ルノー、日産、三菱3社の新しい関係性とビジネスの展望

ルノー、日産、三菱の新しい関係性とビジネス展開の詳細

 2月6日、ルノー/日産/三菱のアライアンスの新しい方向性が明らかにされた。日産の経営が危機に直面していた1999年、ルノーの出資を受け入れて日産は持ち直した。コストカッターの異名をとったC・ゴーン元CEOが日産の経営回復に大きな役割を果たしたことはご存じのとおりである。

 アライアンスで注目を集めたポイントのひとつが、日産とルノーの持ち株比率の変更だった。この点については本誌記事で詳しく触れている。ここでは、誌面で紹介しきれなかったアライアンスに関する詳細な発表事項を、日産のリリースで紹介する。

2023/01/30
日産自動車

アライアンスに関する声明

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:内田 誠)は、ルノーグループとのパートナーシップの新たな基盤を定めるべく、これまで数か月間にわたり、建設的な協議を重ねてきました。今後開催予定の取締役会の承認が必要となりますが、本協議が重要なマイルストーンを迎えたことを以下の通りお知らせ致します。

アライアンスの連携を強化し、全てのステークホルダーに対して価値創造を最大化する事を目的とし、本件は次の3領域で構成されます:

高い価値を生むプロジェクトによる、パートナーシップの再構築
・ラテンアメリカ、インドおよび欧州において、市場、自動車、技術の3つの視点で展開される主要プロジェクトの推進

パートナーが参加可能な新しい取り組みによる、戦略的な機敏性の向上
・ルノーグループが設立するEV及びソフトウエアに特化したアンペア社の戦略的な株主になるべく、日産による同社への出資

バランスのとれたガバナンスと株式の相互保有による、事業効率の向上
・日産とルノーグループは、ロックアップおよびスタンドスティル義務を伴う15%の株式を相互に保有。両社とも、同保有株に付随する議決権を15%まで自由に行使可能
・ルノーグループは、日産の株式28.4%をフランスの信託会社に信託。ほとんどの議案に関する議決権は 「中立化」 されるが、株式が売却されるまでの間、ルノーが保有する経済的な権利(配当金と売却代金)は維持
・ルノーグループは、同社にとって商慣習上合理的な場合、協調的で秩序あるプロセスにて信託会社に信託した日産株式の売却を指示するが、特定の期間内に売却する義務は負わない
・アライアンス オペレーティング ボード(AOB)は、各社の調整の場として存続

なお、本件の最終合意に向けた協議は引き続き行われており、実施に関してはルノーおよび日産の取締役会の決議を経る必要があります。

アライアンス各社は取締役会の承認後速やかに、本件を公表する予定です。

以上

2023年2月6日
日産自動車

ルノー・日産・三菱自動車、提携の新たな章を開く

ルノーグループ、日産自動車株式会社と三菱自動車工業株式会社は6日、ルノーグループと日産の取締役会での承認を経て、三社のアライアンスをより高いレベルに引き上げる事を目指した、新たな取り組みを発表しました。

アライアンスの全てのステークホルダーに対する価値の最大化を目指した取り組みは以下の3領域です:

・ラテンアメリカ、インド及び欧州において、事業面で高い価値を創造するプロジェクト
・各社の新しい取り組みにパートナーが参加可能となる、戦略的な機敏性の向上
・リバランスされたルノーグループ・日産間の株式相互保有と強化されたアライアンスのガバナンス
ルノーグループと日産は、上記取引に関する拘束力のある枠組み合意を締結し、2023年第1四半期末 までに最終契約の締結を予定しています。これらの最終契約に規定された取引は、規制当局の承認を含むいくつかの条件を前提にしており、2023年第4四半期に完了する予定です。

これら広範な取り組みは、新たな機敏性をもたらしアライアンス各社のもつ強みの技術を活用するなど、これまでの24年間続いたパートナーシップの進化と強化につながります。より高いレベルのアライアンスは、目まぐるしく変化する自動車および新しいモビリティサービス市場において、アライアンス各社が革新と変革を続ける中、更に多くの成長機会を生み、事業の効率化に貢献します。

