連載第23回 ここを乗り切ったら次が見えてくる! スカイアクティブ第二幕、マツダCX-30が担う大勝負

TOPプレート付き.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●いまこそが第二幕の正念場!

 大注目の新型コンパクトSUV、マツダCXー30に乗って参りました。
 
 ネーミング的にはCX-5やCXー8のような数字ヒトケタモデルに比べて傍流的ですが、小沢にいわせるなら、このクルマこそがマツダ・スカイアクティブ革命、第二幕の本流であり最初の正念場!

 もちろん第二幕としては2019年5月発売の新型コンパクトハッチ&セダン「マツダ3」が皮切りではあります。
 
 しかし、マツダ3はネーミングを変えたりデザインもトンがってますけど、中身はわりと実用性を割り切ったスペシャルティモデル。全長4.4m超のハッチバックでも、リアシートはVWゴルフなんかより狭いですから。
 
 さらに新聞報道もされていますが、北米市場ではセダン、ハッチバック離れが続き、コンパクトモデルはSUVが中心になりつつあります。そのため北米におけるマツダ3の販売は一部前年割れ。
 
 それはクルマの問題というより、セグメントの問題なのです。

 つまり日本はもちろん、世界的にもマツダの新商品群、第二幕の主役は、このコンパクトSUVたるCXー30なのです。

フロント45度プレート付き.jpg▲マツダCX-30・20S・Lパッケージ(4WD) 価格:6SAT 303万500円 2リッターガソリンエンジンのトップグレード 
 
 ご存じ好調キープのマツダは、2012年発売の1stミディアムSUV、CX-5から「スカイアクティブ」と称する新商品攻勢が始まっています。
 
 同社が「魂動デザイン」と呼ぶ、ヨーロピアンでありつつ個性的なフォルムに、低燃費でありながら、あり得ないパワフル走行を可能にしたガソリンとディーゼルの2種類のスカイアクティブエンジンを用意。
 
 なかでもライバルにない低圧縮のディーゼルターボは、ガソリンではあり得ないパワーと燃費を両立。マツダ快進撃の元となってきました。
 
 あれから7年、ついにスカイアクティブ革命も第二幕に突入。その真の実力を占うのがCXー30なのです。というわけで、いざ試乗!

●コンパクトボディに絶妙な室内空間を確保した高効率パッケージング

 見た目ですがズバリ、マツダ3ほどのスポーツカーっぽさはありません。そりゃそうです。なんせ背高ノッポのSUVですから。

 しかし、マツダ3から始まった独特のヌメヌメ感=「プレスラインを使わないボディデザイン」という新境地は、いままでにないカッコよさ! その色っぽさは、もしやマツダ3以上で、とくにサイドのキラキラ感はまるで太刀魚! 見る角度で光り方が変わります。

リアたて近プレート付き.jpg▲全長4395×全幅1795×全高1540㎜ 全高は一般的な立体駐車場に入庫可能な1.55m以下に抑えた
 
 加えて、全高は1.54mとそこそこ高いのにそれをほとんど感じない点も見事。

 秘密はドア下の黒い樹脂部分で、ある意味シークレットブーツのように床の高さを視覚的に感じさせないデザインになっています。
 
 さらなる驚きはボディサイズ。全長4395×全幅1795mmなのですが、全幅はマツダ3ハッチバックと共通ですが長さは65mmも短く、ホイールベースも70mm短い。
 
 大きくなりがちなSUVにありながら、セダンやハッチより短いのです。

真横.jpg▲大きな抑揚が与えられたオリジナリティあふれるサイドフォルム 
 
 しかし、そこを前述1.54mの高めの車高がカバー。室内は見た目より広く、リアシートには身長176cmの小沢が普通に座れてマツダ3より確実に広く、ラゲッジ容量もマツダ3が334リッターと割り切っているのに対し、CXー30は430リッターと広め。

後席頭上.jpg▲全長や全高を抑えたわりに前後席は必要にして十分な広さを確保

後席足元.jpg▲前後席に176㎝の乗員が座ったとき後席足元はこぶし1個分強のスペースがある
 
 これならハッチやセダンからSUVに乗り換える甲斐もあるってものです。より小さく、より便利になっているんですから。

●話題のスカイアクティブXを本当に待つ?

