小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●アクアが追加発売したワイルド仕様を最初から設定
1か月間の初期受注が3万1000台と絶好調の4thホンダ・フィット。
そのクロスオーバー版、フィット・クロスターのハイブリッド車を個別で借り出してみました。
クロスターはベースグレードに対し、グリル付き前後バンパーやフェンダーの樹脂モールで全長を95㎜、全幅&全高を30㎜拡大し、便利なルーフレールも備えたワイルドなモデル。
▲クロスター・ハイブリッド(FF) 価格:228万8000円 全長×全幅×全高4090×1725×1545mm ホーム比全長は95mm長く 全高と全幅は30mm大きい 3ナンバー仕様
見た目だけでなくタイヤは外径がひと回り大きい185/60R16サイズになり、専用アルミホイールを装着。
足回りもFF車で比べると最低地上高160mmと、ノーマルより25mm高い専用サスペンションを採用。予想以上に気合が入っています。
ライバルたるトヨタ・アクアが同様のアクア・クロスオーバーをモデル後半で追加したのに対し、フィットは発売当初から用意。
その点から考えても、ホンダがいかに4thフィットを大切にしているかが分かります。
▲クロスターは都会にもアウトドアにも似合う専用のエクステリアデザインと大径タイヤを採用
いまやN-BOXシリーズがバカ売れで「ほとんど軽メーカー?」ともいわれ始めているホンダ。
登録車をしっかり販売して、そうではないことを証明したいのでしょう。
それは4thフィットが中国やアメリカ以上に日本マーケットを中心に作られたことからもわかります。
●街中で乗ると意外にゴツゴツ感も?
しかしクロスター、乗り始めたらさまざまなことが分かってきました。
まず個人的な感想ですが、フィットのデザインに、この手のゴテゴテプロテクターはあまり似合っていない気がします。
そもそも日産エクストレイルやジープ・レネゲードのような無骨な四角形フォルムにこそ、この手は似つかわしい。
アクアもそうですが、愛されデザインの新型フィットにはチグハグ気味。
可愛いミッキーマウスに戦闘服、格闘服が似合わないのと同じ理屈です。▲インテリアはシートとインパネソフトパッドの表皮に撥水性の高い素材を採用するなどクロスオーバーらしさを演出
とはいえ初期受注の14%をクロスターを占めているわけで、4WDモデルともども、この手のワイルド&タフ仕様は一定の需要があるのでしょう。
リアシートや荷室の広さは基本、旧型と変わっていませんが、やっぱり十分。
▲座り心地のよさを徹底追求した前後シート
ハイブリッド車でもラゲッジ容量は300リッター以上あり、大人2~3名乗車ならスキーやスノーボードへ荷物を積んでのドライブもある程度こなせそうです。
▲ラゲッジは従来同様 広さもあり後席のダイブダウンやチップアップで多彩なユーティリティを誇る
シート表皮はクロスターとスポーツ仕様の「ネス」のみ撥水加工が施されていて安心。
▲前後席の間隔はコンパクトカーとしては大きめ
乗り味ですが、都内で走り始めた瞬間は、ベーシックモデルと変わらない柔らかさ。
新型フィットは「心地良い乗り心地」「心地良い座り心地」を開発コンセプトとしています。
いままでのフィットが持っていたハンドリングのシャープさや乗り心地の硬さを捨てて、愛の戦略に生まれ変わっているからです。
▲クロスターは大径タイヤを採用して最低地上高をアップ
ところが長い時間乗ってみると、とくに都内の街中のデコボコ道では意外なる硬さを発見。
車内の静粛性は相変わらず高いのですが、割とゴツゴツ路面の凹凸を拾います。
開発エンジニアによると、クロスターは「車高が変わっても乗り心地は変わらないようにセッティングした」とのことですが、小沢的にはまだまだ不十分だったような。
同時に開発チーフの田中健樹氏は「フランス車の走り味は意識しましたが、あまりそちらに寄りすぎると安定性を失う」とも。
新型フィットを80年代のルノーほどの柔らかい足にするのはさすがに難しかったのでしょう。
▲2モーター式の強力なハイブリッド モーター主体で走行可能
一方、実燃費は首都高から街中を走って22km/L台を記録。高速だけなら25km/L前後まで延びそうです。
というわけで、アウトドア好きなら気になるフィット・クロスター。個人的にはノーマルボディの「ホーム」や「ネス」の方がいいかもしれない?と思った次第です。
▲後席足元スペースは余裕たっぷり
▲帽子をかぶってもさらに後席頭上には余裕がある