米カリフォルニア州の新車ディーラー協会が発表した数字によると、2021年の同州での新車販売台数ベスト5は以下のとおり。
1)トヨタ・カムリ(6万1599台)
2)テスラ・モデルY(6万0394台)
3)ホンダ・シビック(5万9818台)
4)トヨタ・RAV4(5万9153台)
5)テスラ・モデル3(5万3572台)
合計で11万台以上を売り上げたテスラは前年比で69%増、同州内で登録されたEV(電気自動車)は累計93万811台となり、州内でのEVシェアは9.5%となった。つまり同州ではすでに10台に1台がEVなのだ。
カリフォルニア州の事情は、やや特殊であることは確かだ。昨年全米で売れたEVの過半数が同州内であり、EV用の公共バッテリーチャージポート数は3万4000基を数えている。つまり同州ではEV27.2台に1基のチャージポートが存在する。
自宅ガレージなどに設置されたチャージポートを含めた総数は7万3000基になった。
一方のガソリンスタンドは州内におよそ1万個所。1カ所当たりに平均8つの給油機があるとして、約8万台に給油できる計算になる。それでも、今年中にチャージポート数がガソリン給油機の総数を上回る見込みだ。
参考までに日本のガソリンスタンドは2020年度末で2万9005カ所(経済産業省調べ)。この10年間で約8000カ所減少している。
これでもまだバッテリーチャージポートは圧倒的に足りない。カリフォルニア州は2035年から州内でのガソリン車の新規販売を禁止する法案を可決している。
欧州や中国と比べるとまだEV普及率が低い米国の中で、こうした法案を持つ州は少数派だが、バイデン政権の環境政策もあり今後は全米でガソリン車廃止の方向に動くと考えられている。
バイデン政権は「50億ドル(5750億円)をバッテリーチャージポートの増設に当てる」と発表したが、カリフォルニア州では州内だけで2030年までに120万基のポート増設を予定している。まさに州として完全に電動化に向かっている状況だ。
それが現れているのが昨年の新車販売だろう。昨年は前半だけの数字を見ると、初めてテスラ・モデル3がベストセラーカーになった。
テスラは今年に入っても予約のデリバリーだけで年間の販売予定台数が消化する見込みだ。全世界販売で、創業以来初の年間販売台数が100万台突破を達成するのは確実。
イーロン・マスク氏は「2025年には世界で数百万台の売上になる」と強気の発言を行っている。
そんな中、厳しいのがガソリン車の販売だ。米国内のクルマのニュースを見ても、ガソリン車の新型モデルが大きなニュースになることは少なく、EVばかりが目立っている。一部には「ガソリン車はすでにオワコン」という見方も出ている。
GMはすでに「2035年からガソリン車の製造を国内では廃止する」という方針を打ち出しているし、フォードも乗用車に関しては「2つのモデルを除いてすべてEVにする」としている。
ピックアップや大型バンについても、両社ともにシボレー・シルバラード、フォードF150という人気車種のEVバージョンを発表した。
米国でも今年後半から来年にかけて、EVの新型モデルが次々に投入され、電動化はさらに進む。そうなるとユーザーが考えるのはリセールバリューの問題だ。
日本よりもユーズドカー市場が活発な米国では、新車購入の際にリセールバリューは重要な要素のひとつになる。
カリフォルニア州のように2035年からガソリン車の販売禁止を打ち出している州ではとくに、いまガソリンのニューモデルを購入しても10年乗り続けた場合、「その時点ではもはやガソリン車の需要がなくなり、リセールができないのではないか」、と考えるユーザーが増え始めている。
もちろん2035年になったからといって、道路からガソリン車が消失するわけではなく、ユーズドカー市場は存続するだろう。しかしバッテリーチャージポートが増えるのに対し、ガソリンスタンドは今後減少が見込まれている。
現在でもEV27.2台に1基のポートに比べ、ガソリン給油機はガソリン車253台に1台という割合だ。給油のためにガソリンスタンドを探す必要がある、という時代はすぐそこまで来ている。
この点は、現在の日本でも「ガソリンスタンドが減ったな」と感じているドライバーは多いのではないだろうか。
おそらく数年内に州のベストセラーカーはテスラになるだろう。またリビアン、ルシードなどの新興EVメーカーも着々と売り上げを伸ばすと見られている。
もしかすると2035年以降はガソリン車を所有することに対し特別課税が行われるかもしれない。
現在のEVはガソリン車に比べると高価だが、今後は安価のEVが市場に投入され、それに従ってEVの販売はさらに伸びる、と考えられている。
現在カリフォルニア州では新たに建設される集合住宅、オフィスビル、ホテルなどの駐車場にバッテリーチャージポートの設置が義務付けられており、EV化への環境は整いつつある。
EVはガソリン車に比べて耐用年数が長く、ソフトウェアアップデートで性能が更新できるという特徴がある。
長い目で見れば、購入価格が高くても全体の所持コストは低くなる、といわれている。
米国全体で見ればまだまだだが、カリフォルニア州だけを見るとガソリン車は今後、ますますEVに対して苦しい立場に追い込まれそうだ。