小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●4ドアクーペはある程度の大きさが必要!?
小沢が最近、疑問に思っているのが「4ドアクーペ」の存在意義です。
メルセデス・ベンツ、BMW、アウディとドイツ系プレミアムはこの手をラインナップしますが、先鞭を付けたのはやはり2004年デビューの初代メルセデス・ベンツCLS!
▲メルセデスCLSクラスの1stモデル
当時のEクラスセダンをベースに全長を伸ばし、すらりとした流麗なリアビューを構築。実用的な4ドア車ながらクーペ風の「4ドアクーペ」を誕生させました。
これは世界的に大ヒット!
日本でも初年度は年間約5000台と売れまくり、2018年までの累計販売で2万4000台以上、グローバルで37万5000台以上の人気モデルに成長しました。
▲2018年にフルモデルチェンジした現行メルセデスCLSは3rdモデル
いまでも鮮明に覚えていますが、六本木のメルセデス日本から借り出した瞬間、ナイスミドル男性が次々に振り向きました。
まさにスーパーカー顔負けで、「うぁ~カッコいい」「あれホントにメルセデス?」とつぶやくのが聞こえそうなくらい。
確かに1st・CLSは究極のいいとこ取りでした。
当時のメルセデス、ブランドイメージは良いけど、実車としてはイカツイSクラスやEクラスのイメージが中心。しかし、CLSはまさしくジャガーのような流麗さを誇り、メルセデスなのにカッコいい。
まるで「社長になった福山雅治」的な威厳と、スタイリッシュさの奇跡の共存があったのです。
以来、この4ドアクーペ市場にライバルが次々と出現。BMW6シリーズ・グランクーペにアウディA7スポーツバック、アストンマーティン・ラピードまで登場し、一大ジャンルを築きました。
▲BMW6シリーズ・グランクーペは2012年デビュー
同時に、今回のBMWに限ると、2012年に初代6シリーズ・グランクーペ登場、2017年に2ndモデルの6シリーズ・グランクーペが出て、それが2019年、8シリーズ・グランクーペに進化。
また、2014年にはミディアムサイズにも波及し、4シリーズ・グランクーペも登場。BMWのグランクーペとしては累計40万台と、なかなかのヒットで、2019年末、ついにコンパクト版の2シリーズ・グランクーペが登場。先日やっと日本でも乗ることができました。
▲BMW4シリーズ・グランクーペ
●新たに登場した2シリーズ・グランクーペの出来は?
しかし、これがなかなか絶妙です。
まずコンパクト版でもグランクーペ化できたのは、プラットフォームのFF化があります。
BMWはコンパクト系の一部を除きレイアウトをFRからFFに切り替えており、その分多様なパッケージができます。
▲新型BMW・M235i・xドライブ・グランクーペ 価格:8SMT 665万円
2シリーズ・グランクーペもFF化した1シリーズの影響が濃く、骨格は共通のFAARプラットフォーム。事実、2670mmのホイールベースは同じです。
ただし、全長は約20cm伸びて4.5m台。3シリーズには及びませんが、それなりにゆったりしたサイズで、ここが2シリーズ・グランクーペ最大の注目点なのです。
全幅は1.8mとワイドで、リアビューにも1シリーズ・ハッチバック的な詰まり感はありません。
▲全長×全幅×全高4540××1800×1430mm 車重1590kg
ただ、CLSほどのエレガントさがあるかというとまだまだ。そもそも8シリーズ・グランクーペ自体もカッコはいいのですが、BMWセダンに権威主義的なイカツサがありません。つまり、元々エレガントなので4ドアクーペとセダンとの差が、メルセデスほどには生まれない。要するに"ギャップ萌え"が少ないのです。
とはいえ、1&2シリーズは中国向けなどを除いてセダンがないので、BMWの4.5mクラスの4ドアはそれなりに貴重。
はたしてこのカッコよさがどこまでウケるか? 今後のコンパクト系4ドアクーペの運命を左右するはずです。
▲リアウィンドウを強く傾斜させた4ドアクーペスタイルを採用
ちなみに乗ってみると、もはやFF、FRを気にしなくてもよいのでは? というリアルなステアリングフィールとガッチリしたボディ剛性感が印象的。
今回乗ったのは306ps&450Nmの2リッター直4ターボを搭載する4WDモデルのM235iグランクーペなので、余裕のパフォーマンス。
▲インテリアは最新の2シリーズと同様 M235iはFF特有のアンダーステアを抑制する駆動制御"ARBシステム"を標準装備
FFベースの4WDでも、遺憾なくパワーを着実に路面に伝え、新しいFF系制御システムの「ARB」が効いたのか、雨の首都高でもノーズがグイグイとインに切れ込む切れ込む! FF的なニブさは一切ありません。
ラゲッジルームは430リッターと広く、その使い勝手の広さには感銘を受けました。カッコよさ、実用性、走りのバランスポイントはかなり高いです。
▲サイドサポートを強めたMスポーツシート標準装備
▲後席足元スペースはゆとりがある
▲後席頭上は傾斜したルーフに帽子があたってしまう
ただし、コンパクト系にしては価格が665万円と高く、次回は369万円から買える1.5リッター直3ターボの218iグランクーペに乗ってみたいと思った次第。
ソイツが本当にどれだけ使えてカッコいいのか! そこが2シリーズ・グランクーペの真骨頂かもしれません。
▲ラゲッジは広々としたスペース ゴルフバッグが余裕で入る
▲大きなラゲッジアンダースペースを確保