連載第28回 これはひさびさ日本最適フォルクスワーゲンかも? VW・Tクロス

TOP_プレート付き.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』 

●出る前から売れる予感バリバリでしたが

 ひさびさ日本で大ヒットするフォルクスワーゲンになるかも? 期待の逸品がついに上陸しました。その名もTクロス! 

 VW最小サイズSUVで全長4.1m台。

 これは日本での人気コンパクトSUVたるトヨタC-HRやホンダ・ヴェゼルよりも短い。全幅1.76mも同様です。
 
 それもそのはず、このクラスは完璧にみな世界戦略車。
 
 C‐HRやヴェゼルも世界に出しているし、実は日本の5ナンバーサイズ縛りなんてカンケーないんです。
 
 さてTクロス、小沢はすでに今春スペイン・マヨルカ島で試乗してきて、サイズ感、実用性の高さ、ほどよい走りに高い可能性を感じていたんですが、日本仕様に乗ってさらに成功を確信! 最大のポイントは価格と装備です。

フロント下から_プレート付き.jpg▲VW・TクロスTSI・1stプラス 価格:7SMT 335万9000円 1stプラスは18㌅タイヤを装着する上級仕様 駆動方式はFFのみ
 
 上陸最初の限定モデル、その名も「Tクロス1st(ファースト)」でありますが、ついに300万円切りの299.9万円。これはC-HRなどの1.2Lターボよりは高いですが、安全装備はほぼフル。
 
 VWオールインセーフティという装備で、追従オートクルーズのACC、被害軽減ブレーキのフロントアシスト、リアビューカメラ、パークティスタンスコントロール、駐車支援システムのパークアシスト、ブラインドスポットディテクション、リヤトラフィックアラートがついています。
 
 約336万円の「1stプラス」になると、VW上級モデル並みのレーンキープアシストシステムとハイビームアシストまでつくという。
 
 さらに! LEDヘッドライトに2ゾーンオートエアコン、前後4つのUSB充電まで標準。相当本気で日本マーケットを狙っている証拠です。

リア_プレート付き.jpg▲全長4115×全幅1760×全高1580㎜ 全長と全幅はポロよりわずかに大きい程度で日本でも扱いやすそう

●居住空間を大きく確保した見事なパッケージング

 肝心の実車ですが、エクステリアからしてかなり立派。

 とくに兄貴分のティグアンもビックリのスリーストライプのグリルはなかなかの迫力。

真横.jpg▲タイヤを4隅に配置した最新世代の高効率パッケージングで乗員の居住空間を最大限に確保
 
 横から見ると全長4.1m台はさすがに短く、ちょっとチョロQっぽい寸詰まり感もありますが、それはそれで可愛げがあります。
 
 なにより最大の美点はパッケージング。
 
 このタイプのコンパクトSUVは、元祖日産ジュークにしても明らかにカッコ優先で、C-HRもリアシートは狭めでしたが、最新世代は露骨にスタイル&実用のいいとこ取りになっています。

前席.jpg▲座り心地のいい大型サイズのシート 快適なドライブが楽しめる
 
 Tクロスはその頂点ともいえ、リアシートスライドを一番後ろにすると、身長176cmの小沢が余裕で前後シートに座れます。身体を起こしたアップライト気味の姿勢ではありますが、スペース効率はピカイチ。

後席広さ.jpg▲リアシートの座り心地も優秀 前後に140㎜スライド可能 ラゲッジを拡大したい場合などの利便性を向上
 
 またその時点でもラゲッジは385リッターと現行ゴルフより広く、リアシートを前にすると455リッターと、ちょっとしたワゴン並み。ちょっとサイズからは想像できない使い勝手のよさが工夫されています。

シート普通.jpg▲リアシートを後方に下げた乗員優先モードでは広い足元空間が出現 こぶし2個分ほどのゆとりが生まれる
 
 一方、気になる走りですが、ベースは最新世代のポロで、ゴルフほどのしっとりさはありません。インテリアもソフトパッドなどの高級素材は使われておらず、そこは価格なり。
 
 しかし、乗り心地は車高が高い分、ポロよりしっとりしていて、個人的にはこれで十分だと思いました。

ホイール.jpg▲1stプラスは写真の18㌅タイヤ&アルミが標準設定 1stは16㌅タイヤ&アルミを採用
 
 ハンドリングもほどよくキビキビ、しかも剛性感は高く、VW車ならでは品質感。
 
 さらなるポイントはパワートレインです。
 
 新型Tクロス、現状ポロ譲りの116psの1リッター直3ターボ&7速DSG一本、駆動方式もFFのみと割り切っており、だから価格も抑えられたわけですが、これが動力性能、燃費ともにグッドバランス。

エンジン.jpg▲1リッター直3ターボ搭載 比較的軽い車重1270kgとの相乗効果で優れた燃費とバランスのよい走りを実現
 
 たしかに直4ターボのような濃密感はなく、回転フィールは直3ターボならではのラフさがあるのですが、200Nmの高トルクを2000rpmから発揮し、十分な力強さ。
 
 車重は1.2トン台と軽めなだけに、大人数と多少の荷物を載せてもそれなりに走ります。もちろんゴルフGTIのような速さは望めないのですが。
 
 しかし、その分リアルなWLTCモードで16.9km/Lの燃費は立派。C-HRの1.2リッターターボでもWLTCモードで15.4km/Lですから。
 
 オーディオもアップルカープレイ、アンドロイトオート、ミラーリンク付きのディスカバープロやETC2.0標準。エアコンにはアレルゲン除去機能付フレッシュエアフィルターまでついています。

ダッシュ斜め.jpg▲センターの8㌅タッチスクリーンはカーナビ含む統合型インフォテイメントシステムが標準装備 コストパフォーマンスは優秀
 
 ひさびさにドイツならではの高い品質感と割り切りを感じる必要にして十分以上なコンパクトSUV、VW Tクロス。ヘタするとポロ以上に売れちゃうのかも? と思う今日このごろなのです。

ラゲッジ.jpg▲リアシートを後方に下げた場合のラゲッジスペース

ラゲッジ拡大.jpg▲リアシートを前方にスライドすればラゲッジスペースが拡大

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