小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
かつて昭和の時代に「いつかはクラウン」という名CMコピーがありましたが、小沢にいわせるならいまは「いつかはメルセデス」でしょう。
2019年の輸入車販売トップは6.6万台レベルのメルセデス・ベンツで、2位のBMWをほぼ2万台も離してぶっちぎり!
BMWは傘下のミニを合算するとメルセデスを越えますが、ブランド単体でみるとかわらずベンツ強し。
それもわかる気がします。「クルマなに持っているの?」「メルセデス」と答えると、なにげに成功者イメージが漂いますから。
ドイツ系のなかではもちろんのこと、ロールス、ベントレー、ジャガー、アストンマーティン、アルファロメオといった高級車ブランドが出揃っても、メルセデスのブランド力はぶっちぎりなのです。
振り返ると、昭和天皇が戦後、人間宣言をしたと同時に日本全国を走り回ったのが、ため色のメルセデス・リムジン。以来、日本人をシビれさせるオーラを放ち続けているのです。
●プレミアム感とコスパでは上位クラスを凌駕する存在
今回、身近かつほどよいオーラを持つ新サラリーマンの憧れたる「いつかはメルセデス」が登場しました。2019年後半に上陸した新型Aクラスセダンです。
▲日本で扱いやすい新世代セダンとしてデビュー コンパクトでありながらプレミアム感を併せ持つ
もともとAクラスは、「メルセデスが作ったVWゴルフ」ともいうべき実用コンパクトハッチバック。
とくに1stモデルのスタイルは、おにぎりみたいな家庭的ムードで、サイズ小さめ。
走りはステアリングフィールこそ上位モデルに近いものがありましたが、乗り心地にしろ、加速感にしろみんなの「憧れの対象」となるには正直なところ役不足でした。
実際にはSクラスやEクラスに乗るお父さんが、奥さんや娘さん用に買って上げるクルマでもあったのです。
ところが2018年末に出た4thモデルのAクラス。ハッチバックはスタイル、質感、走りと大幅グレードアップ。
オザワ的には「Cクラスを超えるかも」というレベルに仕上がっていました。
当時から「このセダン版があったら、ちょうどいいサラリーマンの憧れになるな」と小沢は予感していたのです。
▲3ボックスセダンとして秀逸なCd値0.22をクリアする流れるようなフォルムが特徴
いざ、テイスティングしたAクラスセダンですが、価格的にも質感的にも十分以上です。
まずスタイリング。そもそも4thモデルはベースのハッチバックからして流麗さと存在感がアップ。
全長4.4m台と、ひとまわり近く長くなり、フォルムがセクシー化。
そのセダン版なので、サイズは全長4.5m強と、元祖小ベンツたる80年代の190E並み。
デザインは当初からセダンを想定して描かれたことは間違いなく、均整が取れています。
兄貴分のCクラスほどの3ボックス感はありませんが、その分、ほどよい塊感と可愛らしさがあります。
ヘッドライトもLED標準でドット模様のグリルもプレミアム感はなかなか。
▲新世代メルセデスをアピールするヘッドライトとデイタイムランニングライト
インテリアは上級グレードのA250ということもあって、シートは本革、内装もバックスキン調素材でプレミアム感高し。
Aクラスから取り入れた10.25インチ×2の先進インフォテイメントシステムと内蔵された「しゃべるメルセデス」ことMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)も備えています。
▲インパネはメーターから連続的につながるインフォテイメントシステムのモニターが印象的
メタリックパネルはゴージャスなプラチナシルバー調です。
気になる走りですが、前輪駆動のFFプラットフォームでありながら、兄貴分のFRメルセデス並みの走り味を獲得。
乗り心地は固めでも、しっとりとしたストローク感があり、ステアリングフィールがバツグン。
もはやFF、FRの違いが感じられないほど進化しています。
▲A250セダンはバックスキンを基調とした本革シートを装備
搭載された2リッターターボ+7速DCGの出来がいい。
ピークパワー&トルクは224ps&350Nmと十分で、速い。
ラゲッジスペースもFFベースがゆえ、420リッターと見た目以上に広く、ゴルフバッグが2本収納できます。
▲420リッターの使いやすいラゲッジスペース セダンとして実用的な広さを備えた
気になる価格ですが、充実のA250は485万円。上位クラスとオーバーラップするプライスですが、1.3リッター直4ターボで136ps&200NmのA180は344万円スタートとリーズナブル。
ほぼマスト装備のナビパッケージやレーザーセーフティパッケージを付けると価格は上がりますが、それでもがんばれば400万円以下に収まります。
かつてないコストパフォーマンスの最新メルセデス・セダンであることは間違いないのです。
新世代クラウンが400万円を越え、いろいろ付けると600万円台になる現在、目の肥えたヤングな「新しもの好き」が、このほどよいプレミアムメルセデスを向くような気がするのは、オザワだけではないと思うのです。
▲前後席のスペースは大人4名乗車に十分な広さを確保
▲リアシートの足元はこぶし1個以上の広さを確保