米カリフォルニア州マンハッタンビーチ市に本拠地を置くフィスカーが好調だ。同社はもともとフィスカー・オートモティブとしてスタートし、PHEVのカルマを販売していたが経営破綻。フィスカーとして再スタートした。
現在はEVのSUV、オーシャンを開発し、今年後半から販売を始める予定だ。
CEOのヘンリック・フィスカー氏は現在のフィスカーをフィスカー2.0と呼び、まったく異なるコンセプトのクルマ作りを行っている。
かつてのカルマはエレガントなデザインの高級スポーツカーだったが、オーシャンはボディ、シートなどにリサイクル素材を多用。価格は3万7499ドルからになる。
フィスカーはEVとしては珍しいサブスクスタイルも取り入れ、3000ドル程度の頭金を支払えば月々379ドルから所有できる。リースのように固定の期間がなくいつでも契約終了可能だという。
グレードはスポーツ、ウルトラ、エクストリームの3タイプ。航続距離はそれぞれ240マイル、340マイル、350マイル+α。エクストリームにはルーフトップソーラーパネルが付き、年間で1500マイル㍄分の電気を生み出すことも可能だ。
またカリフォルニア・モードと呼ばれる、フロントガラスを除くすべてのウィンドウが開閉できるシステムを装備。大型モニターは運転中は縦置きでドライブモード、停車中は横に回転してシアターモードとなるなど、ユニークな工夫が見られる。
フィスカーは、米国での発売と同時に欧州でもオーシャンを発売する。さらに現在はインドでの発売も視野に入れている。こうしたことが可能なのは、同社がファブレススタイルを取っているためだ。ファブレスとは自社で車を製造せず、アウトソースする方式。
オーシャンの製造を担当するのはマグナ社で、共同で開発したEVプラットホームがあり、これには世界初となる、デジタルレーダーシステムも搭載されている。
インド用の小型EVの製造は、台湾のフォックスコンが行う。ここはアップルのアイフォンを製造する会社だ。フォックスコンは中国・吉利自動車などと提携し、独自のEVプラットホームを開発、昨年にはこれをベースとしたEVデザインも発表した。話題のアップルカーの製造も担当するのでは、という噂もある。
ヘンリック・フィスカー氏はインドで発売予定の小型EVについて、「これまでのクルマの概念を覆すようなものになるかもしれない。ハッチやトランクスペースがなく、ハード面を可能な限りコンパクトにして、安価で斬新なスタイルのEVを目指す」としており、そのためにフォックスコンは最適のパートナーになるだろう、と語っていた。
インドは人口も多く、今後のEV市場として注目が集まる。インド政府は国内産業を守るために、輸入自動車に対し高い関税政策を取っている。テスラのイーロン・マスク氏も今後インドに進出するに当たり、関税の引き下げをインド政府と交渉中といわれる。
フィスカーの場合、インド国内に製造工場そのものを作ることで関税の問題を解決するとともに、雇用の促進などもパッケージとして提示する予定、といわれている。
ファブレスという手法により、自社工場などを増設せずに世界中で同時に展開できることがフィスカーの強みとなる。またこれまでクルマを作ってこなかったフォックスコンがどのようなデザインのEVを市場に投入するのか、インドで受け入れられる安価なEVの大量生産が可能なのか、などの注目点も多い。
アップルカーが実現した場合、フォックスコンが製造を請け負ったとして、両社のクルマにどのような差異が生まれるのか、という質問に対しては、フィスカー氏は「まだ実現していないクルマ(アップルカー)についてコメントすることはできないが、われわれが考えるクルマのカタチとは異なるものになると思う。ファブレスとはいえ、メーカー側はパートナーのデザインや企画に応じて異なるクルマを提供するため、同じマグナが製造してもフィスカーとソニーはまったく異なるクルマだ。アップルカーはフィスカーとは似たものにはならないだろう」と答えた。
まずはオーシャンの発売、そしてインド用の小型車、さらにスーパースポーツカーのコンセプトも持つフィスカーは、今後の世界のEV競争の中で存在感を示していくかもしれない。