ホンダの青山本社ビルが3月末で建て替えのために閉鎖される。1985年から39年間にわたって青山一丁目交差点のランドマークとしても親しまれた青山ビルは、2030年を目標に新本社ビルが建設される予定である。
青山ビルは安全、省エネ、フレキシビリティの基本思想で設計された。創業者の本田宗一郎は「本社ビルを世界一安全なビルにする」という思いをビルの設計・建設に関係する技術者たちに伝えた。「ホンダの青山ビルにくれば安心だ」と感じられる建物であれば、万が一の際にもパニックに陥らずに済む。避難脱出口の確保や、バルコニーから各階の避難階段にアクセスできる構造を採用している点も特徴だ。
安全といえば、青山ビルの窓ガラスが割れても通行人に被害をないように窓ガラスがバルコニーも奥に設定されている。これは本田宗一郎氏が指示したものだといわれている。
青山ビルは地下3階、地上17階建てで、延べ床面積は4万0224平方メートル。一般公開はされていないが、地下3階には巨大なヒバ樽の受水槽が2つ設置されている。カナダ産ヒバを使った樽で、貯水量35トン。この水は「宗一郎の水」と呼ばれ、ホンダを訪れるゲストに提供されてきた。また、災害時にもこの水を提供する役割を担っているほか、青山ビルの地下2階には非常時に対王するためのヘルメットや1万人分の非常食などが備蓄されている。
このビルはフロア空間を遮る柱がない。大部屋を必要に応じて利用できるフレキシブルな作りになっている。
新社屋は2026年から工事がスタート。新ビルが完成するまでは、ホンダ和光ビルと都内のビルでの勤務になる。