経済アナリストで大学教授、そしてミニカーのコレクターとしても有名な森永卓郎さんによる、ミニカーをテーマにした連載コラム。今回紹介するモデルはシュコー社のマイクロレーサー・シリーズ。このシリーズは、ゼンマイ巻きで走らせることができるモデル。ゼンマイを巻くための穴が空いているのが特徴。ゼンマイを使った駆動メカを内蔵しているため、実車に忠実なモデルというよりも、ちょっとファニーに見えるフォルムが魅力のひとつ。
ちょっとファニーなフォルムに味わいがある
■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)
▲シュコー社のマイクロレーサー・シリーズにラインアップされたメルセデス190SL 右ドアの丸い穴から巻き鍵を入れてゼンマイを巻いて走らせる ミニカーは45分の1スケール
シュコー社の歴史は古く、創業は1912年で、当初はゼンマイ仕かけのおもちゃを作っていた。そのシュコー社が、ミニカーを作りはじめたのは1958年。全長4㎝ほどのピッコロ・シリーズが始まりだった。その後、1970年代に66分の1と43分の1の本格的ダイカストミニカーをリリースし、精度の高い、いかにもドイツらしい製品は、世界中の多くのコレクターに愛されることになった。
ボクも、これらのシリーズは、たくさん持っているのだが、シュコー社の歴史の中で、ほとんど無視してきたシリーズがある。それが、1950年代から60年代に作られたマイクロレーサーだ。
普通のミニカーと異なり、ゼンマイで駆動するようになっているので、サイドに巻き鍵を差し込むための大きな穴が開いている。しかも、駆動部品を収納させるため、ボディがずんぐりむっくりしている。だから、ボクはマイクロレーサー・シリーズを「ミニカーではない」と判断して、コレクションに加えなかったのだ。
ただ、最近、年齢を重ねて、受容力が高まったのか、「これはこれで味があっていいな」と思うようになってきた。ところが、ボクと同じようにコレクションに加えなかったファンが多かったのだろう。オリジナルモデルのマイクロレーサーは、ネットオークションでも、ほとんど出回っていない。
ただ、幸か不幸か、1976年にシュコー社が経営不振で売却されたあと、マイクロレーサー・シリーズの金型が引き継がれたため、その後、何度も再生産されている。
写真のメルセデス190SLも、1990年代に再生産された商品だ。塗り分けが往年の製品と若干異なっているが、雰囲気はまったく変わらない。だから、確実に売れるのだろう。シュコーの経営権が転々とする中でも、再生産が繰り返され、最近では、ハンガリー製のマイクロレーサーという製品が販売されている。
そんなことで、ボクのコレクションケースには、亀の歩みだが、少しずつマイクロレーサー・シリーズが増えつつある。ただ、問題は、ディスプレイする場所だ。他のメルセデスのダイカストミニカーと並べると、どうしても浮いてしまう。
そこで、いまは、シュコーのピッコロ・シリーズやダイカストスケールモデルと一緒に並べている。不思議なことに、同じシュコー社の製品と並べると、マイクロレーサー・シリーズは、しっくりと落ち着きをみせるのだ。