小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●ドラえもんとルパン三世ぐらい違う
人気のスズキ・ハスラーに遂に永遠のライバル誕生か? と思わせる注目モデルが登場した。
新型ダイハツ・タフト。
▲新型ダイハツ・タフトG(FF) 価格:CVT 148万5000円
昨年の東京モーターショーでコンセプトカーが登場、今春の東京オートサロンでプロトタイプが公開された新型クロスオーバー軽SUVだ。
もちろん、2014年からの約6年間で国内累計48万台という異様な大ヒットを遂げた初代スズキ・ハスラーを意識しているに違いない。
だが、かつてのアルトvsミラ、ワゴンRvsムーヴ、タントvsスペーシア的なガチンコ対抗とは微妙にバトル方法が異なる。
どちらもアウトドアユースをイメージさせる軽クロスオーバーSUVではあるが、小沢にいわせるとドラえもんとルパン三世、いや、トトロとスヌーピーぐらいにキャラクターが違っている。
ジャンルは被るものの、かなり異なるデザイン指向を持っているのだ。
▲全長×全幅×全高3395×1475×1630㎜ ホイールベース2460㎜ 最低地上高190㎜
大きく違いがあるのは、まずエクステリアデザイン。
ハスラーはキュートな個性派、丸目ヘッドライトが特徴。2ndモデルは本格クロカン風フォルムに進化したとはいえ、可愛いユルキャラデザインを纏っている。
対し、タフトは明らかにボクシーかつアメリカン。多く指摘されているが、かつてのアメリカンSUV、ハマーのようなのだ。
▲ボクシーなデザインはアメリカンSUVの雰囲気を感じる
ハスラーの全高は1680㎜なのに対し、タフトは1630㎜。50㎜も低く、ディテールでも、タフトはタイヤ前方を全部隠さないラギットなバンパーを採用。相当デザイン的にとんがっている。
●フロントシート2名乗車を重視するコンセプト
インテリアも大きく異なる。
ハスラーが丸い3連台形ベゼルと、大きくあしらったアナログ時計的インパネを持つのに比べ、タフトは直線的かつ乗用車的。
▲インパネはオレンジ加飾でカラフルな演出 パーキングブレーキは電気式
そしてなにより、リアシートに対する考え方の違いは大きい。
ハスラーはロングスライド付きで、チャイルドシートの使用を考慮しているのに対し、タフトはいまどきスライドなし。
大人がラクに座れるほど広いが、主に2名乗車でリアに荷物を載せることを想定している。
▲フロントシート頭上はスカイルーフトップにより広がり感がある
▲後席は足元/頭上ともに広い 前後スライドは未搭載
決定的なのは、フロントシートに特大ガラスルーフ=スカイフィールトップを標準装備していることで、あくまでもフロントの気持ち良さ優先。
▲スカイフィールトップは全車に標準
子育て層以上に、ヤング層もしくは子育て終了層を意識している。
かたや走りにはスズキとダイハツのクルマ作りの方向性が自ずと反映されており、ハスラーが現行プラットフォーム、ハーテクトが熟成に熟成を重ね、乗り心地、静粛性、剛性感ともに磐石なのに対し、タフトは2019年のタントから初採用のDNGAプラットフォームの味わい。
渋滞時には高速道路でも完全停止し、それを保持する電動パーキングブレーキ付きの先進安全機能を搭載するだけでなく、まさに次世代のボディ剛性感を追究。
しっかり感は軽自動車超え、ステアリングのセンターフィールも上々。静粛性もいい。
しかしダイレクトさ優先で、ハスラーの全体の優しさには負けるといった具合。
パワートレインもマイルドハイブリッド付きのハスラーに対し、出足のCVT感を強く感じ、燃費スペックで微妙に負けている。
とはいえ実燃費は大差ないと思うが。
おそらくファッション要素の強い軽SUVだけに、スタイルをマネしてもしょうがないと思ったのと、いまや軽はダイハツvsスズキだけのバトルじゃ済まない。
Nシリーズ擁するホンダ、協力体制を整えた日産三菱陣営もあるわけで、その場合、なにより"ダイハツらしさ"の追究が必要だと思ったのだろう。
実際、両車を求めるユーザーはかなり指向性が違うはず。
つくづく、軽自動車界も新たなバトルフェイズに入ったことを思わせる新型タフトなのである。
▲後席を倒すとフラットなラゲッジスペースが広がる