自動運転技術と情報処理技術が協業
▲安全な自動運転には高度な情報処理技術が不可欠
トヨタ、デンソー、ソフトバンクの3社は2019年4月16日、「米・ウーバー・テクノロジーズの自動運転技術開発会社、アドバンスト・テクノロジーズ・グループ(ATG)に10億ドル(約1100億円)を出資する」と発表した。内訳はトヨタが4億ドル、ソフトバンク・グループの投資ファンド、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が3億3300万ドル、デンソーが2億6700万ドルとなる見通しだ。今年7〜9月に出資を完了する予定。
出資の目的は、自動運転車両を使ったライドシェアの実現にある。トヨタの車両技術、デンソーの車載ユニットおよび制御ソフトウエア技術、ウーバーATGが開発するAII(人工知能)を合体させるというウイン・ウインの関係構築である。トヨタは昨年8月にウーバー本体に5億ドルを出資。このときトヨタは、北米で販売しているミニバン、シエナにウーバーの自動運転AIを搭載し、自動運転配車用サービス車を開発する計画を明らかにしていた。トヨタは、今回の4億ドル出資とは別に「今後数年間で最大3億ドルの開発費を負担する用意がある」とも明らかにしている。この出資が現実になると、トヨタからウーバー・グループへの出資は合計12億ドルとなる。
一方、ソフトバンク・グループはすでに昨年1月の時点でSVFを経由しウーバー株の約15%を77億ドルで取得している。また、米・GMの自動運転車部門、GMクルーズの株式20%を昨年5月に22億5000万ドル(当時のレートで約2475億円)で取得した。トヨタとソフトバンクは最近急接近しており、日本ではモネテクノロジーという交通サービス事業会社を共同で設立した。モネテクノロジーにはホンダも出資。ホンダはGMクルーズの株式を5.7%取得している。自動運転を軸にトヨタ、ホンダ、ソフトバンクが協力関係にある。
いま、次世代移動サービスの手段として注目されているのは、セルフドライビングカーだ。ドライバーを必要としない完全自律運転車で、一般に自動運転車と呼ばれる中の「レベル4」、完全自動運転車である。これを使って、ライドシェアや企業などが契約ごとに独占使用するハイヤーなどの事業を展開する。自家用車以外のあらゆる交通手段をシームレスにつないで一体化させるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の中に自動運転車を組み込み、新たな交通体系を創造していく段階を迎えている。
自動運転が成功するかどうかのカギを握るのは自動運転AIだが、これは膨大な情報をコンピュータに記憶させるという作業が必要で、ここが最も開発費のかかる部分である。たとえば歩行者を認識させる場合は、赤ん坊から大人まで、さまざまな身長や体形、肌の色、髪の色、服装の違い、後ろ姿、真横の姿、道路に横になっている姿など、さまざまな画像を「これが歩行者です」という説明つきで覚えさせなければならない。
AIは、カメラなどのセンサーがとらえた前方の障害物を、その記憶の中で照合し「歩行者である」と判断する。記憶させる画像数が多ければ多いほど、判定の精度は高くなる。
AIと車両プラットホームだけでは自動運転車は作れない。AIの指示を的確にこなすステアリングやブレーキといったアクチュエーターが必要だ。この分野は、ウーバーやグーグルといった企業では対応できない。クルマを専門にしたユニットメーカーが必要になる。ウーバーATGにデンソーが出資する理由はここにある。