小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』
ついに乗ったヤリスクロス!
8月31日発売のトヨタ待望、新型コンパクトSUV。
事前受注で既に1万2000台を記録し、1ヶ月受注は約3万台か、それ以上もあり得る人気っぷり。
今回、ようやく公道試乗ができたのだが、最大のポイントは、新テイストのSUVデザインとサイズを感じさせないユーティリティ、そしてヤリス譲りの圧倒的パワー&燃費性能だろう。
▲トヨタ・ヤリス クロス・ハイブリッドZ(2WD) 価格:258万4000円
全長×全幅×全高は4180×1765×1590㎜と、ベースになったヤリス・ハッチバックよりひと回り大きく、それでいてホイールベースは2560㎜と、ほぼ同じ。車高が高まった分、ホイールベースは10㎜広がっている。
まずはそのサイズ感に注目。実際に公道で見るヤリスクロスは小さく締まっている。
同じコンパクトSUVとはいえ、トヨタC-HR、ホンダ・ヴェゼル、日産キックスはすべて全長4.2mオーバー。
それ以下といえば、国産SUVなら同じトヨタのライズしかなく、輸入車で唯一VW・Tクロスがあるぐらいだ。
ということは、ヤリスクロスは「ライバル不在」ともいえる。
▲全長4180×全幅1765×全高1590㎜ ホイールベース2560㎜ 最低地上高170㎜ 最小回転半径5.3m 車重1190kg
一方、乗りこむと身長176cmの小沢がフロントに座ったポジションで、リアにも普通に座れる。
車内寸法はベースのヤリスと同じだが、後席座面が2cm高くなり、ヘッドルームが拡大しているため、感覚的な広さは増している。
ラゲッジ容量は外寸が増した分、390Lと広大。
よりボディが大きいC-HRが318L、ヴェゼルが393Lであることを考えると、ヤリスクロスのパッケージの良さが光る。
▲絶妙なパッケージングでベースのヤリスより後席とラゲッジスペースを拡大
なにより荷室サイドをくりぬいてフルサイズのゴルフバッグを2個収納できる点はすごい。
後席は4対2対4分割ができるので、センターにスキー板などの長尺物が収納できて便利だ。
▲ラゲッジはサイドに凹みがありゴルフバッグなどが積める シートセンター部だけ倒せば4名乗車に加えてスキーやサーフィンなどの長尺物も積載可能になる
外観は独特で、無機質なマスクとワイドなブリスターフェンダーを合わせた。
正直、宇宙人っぽいノッペリ顔だが、カッコ悪いという声は聞いてない。
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なによりも印象的なのは、走りの楽しさと上質感だ。
サーキットでプロトタイプを試乗した時、とくにわからなかったのが乗り心地。
ベース車たるヤリスの場合、ロードノイズのうるささが気になったが、ヤリスクロスはそれほどでもない。
SUVならではの車高の高さ、サスペンションの違いが効いているようだ。
▲Zグレードのインテリアはブラウンを使ったツートンカラー
▲後席は大人2名が余裕を持って座れるスペースを確保
乗り心地そのものは硬めだが、非常に上質。
安っぽい振動はほとんど感じない。
ハンドリングもサーキットほどは飛ばせなかったので、限界性能はわからないが、しっとりとしてレスポンスの良いステアリングフィールが自慢。
とても全長4.1m台とは思えない上質な手応えだ。
一番人気の116馬力、1.5Lハイブリッドだが、車重がハッチバックより約100kg増しているので、ヤリスと比べると出足は抑えめ。
しかし、それでもモータートルクが旧型ハイブリッド比で約2割増し、出足から141Nmでひっぱるのはすごい。
相当、電動感が増した印象で、EVいらずとも感じるほどだ。
気になる実燃費は、横浜みなとみらいから、首都高を中心に大黒ふ頭まで往復20kmを走った結果、メーター計測で25.9km/Lを記録!
これはズバリ、現行プリウスやアクアを上回る、ものすごい低燃費。
WLTCモードで最良30.8km/Lのヤリスクロスなだけに、小沢もそれくらいを予想していたが、本当に達成しちゃうとさすがに驚く!
ズバリ、コイツはピュアEVやプラグインハイブリッドを除いて、世界最良燃費のSUVといっていい。
普通にクルマを走らせる日本人なら、楽に1ヵ月半は給油しないで済む。それくらいガソリンを使わないはず。
▲トヨタ・ヤリス クロスG(2WD) 価格:202万円
▲Gグレードの内装はブラックカラーで統一
一方、200万円以下から買える1.5Lガソリン版も、同じ行程で実燃費20.9km/Lを記録。
コストパフォーマンスを考えるとコチラも捨てがたい。
ちなみにフルタイム4WDの性能も見事で、他にはない悪路脱出モードが付いている。
▲ハイブリッドのE-Fourは悪路で接地するタイヤに適切な駆動トルクを配分するTRAILモードを採用
ハイブリッド版は228万円からと一見高めだが、実はホンダ・ヴェゼルや兄貴分のC-HRを考えると断然安い。
新型ヤリスクロスは、その実力を考えると完全に価格破壊。
もしや今年、一番売れるコンパクトSUVになるかも。
▲Gグレードの場合シート表皮はブラックファブリック