経済アナリストで獨協大学教授の森永卓郎さんのミニカー・エッセイ。今回は「空港で働くクルマ」限定でシリーズのラインアップを展開したバンダイの「エアポート・シリーズ」を紹介。日本航空、全日空(現ANA)、KLMオランダ空港、パンアメリカン航空の特徴あるクルマをラインアップ。シリーズの対象を絞り込んだ結果、ファンの広がりは限定的だったが、現在はプレミア価格で取り引きされている。
空港で働くクルマ限定のレアシリーズ
■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)
日本の2大玩具メーカーといえば、タカラトミーとバンダイだろう。いうまでもなく、タカラトミーは、トミカ・シリーズで、世界に誇るミニカーのラインアップを揃えている。一方のバンダイは、有力なミニカーブランドがない。だが、実はバンダイも何度かミニカー作りに挑戦している。
その中で、最も本腰を入れたのが、エアポート・シリーズだ。 エアポート・シリーズは、トミカ発売直後の1970年代半ばに作られ、1番の「機内食ローダー」から20番の「ジェット牽引車」まで、20車種がラインアップされた。
それぞれに日本航空、全日空(現ANA)、KLMオランダ航空、パンアメリカン航空という4航空会社の仕様があったため、総勢74種(12番の化学消防車と13番の救急車は、航空会社ごとの仕様になっていない)が揃っていた。まさにトミカに対抗できるシリーズだった。
エアポート・シリーズは、トミカのようなスピードホイールではなく、細かい塗り分けもされていて、非常に凝った作りになっていた。だが、「空港で働くクルマ」というあまりに狭い分野にジャンルを絞ってしまったことや、トミカの迫真の出来と比べるとどうしても甘い部分があって、コレクターの支持を十分得られず、短命に終わってしまった。
ボク自身も、発売当初はトミカに夢中になっていたので、エアポート・シリーズに、目を向けることがまったくなかった。ただ、絶版になってから、どうしても気になって、専門店の絶版コーナーやネットオークションで、少しずつ集めてきた。それでも、まだ全体の3分の1ほどしか集まっていない。
残っている台数が少ないからか、いま1台3000円前後の高値で取引されている。 実は、エアポート・シリーズのコレクションをしながら気づいたことがある。それは、売りに出されるのは、日本航空仕様が最も多く、次に全日空、そしてKLMの順に少なくなり、パンアメリカン仕様は極端に少ないという傾向だ。
パンアメリカン仕様は、そもそも生産台数が少なかったのか、それとも生き残る率が低かったのかはわからない。ただ、写真で紹介したボクの6番の「ランプバス」のコレクションも、パンアメリカン仕様だけが、欠けている。
パンアメリカンは、91年に経営破綻して、もうこの世に存在しない。「エアポート・シリーズを当時のうちに揃えておけばよかった」と、ちょっと後悔している。
▲バンダイのエアポート・シリーズ 6番モデルのランプバス中央の全日空(現ANA)のルーフマークは「レオナルド・ダビンチのヘリコプター」がヒントになっている