経済アナリストで大学教授、そしてミニカーのコレクターとしても有名な森永卓郎さんによる、ミニカーをテーマにした連載コラム。今回紹介するモデルはデンマークのテクノ社のトレーラー。カールズバーグが世界140カ国以上で販売しているビールをアピールする狙いからか、荷台には民族衣装をまとった国際色豊かなイラストが描かれている。森永さんによれば、「テクノのミニカーはコレクションしやすい価格になってきた。狙い目」だとか。
北欧文化の歴史が感じられるミニカー
■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)
▲1960年代に発売されたテクノ製カールスバーグ・トレーラー ベースはボルボのセミトラック ミニチュアモデルの全長は約190mm
この連載は、基本的に乗用車を取り上げる方針にしているが、今回はあえて商用車を取り上げたい。ボクが大好きなミニカーがあるからだ。それは、1960年代にデンマークのテクノ社が作ったボルボのカールスバーグ・トレーラーだ。テクノは、乗用車だけでなく、同時に素晴らしい商用車を数多くリリースしている。中でも、このトレーラーはピカイチだとボクは思っている。
何より、仕上がりが美しい。デカールで表現されたサイドの広告ペイントは色彩豊富で、思わず見とれてしまう。これが、50年も前のモデルとは、とても思えないだろう。
しかも、このモデルが素晴らしい点は、北欧の文化があふれた作りになっているところだ。ご存じの方も多いと思うが、カールスバーグ社は、1847年にデンマークのコペンハーゲンで創業した世界第4位の老舗ビールメーカーだ。ちなみに、コペンハーゲンでいちばん有名な人魚の像は、カールスバーグ社が市に寄贈したものだ。
カールスバーグ社のビールは、世界40カ国で醸造され、140カ国以上で販売されている。パネルのイラストは、その世界ブランドを表しているのだろう。世界各国の民族衣装が描かれている。もしかしたら間違っているかもしれないが、ボクの見立てでは、右から、アメリカ、スコットランド、ケニア、イタリア、ベトナム、メキシコ、アラスカ、そしてデンマークだ。
そして、民族衣装の下に書かれている「OVERALT」という文字は、英語のOVER ALL、「どこにでも」という意味らしい。つまり、どこでもカールスバーグという、いかにも世界市場を意識したイラストになっているのだ。
発売当時、テクノのミニカーはとても高価で、トレーラータイプの商用車は、さらにその数倍高かった。だから、ボクは子供の頃に買ってもらえたテクノのトレーラーはたった1台だけだった。そんな境遇の子供が多かったのだろう。テクノのトレーラーは、絶版市場でつねに数万円の値がつく人気車だった。
ところが、最近になって、当時子供だったコレクターが次々に引退して、相場がずいぶん安くなってきた。ヤフオクで、1万円程度で手に入るケースが出てきたのだ。
その値段でも高いが、最近の新車ミニカーの高騰を考えれば、リーズナブルな価格といえるだろう。このモデルは最近、ヤフオクで手に入れたものだ。テクノは、いまがコレクションのチャンスだろう。