世界最高のスタビリティを実現したR32スカイラインGT-R

1989年にデビューした日産スカイラインGT-R(R32型)の高い走りの実力を振り返る。

世界ナンバーワンの「走り」を目指してデビュー

f3455a293cbe84343f5dfcc5c16254c055fb6db3.jpg▲日産スカイラインGTーR(R32型)

 自動車ジャーナリストの中心的仕事は、もちろん取材や原稿書き。しかし、ボクの場合はメーカーや広告代理店等から依頼された仕事もかなり大きな比率を占める。

 メーカーの仕事で最も多いのは開発関係である。多くのクルマの開発に関係してきたが、中でも特別な1台が1989年、つまり平成元年にデビューしたスカイラインR32型GT―Rだ。

 開発資金が潤沢だった1980年代、日産のエンジニアは大きな目標に向かって動きだしていた。「1990年代に世界一の走りを持つクルマを世に送り出す」という目標を掲げたのである。活動名はズバリ〝901〟と名づけられた。

 901活動のコアになったクルマがR32型GT―Rだ。このクルマは、開発段階でも〝未体験ゾーン〟の走りを予感させた。それは〝驚くべきレベル〟に達していた。とくにスタビリティは圧倒的に強烈だった。

 テストコースはもちろん、テスト用にクローズドされた箱根の芦ノ湖スカイラインなどで、躊躇(ちゅうちょ)なく全開で攻めることができた。

 それはニュルブルクリンク北コースでも同じだった。ボクはサーキット走行が好きではない。そのため、ニュルブルクリンクの経験はほぼゼロ(過去に観光気分で2周走っただけ)だった。R32型GT―Rはそんなボクに2周目で8分44秒のタイムを刻ませてくれた。驚いた。

 ニュル経験の豊富なドライバーが叩き出したタイムは8分24秒。これは、その時点での量産スポーツカーの世界最速タイムだった。当時は〝9分を切れば超一級〟とされていたのだから、GT―Rのタイムは驚きだ。つまり、ボクのタイムはすごいレベルにあったと、自賛できる。

 R32型GT―Rの強烈なスタビリティは、ニュル初心者にさえ、アクセルを深く踏み続ける勇気と信頼を与えてくれた。その後しばらくの間、とくに欧州のメーカー関係者と接触するたびに、R32型GT―Rの素晴らしい〝世界一の走り〟が話題になった。いまでは最高の思い出のひとつである。

■主要諸元

価格:5MT 445万円
ボディサイズ:全長×全幅×全高4545×1755×1340mm ホイールベース2615mm 車重1430kg 
エンジン:2.6リッター直6DOHC24Vターボ(280ps/6800rpm 36.0kgm/4400rpm)
10モード燃費:18.6km/リッター
乗車定員:4名 
駆動方式:4WD タイヤサイズ:225/50R16
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
サスペンション:前後マルチリンク
デビュー:1989年5月

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