小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●以前は単に速くて硬い、一本調子というイメージだったが...
先日、うれしい誤算というか、乗るなり予想を裏切る超絶進化を遂げたスーパーコンパクトに出会ってしまいました。
その名もメルセデスAMG A45 S 4MATIC+!
▲メルセデスAMG A45S 4マチック+ 8SMTC:790万円 フロントは縦にルーバーが入ったAMG専用ラジエターグリルを採用 通常のAクラスより54㎜ワイドなフロントフェンダーも注目点
Aクラスが流麗フォルムになってから、つねに用意されてきた最速最強のAMGモデル。当初からリッター当たり180psの高出力を誇る2リッターガソリン+オンロード用フルタイム4WDがアピールポイントでした。
が、正直にいわせていただくと、小沢コージ的には速いは速いけど、味が単調というか淡泊というか、足だけヤケに硬い印象で、さほど興味なかったんですね。
無理やり一本調子のギャグで押し切るゴーインなお笑い芸人の様というか。
ところが、新型は違うのです。
むろん表向きのセールストークは、ついに2Lターボでリッター200ps超えの421ps&500Nmの超絶ハイパワー!
これだけでも恐ろしいスペックですが、ゴーインぶりは変わらないのかな? という予想を漠然としていました。三つ子の魂百までも、みたいな。
▲全長×全幅×全高4445×1850×1410㎜ エグゾーストは4本出しだがエクステリアは意外とジェントル
ところが乗ってビックリ、味わいが深いなんてもんじゃない! 乗っていて笑いが止まらないパワーと、それを上回る楽し過ぎる操縦性なんですから。
●エンジンと4WDシステムを新規にスペシャルチューン
まずは走り出しからビックリ。
500Nmの極太トルクを5000rpmで発揮する設定で、高回転型だから低速はさほど太くないのかな? と思いきや下から太い太い。
音からして、久々バルブから燃焼室の中まで見えそうな、いかにも混合気がバンバン入っている威勢のいい爆発音でまさにレーシングエンジン級。
▲完全新設計の2リッター直4DOHC16Vターボエンジン「M139」 レブリミットは7200rpm シリンダーライナーにはF1用エンジンにも採用される特許技術のNANOSLIDEのコーティングを実施 ターボチャージャーのコンプレッサーとタービンのシャフトはAMG・GT・4ドアクーペの63Sに用いられるローラーベアリングを投入
聞くところによると、いままでのA45のエンジンは、基本的に第一世代の360ps仕様。次の381ps仕様まではほぼノーマル2リッターのブラッシュアップ型。
ところが今回の421ps世代からエンジンブロックが専用の別モノで、AMG工場による完全手組み。
エクゾーストシステムも前方排気からわざわざ後方排気に変えているくらいで、スペシャル感がハンパない。
そうすると理論上、冷却はツラクなるけど、排気経路が短くなって効率が良くなるんだそうな。
4WDシステムも特別仕立て。前後トルク配分はいままで同様、基本前後100:0から50:50まで状況に応じて可変するオンデマンド方式だけど、今回は後輪車軸にAMGトルクコントロールなる新兵器を追加。
▲ドライブコントロールスイッチ付き新世代AMGパフォーマンスステアリングを標準装備 手を離さずにセッティング変更可能
これは左右別々に電子多板クラッチを用意するもので、要するに左右後輪への増速が可能に。
結果として、操縦性がとんでもなく愉快で恐ろしいモノに。
小沢は先日、箱根ターンパイクで初めて乗って驚きましたが、どこからどう走ってもアクセル踏んだら思い通りに曲がる。
ステアリングを切った方向に曲がる。
▲前席はサポートを強化したハイバック形状の硬質なスポーツ指向シート
それもタイヤグリップ限界前ならまだしも、多少オーバースピード気味でタイヤが滑りそうな状態でもステアリングを切った方向にグイグイ進む。
まさに90年代の絶好調時の三菱ランサーエボリューション顔負けの自由自在っぷりなんです。
それもリアタイヤから曲がるイメージ。
もはやかつての直線番長のイメージは皆無。
▲AMGダイナミックセレクトはドリフトが可能なレースモードを設定
無論、限界を超えてまでは飛ばせなかったわけですが、このままWRC出てもいいんじゃないの? というハンドリングと加速感。
それでいてランエボのようなステアリングフィールの無さはなく、小沢も久々にここまで振り回せるクルマに出会った! とコーフンしました。
乗り心地はほぼフルバケットなシートの背もたれからしてバリカタで、タッチはゴリゴリなんだけど、足そのものは限界付近では割としなやか。
かつての一本調子っぷりは影を潜めてます。
▲後席足元の広さは新世代Aクラス同様
これぞメルセデスが作ったランエボ! それも味が濃厚で、硬いけど快適なスーパー上質ランエボ。
700万円台の価格にも納得なのです。
▲ラゲッジスペースも犠牲にならず 標準のAクラス同等を確保