小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●カール・ルイス9秒台連発を勝手に思い出す...
ひさびさの大台突破! 夢の実燃費30km/L台突入!! って感じですよ。
やっと乗れたトヨタ・ヤリス・ハイブリッド。
▲新型トヨタ・ヤリス・ハイブリッドG(FF) 価格:THS 213万円 ハイブリッドのシステム出力はヴィッツと比べて16%アップ
すでにリアルなWLTCモード最良36km/Lのスペックは発表済みだっただけに、もしや実燃費で30km/L台突破か? と思っていたら、走り始めてすぐに夢のリアルデータが。
今回、小沢はガチで実数を計測したいと考え、大田区の駐車場を朝コールドスタートで出発。すると環八を最高60km/hでタラタラ走っていたら、あれよあれよと10分超で20km/L台突破。
そのまま20km走行すると29km/L台に突入。東名高速ではすぐさま30km/L台!
高速を飛ばしたら29km/Lに落ち込み、そのあたりがバランスポイントだと思われました。
▲全長×全幅×全高3940×1695×1500㎜ ホイールベース2550㎜ アルミホイールはメーカーop
その後、最終的には52kmチョイ走って31.9km/L。
最終的に都心まで80km程度走って33km/L台に突入。コイツはガチで凄い!
▲ドライブしてみると実感できるのが燃費のよさ それ以上に走行フィールの上質さにも驚かされた
小沢コージとしては、かつて陸上100m走で、9秒台連発。LA五輪で9秒99を叩き出したと思ったら、ローマ世界陸上で9秒93、ソウル五輪で9秒92、さらに東京世界陸上で9秒86の当時世界記録を出したカール・ルイスを見たような!?
当時、ベン・ジョンソンやらリロイ・バレルやら驚異の9秒台争いが始まりましたが、低燃費バトルも夢の30km/L競争が始まったら面白いのに、と思った次第。
●これさえあればEVなんて当分要らない?
しかもヤリス・ハイブリッド、単なるうわべだけの燃費ウエポンじゃないからすごい。
かつてJC08モードで40.8km/Lを記録したプリウスEがありましたが、あれはモード計測時の負荷を軽くするために、無理やりタンク容量を削ったり、スタビライザーを一部ハズして軽量化するなど「オキテ破り」の手法を選択。
結果、実際に走ると20km/L前半がいいとこでした。まあ、それでもすごい実力なんですが。
さらに現状ヤリス・ハイブリッド以前のWLTCモード燃費ランキングを見ると、2位トヨタ・カローラスポーツの最良30km/L、ホンダ・フィットの29.4km/L、カローラの29.0km/Lと続きます。このなかで、おそらくカタログ燃費を追ってないのはヤリスとフィットです。
▲新開発エンジン1490㏄直3DOHC+モーターで構成するハイブリッド
というのも、フィットもそうですが、いまやかつてほどモード燃費を重視しない時代。
ヤリスの末沢泰謙チーフエンジニアいわく、「ヤリス・ハイブリッドは旧型比でパフォーマンスを15%アップしつつ、燃費を約20%上げています」とか。
▲有機的な造形のインパネ 写真のナビはオプション
事実、スペック燃費と実燃費の乖離が小さく、エンジンからモーターからコントロールユニットからバッテリーまですべて一新したヤリスの1.5Lハイブリッドシステムを、すべて低燃費に振ったらどうなるか? すえ恐ろしい実力です。
実は、個人的には2021年に登場予想の、同じプラットフォームを使った新型アクアがさらに燃費に振ってくると思われ、実燃費35km/L台を出したらマジでクルマ版カール・ルイスの再来!
その後の新しいシエンタのミニバンまで、トヨタ1.5Lハイブリッドが実燃費記録を更新していく可能性を予感しました。
▲写真のコンフォートシートはオプション ノーマルはヘッドレスト一体型
▲室内長(1845㎜)が短いためゆとりはないが後席足元や頭上は大人が問題なく座れるスペースを確保
ちなみにヤリス・ハイブリッドで最も感動したのは燃費以上に走りの良さ。ガソリン版よりステアリングの切れが鋭く、さらにモーター単独スペックが91ps&120Nmに上がっていて、トルクが太いからアクセルを軽く撫でたくらいでグイ!っと飛び出る。
この太いモータートルクも低燃費につながっていて、軽くグイっと出るから、その後すぐペダルを緩めてクルージングができるんです。
というわけで、エコと楽しさを高次元で両立するヤリス・ハイブリッド。マジな話、このモデルが200万円台で買えるならば、高いEVは当分いらないかも? と思ったのは小沢だけではないはず。
ジワジワきている昨今のEVブームに、トヨタHVが対抗してきたのを感じた次第です。
▲ラゲッジは全面カバーされ上質な印象 スペースはとくに幅方向がミニマム