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英国政府は4月6日、ガソリン車とディーゼル車の販売禁止と排出ガスゼロ車(ZEV)の販売割合の義務付け(ZEVマンデート)に関する見直しを発表した。
今回発表された内容は、おおむね以下のとおり。
1)2030年に純粋な内燃機関を搭載する乗用車の販売を禁止する
2)2035年に乗用車のZEV化を達成する
3)ハイブリッド車とPHEVは2035年まで販売を認める
4)2030年以降は、その1年間に販売した非ZEVからの平均排出量の上限を定める
5)年間登録台数が2500台以下の零細(年間1000台未満)・小規模メーカー(年間1000台以上〜2500台未満)に関しては2030年の内燃機関販売禁止の対象外とする
6)2030年以降の排出量削減義務に関しては、小規模メーカーは特例申請が必要。零細メーカーは申請不要
7)ZEVマンデートのアロウアンスの前借り制度を2029年まで延長する。返済は2030年まで認める
8)罰金を減額。アロウアンス1単位につき乗用車は1万5000ポンドを1万2000ポンドに減額する
アロウアンスとはZEVの販売台数を意味する。たとえば、2024年のZEVマンデートは22%だった。10万台の新車販売のうち7万8000台はガソリン車/ディーゼル車でもよかったが、8万台のガソリン車/ディーゼル車を販売していた場合は2000台について1万5000ポンドの罰金が科せられる仕組みだ。
アロウアンスはZEVマンデートを超えた分は「貯金」して別の機会に使ってもいいし、他メーカーに販売してもいい。したがって、電気自動車だけを販売しているメーカーはアロウアンスが貯まる一方で、これを他社に販売して黒字を積み上げることが可能になる。
アロウアンスは従来、2026年までは「前借り」することもできた。2024年の基準は達成できないが、2025年は新型BEVの投入でZEVマンデートが軽くクリアできるならばこの前借り制度を利用して対処できる仕組みだ。前借りは「3.5%の複利で利息」が付き、2024年は上限の75%まで、2025年は同50%と利用枠が決められていた。
今回の発表で前借りは2029年まで利用できるように変更されたのは、多くの自動車メーカーが厳しいZEVマンデートに苦戦しているからだ。罰金が引き下げられとはいえ、1万2000ポンドといえば、約225万円である。前述の2000台超過でも45億円の罰金である。
英国自動車製造販売者協会(SMMT)は、今回の緩和措置に対して一定の評価をしているものの、ZEVの普及拡大にはインセンティブの設定が不可欠と主張している。ACEA(欧州自動車工業会)は、BEVの普及が鈍化している現状を憂慮して、購買段階での税制優遇やインセンティブの設定がBEV普及に必要と説明している。