小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●RAV4と並びサイズ、パワー、ハイテクガチンコの日本車2トップ!
不躾小沢コージ、発売から約1年ぶりに日本車マーケットの「一大疑問」に挑んでみました。
それは昨年発売の世界バカ売れSUV、ホンダCR-Vが、なぜ日本のみ売れないのか? です。
とくに今春ガチンコライバル、トヨタRAV4が国内販売され、予想外といいたくなるほど売れていることから、ますます疑問拡大!
なにしろ2019年4~9月の国内販売実績を見ると、RAV4がほぼ4万台(3万9299台)に対し、CR-Vはわずか5000台(5416台)と、ざっくり8分の1。
RAV4は新車効果があるにしても、どちらとも全長約4.6m、全幅は1855㎜から1センチしか違わない世界的ベストセラーSUVで、世界トップレベルのハイブリッドユニットとガソリンエンジンを用意。CR-Vには7名乗り3列仕様もあり、ミニバン的な使い勝手もできるメリットまであります。
▲ホンダCR-V・ハイブリッドEXマスターピース(4WD) 価格:444万1800円
さらに知る人ぞ知る事実ですが、世界市場で見ると事実上の日本車2トップと呼んでいいほどの超人気モデル。
2018年の世界販売ランキングを調べてみると、1位はカローラの118万台、2位はRAV4の83万台、7位がCR-Vの74万台。
一見、離されているようにも見えますが、カローラはセダン、ワゴン、ハッチバックの合計なので、単独ボディで見ると国産車の1位がRAV4、2位がCR-V。
グローバル販売80万台はハンパではなく売れています。マジメにこの2台を合わせると、スバルやマツダの年間販売を抜くか並ぶのです!
▲ホンダCR-V 全長4605×全幅1855×全高1690㎜ トヨタRAV4のボディサイズ全長4610×全幅1865×全高1690㎜とほぼ同等
なぜ国内でCR-Vばかりが割を食っているのか? ひさびさに静岡まで試乗しに行って参りました。
今回、乗ったのは5名乗車のハイブリッドEXマスターピース。車両本体で約444万円の高額仕様です。
●見た目の分かりやすさはRAV4、しかし走りの高級感では上回っているかも?
あらためて見ると、CR-Vはたしかに大人しめかもしれません。
旧型4代目の正常進化版で、フォルムは上品。フロントバンパー&フェンダーがおたふくのように下あごが膨らんだ状態でおっとり印象。グラマラスではありますが、正直RAV4のようなワイルド感はナシ。
アチラは小沢が勝手に「ブルドッグ顔」と呼んでいる超ワイルドマスクとクロスヘキサゴン(六角)デザイン。開発チーフの佐伯エンジニアによると「同じような商品ばかりになるとお客様がマーケットから興味を失う」と考えたそうで結構な冒険デザイン。これがまずは功を奏したと思われます。
一方中身は、どちらも攻めています。まずCR-Vは、ホンダ流の2モーターハイブリッド。お馴染みトヨタ方式とは違い、2Lガソリンエンジンをほぼ発電用と割り切り、加速はほぼ184ps&315Nmのモーターで行います。
一部高速巡航中はエンジンパワーも直結しますが、ほとんどモーター加速といっていい。
これが本当に上質です。
発進は、状況にもよりますがほぼ無音でモーター加速が始まります。
日産e-POWERほどの電気感はないものの、上質感はかなり。
エンジン音と加速感がズレる時もありますが、滑らかさではトヨタ・ハイブリッドを上回っている部分さえあります。全体の透明感では間違いなく上。
さらにいいのは乗り心地。今回、小沢は東京から静岡県清水市まで約500km往復しましたが、ひさびさに疲れないクルマ!という印象。
▲ハイブリッドはシフトレバーがない電気式 モーター主体のEV的なスムーズドライブが味わえる
比べるとRAV4もいいですが、こちらはもっとドイツ的というかシャープ。
ハンドリングもRAV4の方が、角が立ってキレが良く、CR-Vは最初ちょっともっさりしているかな? と思いますが、長距離を乗ると高速での扱い易さは上々。
ほどよいシャープさとダルさがあり、ある意味RAV4がBMW的としたら、CR-Vはメルセデス的。ここから先は好みといいたくなるほど走りはどちらもよい。
●問題はライバルも指摘するほど明らか! それさえ整えれば売れるはず!?
驚いたのは実燃費です。
ハイブリッドで比べるとCR-VのJC08モード燃費が25.8km/L、RAV4が25.2km/Lとトントンで、どちらもいい。しかし、小沢がほぼ高速を飛ばし気味で走って往復17km/L。このサイズで車重1.5トンのSUVとしては立派な数値でしょう。
▲ラゲッジは広くて高さもあり上質な仕上げ 積載性は良好
使い勝手も上々で、ラゲッジはゴルフバッグが3つか4つ搭載できますし、今回は乗れませんでしたが、CR-Vのみに備わる3列シートの7名乗りは、3列目が広くはないものの、大人が一応座れるスペース。
ミニバン人気の高い日本では、やはりCR-Vは相当な実力を持っているのです。
小沢も今回本気で自分が使うとしたらどっちを選ぶだろう? とかなり迷いました。
▲後席も広く乗り心地は上々 EXマスターピースは本革シートが標準装備
▲いつものように身長176㎝の乗員が前後に座ったとき後席の足元はこぶし3個分ほどの余裕がある
というわけで結論。実はトヨタ上層部が認めていましたが、CR-Vは相当な実力車で、世界販売も以前まではCR-Vのほうが上だったといいます。間違いなく日本車ツートップなのです。
ではなぜ日本では売れないのか。問題は明らかで、価格です。
定価ベースの話ですが、CR-Vの一番安い1.5LダウンサイジングターボFFモデルで329万円のところ、RAV4は2LノンターボのFFモデルで265万円!
なんと60万円以上の差があるのです。
確かに1.5Lターボの方が手はかかっているかもしれませんが、この差は絶大。
日本で人気のハイブリッドモデルで比べると、CR-Vが385万円スタートと高級車レベルなのに比べ、RAV4は326万円スタート。
これまた正直お話しにならない価格差です。
もちろん販売現場では、値引きもあるでしょうし、CR-VはRAV4が売れていることもあって、かなり引くかもしれません。ですが、販売実績を見る限り、あまり本気でないのでは?
▲3列目シートはミニマムだが大人が乗れる広さをぎりぎり確保
不躾小沢は勝手に提案しますが、ほどよいタイミングを見て大幅価格改定を希望します。
とにかくCR-Vはいいクルマ。
燃費や使い勝手も含めて、日本では誤解されすぎています。
売れ筋ツートップの肩書きは伊達じゃない。みなさまからもぜひホンダに問い合わせていただきたいものです。