小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●なぜか日本で伸びているシトロエン
いま、ひそかに日本でシトロエンが伸びているのだそうな。
コンパクトハッチのC3は、旧型の平均月販が55台だったのに比べて、新型は168台と約3倍!
ブランド全体では、2019年上半期の販売台数が4年前の2015年上半期に比べて83%増!
もっともまだまだ年間3000台レベルで、数万台レベルのドイツ勢とは比べものにならないのですが。
とはいえ伸びているのは事実で、小沢が勝手に勝因を分析させて頂くと、昨今のシトロエンの「キテレツキュートデザイン」が受けていると思われます。
そのきっかけは2014年に登場し、一部で話題になったC4カクタス。
日本には数100台限定でしか正規輸入されませんでしたが、これがなんとも超斬新。
ノバウサギもビックリの仏頂面マスクや、板チョコとも称されたドアサイドの「エアバンプ」なる衝撃緩衝材は摩訶不思議。
カーデザインを大きく超越したテイストで、多少ゴーインに言わせて頂くと「走る宇宙船」とも呼ばれた50~60年代のシトロエンDSやSMを微妙に彷彿とさせるモデルだったのです。
そのカクタス路線をハッキリ踏襲したのが新型C3であり、小沢はやはりシトロエンはアクの強いヘンテコギリギリのデザインやテイストが受けると確信した次第。
そしてC3をベースにコンパクトSUV化したのが新型C3エアクロスSUVであり、これまたユニークデザインでヒットの予感バリバリ。ネーミングは個人的にはいまひとつピンと来てないんですけどね。
▲C4カクタス以降のユニークなデザインを踏襲 コンパクトな全長のSUVを求めるユーザーニーズを満たす
▲ボディサイズは全長×全幅×全高4160×1765×1630㎜ 標準仕様でボディとルーフが異なる配色
●ユニークなデザインでありながら実はユーティリティが高い
肝心の実車ですが、まずデザインがさすが。
マシュマロマンのような、つかみどころのない、ふくよかフォルムはC3よりふっくらして、写真で見るよりインパクト大。
当然「ノバウサギもびっくりの仏頂面マスク」を踏襲しており、明らかにキテレツなカクタス路線のクルマ作り。
それがSUV化でより濃厚になってます。残念ながら板チョコデザインのエアバンプは付いていませんが。
中身は当然C3と同じPF1プラットフォーム。
パワートレインも1.2L直3ガソリンターボ&6ATで、どちらも多少古めではあります。
ピークパワー&トルクは110ps&205Nmと普通だし、WLTCモード燃費は14.7km/Lと、スペック的にはごくごく一般的。
▲被害軽減ブレーキ/インテリジェントハイビーム/バックカメラ付き7㌅タッチパネルスクリーンなどを標準装備 ナビはop
しかし、乗るとシトロエンらしい癒し系の走り味。
タイヤがグリップコントロール機能とセットの17インチのオールシーズンタイヤを履いていたためか、多少当たりにゴツゴツ感はありましたが、それでも乗り心地はしなやか。直進性もなかなかです。
▲1199㏄直3ターボと6ATの組み合わせはカタログスペック以上の性能を味わえる
エンジンもトルク感があって、スペック以上に元気よく走ります。
なにより走り以上にビックリしたのが見た目を裏切る高いスペースユーティリティ。
全長4.1m台とホンダ・ヴェゼルやトヨタC-HRよりコンパクトなボディサイズでありながら、やたらに中が広い。
▲ラウンド形状のルーフは頭上空間を拡大 帽子をかぶっていてもさらに余裕がある
▲後席足元スペースは十分に広い シートバックにもオレンジのアクセントでおしゃれ感を巧みに演出
全体的にシートバックを起こし気味の姿勢とはいえ、身長176cmの小沢が前後に普通に座れ、ロングスライド機構付きのリアシートを一番後ろにした状態でもラゲッジは410LとVWゴルフよりデカい。
オマケにリアシートを一番前にスライドさせると520Lと超巨大!
ヘタなワゴン顔負けの使い勝手なのですわ。
▲オレンジのアクセントがおしゃれなファブリックシート 座り心地はソフトで快適
▲後席は6:4分割スライド&リクライニング式 後席をたたむとラゲッジスペースは1289Lに拡大可能
ついでにシート生地やデザイン、オレンジの配色が絶妙にオシャレ。これぞフランス車って感じ。
先進安全はクラス最高レベルじゃないけど、被害軽減ブレーキやパークアシストはひと通りついているし、価格も259万円スタートと輸入車にしてはリーズナブル。
乗って走って室内を見た瞬間、これはC3より売れるかも? と思った次第。
いま激戦区のコンパクトSUVですが、シトロエン独自のヘンテコキュートな世界に癒し系の走りと実用性が加わったら鬼に金棒。ヘタすると兄弟車のプジョー系よりいいかも? という感じなのです。
▲ラゲッジは大きく使いやすい 後席スライドを併用すればさらに大きな荷物が詰める
▲高いスペースユーティリティを備えている こんな雰囲気で休日のアウトドアを楽しむのにぴったり