5月11日、トヨタ自動車は2022年3月期の連結決算を発表した。国際会計基準に基づく営業利益は2兆9956億円。前期比36%増で、2016年3月期(米国会計基準)の2兆8539億円を上回り、トヨタ史上最高の数字である。株主還元は1株当たり28円で、前年比1円の増加。
売上高は31兆3795億円。純利益は2兆8501億円。純利益は4年ぶりに過去最高を記録した。販売台数はトヨタとレクサス合わせて951万2000台(ハイブリッドなどの電動車比率は28.4%/前年比4.7ポイントアップ)、前年比4.7%増である。トヨタ・グループとしての販売台数は1038万1000台(前年比4.7%増)だった。
「コロナ感染拡大、半導体の需要逼迫による生産制約の中、1台でも多くのクルマをお客様にお届けするために、販売店・仕入先・工場の現場が必死に努力してきた、資材価格の上昇や、新規領域への投資による費用増加などがあったが、原価改善や営業面の努力により増収増益になった。長年取り組んできた〈為替や台数に頼らない収益構造へと〉着実に改善してきた」と、トヨタは好調を分析する。
2008年のリーマン・ショック当時の損益分岐点を100とすると、最近は60〜70のレベルまで分岐点が下がっているという。つまり、それだけ経営の効率化が進み、ひたすら販売台数を伸ばして利益を追求する姿勢から変化したといっていいだろう。
コメントにある営業面の努力で8600億円のプラスになり、為替の関係で6100億円増益になっている。一方、原価改善の努力は3600億円のマイナス。
原価改善自体は2800億円のプラスをもたらしたが、資材の高騰が6400億円のマイナスに作用した。資材の高騰は現在も続いており、好調トヨタの業績にも大きな影響を与えそうだ。
小麦や牛肉、原油などの輸入価格がアップすれば、メーカーは「価格の引き上げ」を実施して、値上がり分を消費者にも負担を求める。クルマの場合、鉄の価格が上がったり、電気料金が上がったからといって、その都度価格が引き上げられることはなかった。
鉄や電気がなければ新車は作れないし、高くなった資材を購入すれば、いままで以上の支払いが待っている。トヨタは2023年3月期の資材費増加を1兆4500億円と予測している。
原価改善で3000億円は節約できる見通しだが、それでも1兆1500億円の増加である。資材の高騰分を、どのようなタイミングで新車価格に転嫁するのか、あるいは転嫁せずに乗り切るのか。
2023年3月期の売上高は33兆円、営業利益は2兆4000億円の見込み。営業面の改善で8150億円、為替で1950億円の増益予測だが、資材の高騰(1兆1500億円)などが響き、今期比で5956億円の減益になる見通しだ。
販売数は2023年3月期の販売台数は、トヨタとレクサスで990万台(今期比4.1%増、電動車比率は31.0%)、グループ全体で1700万台を見込む。
日産自動車が発表した2022年3月期決算は、売上高8兆4246億円で、前年比5620億円の増加。営業利益は2473億円、前期は1507億円のマイナスだったから、一気に3980億円増加した。純利益は2155億円で、4487億円の赤字からプラスに転じた。
日産の営業利益の内容を見ると、販売パフォーマンスで3390億円、為替が634億円、金融などで1072億円の増益。原材料の高騰が1392億円利益を押し下げたが2400億円を超える利益を確保した。来期は営業利益を2500億円と見込んでいるが、原材料費と物流が2570億円利益を押し下げ、販売パフォーマンスの3000億円増を圧迫。今期比約30億円の億円の増加にとどまる。
販売台数は387万6000台、前年比4%の減少。2023年3月期の販売台数を400万台と見通している。とくに日本では51万台を販売し、今期よりも19.2%の拡大を狙う。これは、ビッグセールスが期待できるニューモデルの発売可能性が高いことを示唆する数字だ。
ホンダの2022年3月期は売上高が14兆5526億円、営業利益が8712億円、純利益が7070億円だった。売上は1兆3821億円の増加、営業利益は2110円、純利益は496億円と、いずれも前年同期を上回った。
ホンダの4輪販売は407万4000台で、前年同期比47万2000台減少した。2023年3月期の販売台数は420万台の見通し。今期比12万6000台増にとどめているのは、資材調達の難しさなどを考慮しての数字だろう。
三菱自動車の2022年3月期決算は、売上高が2兆389億円、前年比40%アップの5834億円の増加。営業利益は1010億円(前年比2062億円)と、マイナスからプラスに転じた。純利益は740億円、前年同期は3123億円のマイナスだったから大幅なアップである。販売台数は93万7000台で、前年比17%増だった。