小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●ジョン・クーパーの血は伊達じゃない!
妻をめとらば才たけて、見目麗しく、情けある...
「理想の妻の条件」ではありませんが、先日サーキット試乗会で理想の掘り出し物というか、クルマ好きにとっての極上モデルに出会ってしまいました。
それは走り、広さ、ブランド力、ついでに快適性も備えた三~四拍子揃った「MINI・JCWクロスオーバー」。
▲MINIジョン・クーパー・ワークス・クロスオーバー 価格:8SAT605万円 全長4315×全幅1820×全高1595mm
唯一の欠点は600万円を越えるお値段でしょうか(苦笑)。
正直BMWの「Mモデル」やメルセデス・ベンツの「AMG」ほど有名ではありませんが、JCW=ジョン・クーパー・ワークスは、1stBMW・MINI誕生後、2005年に「ジョン・クーパー・ワークス・チューニング・キット」として登場以来、コンプリートモデルが最高峰グレードに君臨。
いまやJCWの人気が上昇中だそうで、お値段もあって爆発的に売れることはありませんが、乗るとヤミツキ。
最大の特長はエンジンの大幅パワーアップです。
新しい2リッターターボは旧型比で75ps&100Nmも向上。
▲1998cc直列4気筒DOHCツインパワーガソリンターボエンジン 最高出力は従来比で75ps(55kW)アップの306ps(225kW)/5000rpm、最大トルクは同100N・mアップの450N・m/1750~4500rpmを発生
306PS&450Nmのピークパワー&トルクは2リッター世界最強のメルセデスのA45には敵いませんが、MINI史上最速をうたい、専用ピストンや強化クランクシャフト、改良型ターボチャージャーなどを導入しています。
同時にすごいのは乗り心地。足回りが締め上げられているにもかかわらず、普段乗りでも十分に快適。今回それをサーキットで改めて痛感することになったのです。
●パワフルでコーナリングも極めて爽快
乗ったのは2019年10月に改良されたSUVタイプのJCWクロスオーバー。小沢は最初こそナメていました。
というのもご存じのとおりクロスオーバーはデカい。
▲車重1670kg 公表された最高速度は250km/h、0→100km/h加速は5.1秒
2011年に1stモデルが日本上陸した時から、MINI初の全長4m超え&4枚ドアボディに加え、4WD付きも選べ「MINIじゃなくってデカだろう!」と呼ばれていました。
いわば最もミニらしくないMINIなのです。
その上、2017年上陸の2ndクロスオーバーはボディがさらに大型化。
全長×全幅×全高は4315×1820×1595mmとVWゴルフより大きく、さすがにサーキットは楽しくないと小沢は決めつけておりました。
ところが筑波サーキットのミニコースで乗って驚き。
まずはパンチングレザーを使った赤ステッチ入り本革ステアリングやアルカンターラ調のセミバケットシートから本気ぶりが漂い、イグニッションを入れると乾いたエキゾーストサウンドがフォン!
アクセルを踏み込むと8速ATが滑らかにつながり、スペックで5.1秒というクロスオーバー史上最速の0-100km/h加速がすごい。
立ち上がりは意外と滑らかですが後半に伸びる伸びる。
そしてさらにコーナリングが超気持ちいい!
▲フロントとリアのグリップの使い方が絶妙 アンダーステアが出にくくリアも粘りがあってコーナーを楽しく攻められる
パワフルなJCWがゆえ、オンデマンド4WDが備わっているのにもかかわらず、曲がりにくさは一切無く、ステアリングフィールはシャープでソリッド。
ブレーキを残しつつコーナーに入ると、スピードによってはリアが滑り出だし、ブレーキもカッチリと余裕をもって効きます。
オマケにアクセルを踏み込んで立ち上がると4WDだけに、一瞬アンダーステアが出ると思いがちですが、気持ちよくリアタイヤの方からはらんで曲がる。前後トルク配分も適切なのです。
▲インテリアはナビやインフォテイメントシステムが最新に置き換えられデザインを一部変更
サーキット試乗を終え、筑波からの帰り、一般道で乗ってみました。
乗り心地は固いことは固いですが、継ぎ目でもさほど不快ではありません。
100km程度のドライブを余裕でこなせました。
▲フロントシートはバケット形状 グレーの色使いがマイチェン後の特徴
▲リアシートの広さも十分に確保 頭上や足元も広い
実用性も十分。全長4.3m台だけに前後シートは身長176cmの小沢が普通に座れ、ラゲッジ容量も450リッターと広い。
子持ちのファミリー向けとして十二分に使えるクロスオーバーモデルになっているのです。
▲使いやすいラゲッジスペースは450リッター 後席は3分割可倒式
価格は旧型より上がって605万円。
確かに安くはないですが、これだけ速くて楽しくて広く、ついでに子供ウケするMINIブランド。
もしやプレミアムなファミリーカーとして最強&最適かも? と思った次第です。