VWの新型EVが、米国本土の全48州を横断することに成功した。しかも、ギネス世界新記録の達成という勲章付きである。
まずは、今回の主役の新型EVをご紹介しよう。ギネス記録に挑んだのは、VWの新世代EV、ID.シリーズの最初のSUV、ID.4。ID.4はID.シリーズの2番目のモデルで、第1弾は小型ハッチバックのID.3だった。ID.4は、フォルクスワーゲン初の本格的な電動SUVである。世界最大の市場セグメントに成長している「コンパクトSUVクラス」に投入するために開発された。
ID.4は、EV向けモジュラー車台のMEBアーキテクチャをベースにする。ボディサイズは全長が4580mmで、十分な室内スペースを備える。リアに搭載されたモーターは、最高出力204psを引き出す。動力性能は、0~100km/h加速が8.5秒、最高速は160km/h(リミッター作動)。バッテリーは蓄電容量が77kWh。1回の充電で最大520km(WLTPサイクル)の航続を実現する。急速充電を利用すれば、バッテリーの80%の容量を38分で充電できる。
このID.4が、アメリカ合衆国本土の全48州を横断する耐久テストを行い、単一国内でのEVによる連続走行のギネス世界記録に挑戦した。米国は全50州だが、カナダを隔てたアラスカ州と、太平洋を隔てたハワイ州の2州を除いて、アメリカ合衆国本土の全48州の横断に挑んだ。
耐久テストを兼ねた今回のギネス世界記録の挑戦は、7月13日にバージニア州ハーンドンを出発し、反時計回りに米国48州を走行し、再びハーンドンに戻るルート。途中、フォルクスワーゲンのディーラー628拠点を訪問した。また、208カ所のエレクトリファイ・アメリカの充電ステーションを利用した。エレクトリファイ・アメリカは、全米に650を超える充電ステーションと2800以上の急速充電ステーションを展開する米国最大規模の急速充電ネットワーク。エレクトリファイ・アメリカは2025年末までに、米国とカナダで合計1800以上の充電ステーションと1万基を超える充電器を設置することを目標に掲げている。
ID.4は、レイナー・ジートロウとデレク・コリンズの両氏がドライブした。ジートロウ氏は2005年から、世界のすべての大陸で合計17回、フォルクスワーゲン車による長距離耐久走行テストを実施してきたベテラン。
そして、ID.4は97日をかけて10月18日にフィニッシュ。アメリカ合衆国本土の全48州を横断することに成功した。総走行距離は、3万5770マイル(約5万7566km)。単一国内でのEVによる連続走行のギネス世界新記録を打ち立てた。この距離は、従来の記録の2倍以上。ジートロウ氏は、「記録を破ったことは、ID.4の信頼性の証。米国の充電インフラが準備できていることの証でもある」と話した。
余計なお世話かもしれないが、走行距離と走行日数、充電回数で計算すると、記録チャレンジ中は一日に593km以上走り、1充電で276km以上は走っていることになる。毎日600kmほど移動しつつ、充電とディーラー訪問(単純計算で一日に6件以上)、旅先の名所取材(ID.4の記念撮影)なども実施しているのだから、相当にタフな旅だっただろう。
ID.4が48州を旅する様子はHP(https://vwid4-usatour.com/)で紹介されている。米国のハイウェイを走る巨大なモーターホームや、ルート66の面影を残す街並み、観光名所など、見ているだけで楽しい。
ID.シリーズに関しては2022年、日本市場に導入されることが決定している。導入される車種は現時点では公表されていないが、ID.3やID.4になる可能性もある。