事業面で高い価値を創造するプロジェクト

2030年に向けたアライアンスのロードマップを策定してから一年が経ちましたが、アライアンス各社は新たにラテンアメリカ、インドおよび欧州において、市場、商品、技術という三分野で、ウィン・ウィンで大規模かつ実行可能な主要なプロジェクトを検討します。これらのプロジェクトにより、各社は中期的には創造される価値を享受し、短期的にはコスト分担やコスト回避によるベネフィットを受けられると期待されます。

・ラテンアメリカ

ラテンアメリカにおいて検討される4プロジェクト:

・ルノーグループが開発し、アルゼンチンで日産に供給する新たな0.5トンピックアップ
・順調に進捗している1トンピックアップ日産「フロンティア」/ルノー「アラスカン」の協業プロジェクトは継続し、今後もルノーグループがピックアップをコルドバ(アルゼンチン)でルノーと日産両社向けに生産
・メキシコでは、日産が20年ぶりにルノーグループ向けに新型車を生産
・加えて、CMF-AEV(コモン・モジュール・ファミリー)プラットフォームをベースとした日産とルノーグループの手頃な共通Aセグメント電気自動車2車種を投入

・インド

・インドでは、ルノーグループと日産はインド市場および輸出向けに、両社向けの新型SUV及びルノー「トライバー」から派生する日産の新型車など、複数の新型車プロジェクトでの協業を検討
またラテンアメリカと同様、日産とルノーグループは、共通Aセグメント電気自動車を検討

・欧州

欧州においては、以下の取り組みを検討:

・ルノーグループと三菱自動車は、ルノー「キャプチャー」と「クリオ」の資産を活用し、CMF-Bプラットフォームをベースとした次世代「ASX」と「コルト」の2車種の新型車を開発
・ルノーグループ初のソフトウェア定義(Software Defined)車種として同社は2026年にFlexEVanを投入し、欧州市場において日産に供給
・2026年以降のラインアップに関しては、日産とルノーグループは次世代Cセグメント電気自動車における協業の可能性を模索。ベンチマークレベルの充電時間を達成するため、日産とルノーグループは共通の800Vアーキテクチャーの採用を検討するなど、欧州市場向け商品における技術の共有を継続
・これらの取り組みは、2026年からフランスのルノー・エレクトリシティで生産される、CMF-BEVプラットフォームをベースとした将来の日産のコンパクト電気自動車 (Bセグメント)など、既存のプロジェクトとともに推進

・車両に留まらない、物流、アフターセールス、充電インフラ、バッテリーの協業

欧州における協業は車両に留まらず、物流から使用、リサイクル、使用済みの段階に至るまでのライフサイクルに広がります。

・物流、アフターセールス及び販売金融においては、ルノーグループ、日産、三菱自動車は、物流ネットワークでの協業機会を検討し、販売店の収益性向上やコスト削減を目指す
・ 主要市場での共用店舗の増加
・ 欧州において強いプレゼンスのあるMobilize Financial Servicesを活用した、中古車・アフターセールス・販売金融面の共通戦略の策定
EV充電インフラにおいては、ルノーグループと日産は、欧州で両社の販売店における充電インフラ整備に共同で取り組むことを検討(charging@dealer)
循環型経済に関しては、ルノーグループと日産は使用済みバッテリーと生産廃棄物のリサイクルについて共通のパートナーを選定

各社の新しい取り組みにパートナーが参加可能となる、戦略的な機敏性の向上

連携強化の2つ目の領域において三社は、電動化や低排出技術については既存の戦略に沿って、事業に付加価値が期待できるパートナー各社のプロジェクトに投資・協業することで合意しました。

これら機敏で戦略的な取り組みは、「Nissan Ambition 2030」や「Renaulution」などメンバー各社の事業計画を補完するよう立案されており、各社の持続可能な成長や脱炭素化に向けた目標の実現に向けて、共通性や投資機会の面から活用されます。