 気になるのは走り。最も残念なのは、新商品群第二幕の最注目たる新エンジン、スカイアクティブXの導入が遅れていることです。

 コイツは既存のスカイアクティブ系を越える画期的なエンジンで、現在世界のどこのメーカーも市販できてないガソリン希薄燃焼を実現。
 
 混合気を温度にして3度以内にコントロールしないと性能を発揮できないようで、驚きの制御技術を使っているみたいですが、実現すれば2リッターガソリンで、トルクは通常のガソリン2リッター以上、燃費はディーゼルエンジン並みになるといいます。

ディーゼル.jpg▲1.8リッターのディーゼルターボと2リッターガソリンエンジンを設定 フラッグシップのスカイアクティブXは2020年登場
 
 マツダのなかでは他社のハイブリッド的位置づけになるだろうハイテクで、車両価格は通常モデルのおよそ70万円高になるとか。
 
 こうなると性能は良くても、普通のスカイアクティブGやスカイアクティブDでもいいか? と考えるユーザーが出てくるはずで、とりあえず小沢も両方乗ってみました。
 
 まず乗ったのはピークパワー&トルクが156ps&199Nmの2リッターガソリン。ノンターボですが、これが悪くない。車重はSUV化で1.5トン弱になっていながら、予想以上にキビキビ走ります。
 
 小沢的にはガソリンモデルが239万円スタートとお買い得だし十分だと思いました。
 
 マツダが誇るGベクタリングコントロールなるハイテク走行デバイスも標準装備ですし、さらにコネクティッド技術もトヨタに続いて全車標準ですから。
 
 一方、288万円から始まる1.8Lディーゼルターボモデルは116ps&270Nmの余裕のトルクもあってそれなりにパワフル。
 
 もちろん2.2Lディーゼルターボほどのパンチはありませんが、燃費はWLTCモードで最良19.1km/Lと良好。捨てがたい魅力があります。

グレーフロントプレート付き.jpg▲マツダCX-30・XDプロアクティブツーリングセレクション(4WD) 価格:6SAT 312万4000円
 
 2020年に登場予定のスカイアクティブXも期待大ですが、価格差を考えるとノーマルガソリンでも十分か? と思ったのは正直なところ。

 両モデルともに安心したのは、マツダ3から導入した新世代の走りのテイストで、独自の「骨盤を立てて、人間のバランス保持能力を生かす走り」ということですが、マツダ3で気になった足の固さは感じませんでした。

前席.jpg▲マツダ3で培ったスカイアクティブビークルアーキテクチャーを新採用 骨盤を立てるシートが特徴

 いよいよスカイアクティブ第二幕も熟れてきたか! といった印象。
 
 さらに、インテリアの質感が高く、とくに本革内装はライバルにないホワイトとブルーや茶色とブラックのツートーンが選べます。

ダッシュ正面.jpg▲Lパッケージのインテリアは黒か白の本革シートが選択可能 ダッシュボードやセンターコンソールは茶色の本革仕様

ブルー内装.jpg▲ツーリングセレクションはブルーの本革内装にファブリックシートを組み合わせる シートはグレージュとブラックが選択可能
 
 さまざまな意味で、輸入車に負けない色気と、そのわりに手頃な価格をまとったCXー30。
 
 個人的には「マツダ3のカッコ良さは気に入ったけど、使い勝手で二の足を踏んでいたクルマファン」に見て頂きたいもの。
 
 まずはディーラーにGO! ですな。

ラゲッジ.jpg▲上質に仕立てられたラゲッジは430リッター 使い勝手のいい広さを備えた

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