欧州の2021年10月新車セールスは、メーカー別販売台数ランキングでステランティスが首位に躍り出た。ステランティスがナンバーワンになったのは、PSAグループとFCAの合併でステランティスが誕生(2021年1月)以来初めて。
また、VWグループが首位の座を明け渡したのは、21世紀に入ってから2度目というから、両社の新車セールスが明暗を分けた理由は、何だったのか。
まずは、10月欧州新車セールスの両社の結果から見てみよう。ACEA(欧州自動車工業会)がまとめた欧州主要18カ国の10月新車セールスの結果によると、首位のステランティスは前年同月比31.9%減の15万5539台を販売し、21.7%のシェアを獲得。
一方、VWグループは同41.7%減の14万7817台にとどまり、シェアは20.6%と後退した。両社の販売台数の差は7722台。VWグループの落ち込み幅がステランティス以上に大きかったことが響いた。
VWグループが停滞した理由は、半導体不足の影響。JATOダイナミクスの調べによると、VWグループはアイルランドを除くすべての国で、2桁の減少を喫した。
VWグループは在庫が限られた半導体を、需要が多いSUVとEVに優先的に使用しており、その分、コンパクトカーや中型車の生産が影響を受けて、出荷が思うように進まなかった。
ステランティスは、Vwグループよりも、半導体不足の影響を抑えた。その結果、10月の欧州新車セールスの車名別販売ランキングでは、プジョー2008が、2013年の発売以来、初めてトップの座を獲得した。
ステランティスは、トップ10に1位のプジョー2008(1万8836台)をはじめ、3位にプジョー208(1万3888台)、5位にフィアット500(1万3004台)、6位にフィアット・パンダ(1万2623台)、10位にシトロエンC3(1万1505台)の5モデルを送り込んだ。一方、VWグループはTロック(1万1948台)が9位に入っただけだった。
ステランティスのリチャード・パーマーCFO(最高財務責任者)は、2021年第3四半期(7~9月)決算の発表の場で、「業績は堅調。これは、半導体の供給不足に対応するために、販売と製造面で実行したさまざまな施策と、電動車を含む矢継ぎ早の新車投入によってもたらされた。部品の供給問題は不透明感が拭えないが、今年度の業績見通しを維持する」とコメント。
半導体不足と新型コロナウイルスの影響で生産や物流が停滞する中、「業績見通しを維持する」とは頼もしい。
一方、VWグループは2021年第3四半期決算の発表の場で、2021年通期(1~12月)の業績見通しについて、「半導体不足によるリスクは、自動車業界全体で激化している。
7月ごろから悪影響が見られており、その結果、VWグループは顧客への納車台数の見通しを引き下げている」と明かしている。