協業が検討されている分野:

・日産は、ルノーグループが設立するEV&ソフトウエア子会社アンペアの戦略的投資家になるべく、最大15%を出資する意向。これにより、日産の欧州市場の強化及び新規事業の加速化が期待される
・三菱自動車もアンペアへの参画を検討
・日産、三菱自動車は、低排出ガス内燃機関(ICE)およびハイブリッドパワートレイン技術のさらなる規模と市場の拡大を目指すルノーグループの取り組みである、ホースプロジェクトの顧客となる予定
これらの取り組みは、全固体電池、ソフトウェア定義(Software Defined)された車両、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転など、既存の技術分野における協業とともに推進されます。

リバランスされたルノーグループ・日産間の株式相互保有と強化されたアライアンスのガバナンス

アライアンスのメンバー各社において、それぞれの事業計画を実行する中で、次世代のアライアンスの目標に沿った株式の相互保有の仕組みとガバナンスの条件を定める事が重要でした。この24年間、従来のアライアンスでの契約のもとで各社がそれぞれの戦略を推進してきましたが、今後の事業の好機に対応する為には新たなアプローチが必要となります。

このため、アライアンスの創設メンバーであるルノーグループと日産は、有効性を確保し価値創造を最大化するために、株式の相互保有とガバナンスの条件についてリバランスすることに合意しました。

ルノーグループと日産が締結した拘束力のある枠組み合意では、新たなガバナンス体制と両社株式の相互保有のリバランスが定められています。両社の新たなアライアンス契約の締結は[2023年3月31日までに]予定されており、従来のアライアンス関連の契約(すなわち、改訂アライアンス基本契約、アライアンス及び資本参加契約および2019年3月12日の覚書)の置き換えとなります。

新しいアライアンス契約の有効期間については、当初15年間となる予定です。

・将来の協業を支える、ルノーグループ・日産間の株式の相互保有のリバランス

・ルノーグループと日産は、ロックアップおよびスタンドスティル義務を伴う15%の株式を相互に保有する
・ルノーグループは日産の株式28.4%をフランスの信託会社に信託し、信託される日産の株式に付随する議決権は、以下の場合を除き、中立的に行使される:
・ ルノーが推薦する日産の取締役の選任または解任(信託会社はルノーの指示に従って議決権を行使する)
・ ルノーグループが推薦する日産の取締役以外の日産指名委員会が推薦する取締役の選任または解任(信託会社は日産指名委員会の決定および提案に賛成する)
・ 日産の取締役会が支持しない株主提案(信託会社は棄権する)
ルノーグループは当該株式が売却されるまでの間、信託した日産の株式の全てに付随する経済面での権利(配当金と株式売却収入)を有する。尚、信託会社への信託に伴うルノーグループの財務諸表への減損影響は無い
日産の株式28.4%が信託会社に信託されることに伴い、日産が保有するルノーグループの株式に付随する議決権が行使可能となる
・ルノーグループおよび日産双方の議決権行使の上限は、行使可能な議決権の15%。両社はこの範囲内で自由に議決権の行使が可能となる
・ルノーグループは、同社にとって商慣習上合理的な場合、信託会社に信託した日産株式の売却を指示するが、特定の期間内に売却する義務は負わない
・ルノーグループは日産と協調的で秩序あるプロセスにおいて自由に信託内の日産株式を売却できるが、日産は筆頭の売却候補として、直接もしくは第三者を通じてその優先的な地位を享受する

・議決権及びガバナンス

・新たな取り決めに伴い、ルノーグループとフランス政府との間で2016年2月4日に締結されたガバナンス契約が解消される。これにより、フランス政府はルノーグループにおける議決権を自由に行使することが可能となる
・引き続き、ルノーグループは日産の取締役会において2名を推薦する権利を有し、日産はルノーグループの取締役会において2名を推薦する権利を有する
・アライアンス オペレーティング ボード(AOB)は、ルノーグループ、日産、三菱自動車の調整の場として存続する

以上

SNSでフォローする