小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
●ハッチバックフォルムから本格SUVフォルムに
待望の都市型コンパクトメルセデスがフルモデルチェンジした。
シリーズ第6弾、クロスオーバーSUVモデル、GLAだ。
とにかく今回のGLAの変貌は大きい。2013年登場の1stGLAは海外試乗会にも行ったが、当時、相当に思い切ったコンセプトだった。
チーフエンジニアは「世界一美しいSUV」といい切り、ほぼクーペフォルムのハッチバックに太いタイヤと樹脂フェンダーを付けたスポーツフォルムを採用していたからだ。
一方、新型はネットではあまり指摘されてないが、従来のコンセプトを思い切って捨てている。それが最もよく出ているのは寸法である。
▲メルセデス・ベンツGLA 200d 4MATIC 価格:8SAT502万円
全長×全幅×全高は4415×1835×1620㎜。1stモデルに比べて20㎜短く、29㎜幅広く、106㎜も高い。
とくに1.6m台という全高は、日本の立体駐車場では新しい設備を除くとあまり入らないはずだ。
新型もルーフはなだらかでスポーティなクーペフォルムだが、絶対的に背が高い。以前のハッチバックと見間違わんばかりの軽やかさはない。
しかしその分、圧倒的な実用性と質感を得た。これは歓迎するユーザーも多いはずだ。
▲全長4415×全幅1835×全高1620mm ホイールベース2730mm 最低地上高202mm
●もしやプチGLCの座を狙ったのか?
今回、乗ったのは502万円のGLA220d。150ps&320Nmを発揮する新世代の2Lディーゼルターボを搭載したモデルだ。
見た目は繰り返すが、非常にモダンなSUV。ヤシの実の如く丸みを帯びた最新メルセデスフォルムで、パッと見、人気モデルGLCのコンパクト版にも見える。
実は意図的にそのポジションを狙ったのかもしれない。
▲インテリアは最新のメルセデス流儀に沿ってシンプルかつユーティリティに優れるインターフェイスを採用
室内に入るとコンセプトチェンジの効果は明らかだ。
フロントシートから明らかに着座位置が高く、頭上にも余裕がある。
それはリアシートも同様で、狭めだった1stモデルの面影はまったくなく、身長176cmの小沢が余裕で座れ、ヒザ前にはコブシ2個弱の空間ができる。
▲高めの着座姿勢でSUVらしい頭上空間と視界が広がる
▲後席の広さも十分に確保
ラゲッジ容量は425リッターで、数値的にはさほど広くなってないようだが、形状的にラクにモノを置ける。
圧倒的な違いは走りの質感だ。
今回は現行Aクラスから導入したMFA-Ⅱプラットフォームを採用。
効果は歴然で基本FFベースでありながら乗り心地、ハンドリング、振動吸収性ともに旧型よりワンランクアップしている。
とくに乗り心地は素晴らしく、個人的にはもっと柔らか目のセッティングでも良いと思うが、これならFRプラットフォームのGLCの代わりになるかとも思う。
▲乗り心地は優秀 ホイールは空力を考慮した形状を採用
320Nmの強力トルクを発揮する2Lディーゼルも十分。
滑らかに繋がる8速DCTもあって、上品に発進できる。
唯一、狭い駐車場で細かいアクセルワークをすると唐突につながる時もあるが、ある程度は慣れで解決できる。
そのほか12.3インチの美しいディスプレイを2連で並べる新世代インターフェイスのMBUXの存在も嬉しい。
乗ってすぐにすべてを使いこなせるほどラクではないが、暑い夏、口頭で「暑い」「寒い」と言って調節できるエアコンは便利だし、左手にボリュームスイッチがあるオーディオ操作もこれでOKだ。
正直にいうと、カッコ良さという点では1stモデルのほうが上だと思う。
だが、SUVという意味ではこちらの方が分かりやすく存在感がある。使い勝手、居住性も明らかに上。
ベーシックモデルでもついに500万円を越えた価格は気になるが、クリーンディーゼル搭載で実燃費15km/L台も狙えることを考えると悪くないかもしれない。
なによりサイズのわりに室内が広いプチGLCと考えるとお買い得。
ホント、最近のプレミアムブランドは自らの人気モデルをダシに使うのがうまくなったと思う。
▲ラゲッジスペースは上質な仕上げ 使い勝手のいい広さを確保している