小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●気付いたら"お爺ちゃんカー"になっていた!!
かつてニッポンの国民車、トヨタ・カローラのセダン&ステーションワゴンが6年ぶりにフルモデルチェンジ! 12thモデルに生まれ変わりました。
カローラといえば、ご存じクラウンに次ぐトヨタの古株ファミリーカーで、世界累計販売4750万台越の超ビッグネーム。今回で実に53年目の大変身で、名前もわかりやすくシンプル化して、セダンがカローラ、ワゴンがカローラ・ツーリングへと改名!
とはいえ、幸せな話ばかりではありません。ある種の痛みを伴う改革ともいえます。
なぜなら新型の最大の争点はグローバル化。いままで頑なに守っていた5ナンバーボディをやめて、新たにプリウスと共通のグローバルプラットフォームGA-Cを使い、大型化したのです。
もちろんその分、走行性能、安全性能、質感とすべてが上がっているのですが。
それは一足早く2018年に登場したハッチバック版のカローラ・スポーツを見ればわかります。全幅は遂に1.5mを越え、価格も200万円超!
かつてのカローラ=大衆車のイメージを上回り、グローバルな高品質車になっています。
一方、チーフエンジニアの上田泰史氏はこういいました。「現在カローラユーザーの平均年齢はワゴンのフィールダーで60代、セダンのアクシアで70代です。どうにかしないと」
これは切実! 大変なことです。このまま行くとカローラはおじいちゃんカーとなり、早晩消え去ります。そうならないための新型のグローバル化&進化なのです。
▲チーフエンジニアの上田泰史氏に新型カローラの開発の苦労話を聞く
はたして遂にデビューした真打ちのセダン&ワゴンはどんな出来か?
こちらも日本を大幅に捨てちゃっているのか、そうじゃないのか?
そこを中心に小沢コージがチェックしました。
●涙ぐましいばかりのグローバルカローラの日本化
新型を見るなりビックリ。
デザインはグローバルモデルですが、ボディ外板はほぼ日本専用。
セダンはボンネット、ワゴンはボンネットとテールゲートを残して専用パネルとなり、ボディサイズを涙ぐましいレベルで短く、使いやすくしています。
▲新型カローラ・ハイブリッドW×B 価格:THS 275万円 旧型のアクシオから大幅な若返りを図った
▲セダンのボディサイズは全長4495×全幅1745×全高1435㎜ 旧型比では95㎜長く50㎜幅広く25㎜低い ホイールベースは2640㎜で旧型比40㎜プラス
ちなみにテールレンズ類も日本専用設計です。
具体的にはグローバルモデル比で、セダンは135mm短く、35mm狭く、ワゴンも同様に155mm短く、45mm狭く、両車ともにホイールベースが60mmも短くなっています。
▲新型カローラ・ツーリング・ハイブリッドS 価格:THS 265万1000円 低重心化を図ったTNGAプラットフォームを新採用
▲ワゴンのボディサイズは全長4495×全幅1745×全高1460㎜ 旧型比では85㎜長く50㎜幅広く50㎜低い ホイールベースは2640㎜で旧型比40㎜プラス
結果、セダン&ワゴンともに全長4.5mを切り(4495mm)、全幅も1.75mを切り(1745mm)「これが日本で扱い易いギリギリのサイズ」(上田エンジニア)とか。
さらにビックリなのはディテール。
狭い日本の駐車場に押し込めるためにサイドミラーのステーを日本専用とし、ミラー端を旧型比片側5mmプラスに留めています。
同時にフロントドアの内張を16mm削り、乗降性も高めています。
基本はグローバルモデルですが、細かい努力で日本の既存ユーザーに受け入れられるように、きめ細かく調整しているのであります。
▲W×Bグレードの室内は部分的にホワイトを使って明るい印象 インパネはシンプルで質感は高い
一方、グローバルモデルの利点である走りの質感、内装の質感アップはもう顕著。
これまでのカローラが、和製VWゴルフになっちゃったぜ! という進化っぷりです。
乗りこむとインテリアの上質さからして段違い。
デザインがシンプルかつ優美なだけでなく、インパネ全面にソフトパッドがあしらわれ、シートも大柄な上、座り心地が非常にいい。
ヘンな話、いままでのカローラをチェーン店の牛丼とすると、新型カローラは叙々苑の焼肉弁当のよう。全体に漂う良いモノ感が段違いなのです。
パワートレインも現行プリウスと同じ大排気量の1.8リッターハイブリッドがメイン。
▲エンジンは1.8リッターハイブリッドを中心に1.8リッター自然吸気と1.2リッターターボを用意
かつてのヴィッツ系1.5リッターハイブリッドとはトルクの厚み、静粛性が違います。
システム最高出力は122psと余裕で、発進からトルクが太く、まさに世界基準の走りです。
なおかつ居住性は、日本化により、リア席こそヒザ前スペースに余裕がありませんが、身長176cmの小沢が前後に普通に座れ、非常に快適。
▲写真はW×Bのホワイト内装 合成皮革とレザテック素材を採用し明るくフレッシュなイメージ
▲新型カローラの後席足元は身長176㎝の乗員が前後に座るとこぶし1個半のスペースがある
▲後席の頭上空間は広いとはいえない 後席をよく使うユーザーは実際に確認したほうがいいポイント
ラゲッジ容量もセダン&ワゴンともに400リッター前後で、上屋の構造で数値的にはセダンの方が広いですが、どちらも十分。ちなみに現行VWゴルフは380リッター。ハッチバックでがんばっていますが、新型カローラはそれを上回ります。
もちろん夜間の歩行者に対しても反応する最新世代の先進安全、トヨタ・セーフティ・センスを標準装備し、さらにこの世代から実は画期的なディスプレイ・オーディオも全車標準装備。
▲ハイブリッドSのインテリア センターの9㌅大型ディスプレイは上級グレードにop2万8600円
これはいわゆるナビ機能を標準で持たない、自らのスマホ接続を前提とするインターフェイスで、まさにスマホ時代のカーオーディオ。
標準装備なので価格が分かりにくいですが、確実にコストダウンにもつながっています。
▲スマートフォンとの連携=コネクテッドが新型カローラの開発重視ポイントのひとつ
加えて、日本仕様にのみ、安価な140psの1.8リッターガソリン仕様も設定。セダン版のスタートプライスが193万円台と200万円を切りました。走りはハイブリッドほどのトルク感はありませんが、ほどほどのパワーで十分走ります。
もちろん、それでもかつて150万円台で買えたカローラ・アクシオと比べると割高ですが、中身もサイズも完全にひとクラス車格をアップさせつつ、扱い易さをギリギリ旧型レベルに留めているのです。
この、グローバル商品でありつつ、日本向けでもあるための努力は、正直トヨタ以外ではできません。
日産だったらこんな専用ボディは非効率なので絶対作らないし、ホンダも同様。
トヨタが数10万人、ヘタすると数100万人レベルでカローラ既納客を持つからできる大盤振る舞いなのです。
というわけで、令和ならではのいいとこ取りクオリティカーを味わうのは、いまがチャンス!
ぜひディーラーに見に行って試乗し、時に自分の駐車場に突っ込んで扱いやすさを確認していただきたいと思う所存であります。
▲セダンのラゲッジは429リッター(VDA) 9.5㌅のゴルフバックが3個積載できる
▲ツーリングのラゲッジは後席を立てた状態で9.5㌅ゴルフバックが4個積載可能 後席は6:4分割可倒式