弱含みの中国新車販売に打撃。新エネルギー車政策に怨嗟の嘆き

新車販売が低迷する中国が「新エネルギー車」の規制強化か

中国のトヨタハイブリッド.jpg▲トヨタが今年4月の上海モーターショーで発表したIZOA(イゾア)EV は広州トヨタが販売する電気自動車 一汽トヨタが販売するC-HR・EVとバッジエンジニアリング車

 6月の中国の自動車需要が12カ月連続で前年同月比マイナスになった。中国汽車工業協会(中汽工)のまとめによると、2019年上半期(1〜6月)は1232万台、前年同期比12.4%の大幅減。このペースでは19年通年の自動車販売は2500万台を下回る。しかし、中国政府は自動車市場のテコ入れ策を何も発表していないからか。

 7月初旬に中国の海南島で開催された2019年世界新エネルギー車会議で中汽工は、「国内の自動車市場は2年連続で前年比マイナスになる」と発言した。上半期のマイナス分を下半期に取り返して通年でプラスに転換できる状況ではない、という発表だ。

 中国市場落ち込みの最大の要因は、昨夏から続く米中貿易摩擦による経済の減速だ。米国トランプ政権が昨年8月に中国IT(情報通信)機器大手のファーウェイなどの製品を政府調達の対象から除外すると、中国IT業界の勢いは一気に減速した。日欧米の調査会社やシンクタンク各社は「たとえ米中関係が正常に戻ったとしても、影響はしばらくの間は残る」としている。

 この状況でも、中国政府は市場活性化策が打ち出せていない。そのため中国資本の自動車メーカーの間に「不満の声が広がっている」という報道が現地でも見られる。中国は排出ガス規制を現在の「国5」をより厳しい「国6」に移行させる段階にあり、これと市場減速が重なった。統計が発表されている1〜5月累計で見ると、中国メーカーの販売台数は前年同期比23.4%減と、大きく落ち込んでいる。

 中国政府はNEV(ニュー・エナジー・ビークル=新エネルギー車)のための補助金廃止を予定どおり来年実施する方針だ。NEVはBEV(バッテリー充電式電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池電気自動車)の3方式で、通常のエンジン車にくらべると割高だ。現在は補助金の効果で販売台数は伸びている。しかし、補助金がゼロになったら......。

 こうした状況にもかかわらず、中国政府は、NEV販売のクレジットを訂正する案を示した。現在は航続距離300kmのBEVを1台売ると5ポイント、PHEVを1台売ると2ポイントのクレジットを自動車メーカーは得られる。このクレジットの合計によってNEV販売目標未達成に関する罰金の有無が決まる。

 中国政府が示した新クレジット案は、BEVが一律半減、PHEVは2ポイントから1.8ポイントに減少といった内容。事実上のNEV販売目標値引き上げである。中国の自動車業界の間では「なぜこの時期に規制強化なのか」という不満の声が上がっている。一方で、NEVにハイブリッド車(HEV)を加える可能性があり、そうなるとトヨタとホンダは大いに有利になりそうだ。

 NEV規制実施に当たって中国政府は、最もコストのかかる2次電池(充電式バッテリー)の価格を抑えるため、政府指定の中国企業から購入した2次電池を積んでいないNEVは、クレジット対象外という保護策を採った。しかし、これも今年6月で廃止になり、100社以上ある2次電池メーカーの間で価格競争が激化しつつある。市場の減速に加えて排出ガス規制「国6」の実施、NEVクレジットの見直しなど、自動車メーカーにとってはますます厳しい状況だ。

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