前にはレストラン、「リストランテ・カバリーノ」もオープンさせる計画を明らかにしている。
経営を多角化する理由について、フェラーリは「馬具を作っていたエルメスが、いまやバッグから洋服、コスメまで販売するトータルファッションブランドになり、旅行用品から始まったヴィトンはシャンパンまで販売する経営の多角化を行っている。
クルマ作りで培ってきたデザイン性やクラフツマンシップは、ライフスタイル全体を提案するブランドに発展しても違和感がない」と説明する。
フェラーリは今年、ブランド初のSUVモデルも登場する予定があり、自動車メーカーとしては変革期を迎えている。
そんな中でファッション、しかも若者がターゲットというのは「フェラーリブランドに憧れはあるが、フェラーリ車は買えない」という層にもアピールする狙いがあるのかもしれない。アクセサリーを身につけることで、フェラーリというブランドを身近に感じてもらう、というサービスも今後は必要になる、という考えだろう。
現時点では日本でのショップ展開は予定されていないが、オンラインなどでこうしたファッションやグッズが手に入るようになる可能性はあるだろう。10年後にはクルマよりも、ファッションブランドとして定着しているのかもしれない。