本格志向のKスポーツ
▲ホンダ・ビート 標準仕様だけのモノグレード ボディカラーはシルバー(写真)/イエロー/レッド/ホワイトの4色
ホンダ・ビートのデビューは1991年5月。軽自動車のミッドシップモデルという点だけでもセンセーショナルだったが、ふんだんに取り入れられた多彩な技術は驚きだった。
ビートは〝ミッドシップレイアウトでフルオープン、そしてフルモノコックボディ〟。これは量産車として世界初だった。4輪にディスクブレーキを装着し、前後異サイズのタイヤを履いていた。
ビートは軽自動車という制約の中で〝本物〟を目指していた。いかにもホンダらしかった。1175mmと低い全高サイズはスポーツカーとしてのこだわりだった。コクピット背後に横置き搭載された直列3気筒エンジンは、自然吸気で高度なMTRECシステムが採用され、自主規制枠いっぱいの64ps/8100rpmをマークした。
最大トルクは6.1kgm。自然吸気式としては高い数値だが、その発生回転数は7000rpmと、まさに典型的な高回転型エンジンだった。 組み合わされるトランスミッションは5速MT。
全高が極端に低いため、幌を上げての乗り降りはちょっとタイト。でも、路面に接近して座る感覚は、スポーツカー好きには最高だった。
エンジンは8500rpmでリミッターが作動。もちろん、一気に回りきった。ビートは高回転まで回さなければ乗る意味がないし、乗っても楽しくないクルマだった。5速MTのギアリングは〝超〟がつくほど低く、5速100km/hで5000rpm程度。ビートをスポーティに走らせるには、6000~8500rpmをキープ......そんな感覚だった。パワーは十分。ヒルクライムコースでも素晴らしい速度を発揮した。
ハンドリングは意のままだった。低い重心とミッドシップレイアウトが、軽快な身のこなしを生み出した。コーナーを下手に追い込むと強いアンダーステアに苦しめられたが、ブレーキをうまく使ってターンインすれば気持ちよく走れた。
ビートはドライバーの運転スキルを敏感に反映する、本格派のスポーツカーだった。
■主要諸元
価格:5MT 138万8000円
ボディサイズ:全長×全幅×全高3295×1395×1175mm ホイールベース2280mm 車重760kg
エンジン:656cc直3OHC12Vターボ(64ps/8100rpm 6.1kg・m/7000rpm)
10モード燃費:17.2km/リッター
乗車定員:2名 駆動方式:MR
タイヤサイズ:Ⓕ155/65R13/Ⓡ165/60R14
ブレーキ:ⒻⓇディスク
サスペンション:ⒻⓇストラット
デビュー:1991年5月