SUVの頂点に立つのはレンジローバー。いまや、プレミアムブランドからも多くのSUVが誕生しているが、ボクは「レンジローバーがSUVの王」だと思っている。新型にはまだ乗っていないが、全身から漂うオーラは王者の風格十分だ。
ボクがレンジローバーを強く意識し始めたのは1990年ごろ。日本への正規輸入が始まったあたりだ。
厳冬のスコットランド試乗会に参加した。その実力は印象的だった。特設オフロードコースでの試乗内容は「ここまでやるのか!」といった過酷なもの。丸一日走り続けたコースもまたハードだった。
凍りついた狭い山岳路を延々と走り、けっこう深い河を何度も渡った。うっかりコースを外し、河の中で立ち往生しているクルーに2度出会った。厳冬の急流の中で、身動きできなくなる恐怖、想像するだけで身震いしてしまう。
この貴重な体験で、レンジローバーのオフロード性能のすごさを再確認したわけだが、30数年経ったいまでも、「あの日のあれこれ」を鮮明に思い出す。
レンジローバーは1994年に2ndモデルが誕生。この2ndモデルは、工業製品としては唯一、ルーブル美術館に展示された。「高い知性と野生」を持ち、「ファッションブーツの洗練とクライミングブーツのタフネス」を兼ね備えるレンジローバーに相応しい経歴だ。
フォード・エクスプローラーとトヨタ・ハリアーも外せない!
SUVを語るに当たって、もう1台外せないクルマがある。フォード・エクスプローラーである。
SUV王国の北米市場を牽引してきたクルマだが、1990年に誕生して間もない頃、ボクはエクスプローラーに「SUVの明るい未来」を感じた。とくに最上位モデルのエディバウアーは魅力的だった。
その当時、ボクなりの市場調査のひとつとして、機会があるたびに北米の会員制ゴルフクラブやテニスクラブの駐車場を見て回っていた。
豊かで活動的なユーザーたちのクルマの動向を見るためだが、ボクの予感は当たった。短期間のうちに、エクスプローラー (とくにエディバウアー)が、はっきりそれとわかるほどの加速度で増えていったのだ。
日本車で記念すべきSUVは、1997年に誕生したトヨタ・ハリアーだ。乗用車(カムリ)のプラットフォームを使った快適で軽量なSUVとして、「世界初」の称号を手にした。そして、ハリアーの誕生を機に、乗用車ベースのSUVは一気に増えていくことになる。
ちなみに、いまいちばん気になっているSUVは、マツダCX-60である。内外装はスタイリッシュだし、直列6気筒ディーゼル、HVとPHEV、そしてFRプラットフォームが織りなす走りは、なかなかのもの。要注目だ。
おかざき こうじ/モータージャーナリスト 1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経て、フリーランスに。カー・アンド・ドライバー誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員